じじぃの「歴史・思想_219_シンギュラリティ・平均寿命は150年に」

Extending Human Lifespan

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=leI70P-rEAk

Life Expectancy 150 year

楽天ブックス:シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき

レイ・カーツワイル(著)
【目次】
第1章 六つのエポック
第2章 テクノロジー進化の理論ー収穫加速の法則
第3章 人間の脳のコンピューティング能力を実現する
第4章 人間の知能のソフトウェアを実現するー人間の脳のリバースエンジニアリング
第5章 衝撃……
第6章 わたしは技術的特異点論者(シンギュラリタリアン)だ
https://books.rakuten.co.jp/rb/14117597/

『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 』

レイ・カーツワイル/著 NHK出版/編 2016年発行

衝撃…… より

われわれはサイボーグになっていく

バージョン2.0の人体のシナリオは、テクノロジーとますます緊密な関係になる傾向がこの先もずっと続くことを示している。誕生した当初のコンピュータは、空調のきいた部屋で白衣の専門家が管理する巨大な機械で、一般の人にとってはずいぶん遠い存在だった。それが机上に置けるようになったかと思うと、じきに腕で抱えて運べるようになり、今ではポケットに入っている。遠からず日常的に体や脳の内側に入ってくるだろう。2030年代までには、人間は生物よりも非生物に近いものになる。第3章で述べたように、2040年代までに非生物的知能はわれわれの生物的知能に比べて数十億倍、有能になっているだろう。
深刻な疾患や障害の克服という大いなる恩恵を求めて、これらのテクノロジーは急速に発展し続けるだろう。しかし、医療への応用はまだ初期の段階にある。技術が確立すれば、障壁はなくなり、それらによって人間の可能性はとてつなく拡大される。

人間の寿命

本書の読者の多くは、生きているうちにシンギュラリティを迎えることになりそうだ。バイオテクノロジーの進歩は加速しつつあり、遺伝子や代謝プロセスをプログラムし直して病気や老化を克服できるようになるだろう。この進歩には、ゲノミクス(遺伝子操作)、プロオミクス(タンパク質の役割の理解と操作)、遺伝子治療RNA干渉などのテクノロジーによる遺伝子発現の抑制、新しい遺伝子の細胞核への導入)、合理的な薬の設計(病気や老化による体変化そのものに狙いを絞った薬物設計)、細胞や組織、器官を若返らせる治療的クローニング(細胞分裂を継続させるテロメアの寿命の伸長とDNA修復)およびその関連分野の急速な進歩が含まれる。
バイオテクノロジーは生物学の範囲を広げ、生物的過程の明らかな欠陥を正すだろう。それに重なるナノテクノロジー革命は、けっして超えられなかった生物的限界の超越を可能にしてくれる。わたしがテリー・グロスマンとの共著『素晴らしき航海(Fantastic Voyage)』で明記したように、われわれは、体や脳と呼んでいるこの「家」を無期限に維持し拡張していく知識と道具を急速に手に入れつつある。不幸なことに、わたしと同じベビーブーマーの大半は疑うことなく、病気や死を、先人も歩んできた「あたりまえの」人生の経過として受け入れようとしている――もしも積極的に行動を起こし、基本的な健康的生活様式についての既成概念を超越すれば、それは避けられるのに。
歴史上、人間が寿命という限界を超えて生き続ける唯一の手だては、その価値観や信仰や知識を将来の世代に伝えることだった。今、われわれは存在の基盤となるパターンのストックが保存できるようになるという意味で、パラダイムシフトを迎えつつある。人間の平均寿命は着実に延びており、やがてその伸長はさらに加速するだろう。現在、生命と病の根底にある情報プロセスのリバースエンジニアリングが始まったところだ。

ロバート・フレイタスは、老化や病気のうち、医学的に予防可能な症状の50パーセントを実際に予防すれば、平均寿命は150年を超えるだろうと予測する。さらに、そういった問題の90パーセントを予防すれば、平均寿命は500年を超える。99パーセントならば、1000年以上生きることになるだろう。

バイオテクノロジーナノテクノロジーの革命が完全に現実のものになれば、実質的にはあらゆる医学的原因による死をなくすことができると予想される。非生物的存在になっていくにつれて、われわれは「自分をバックアップする」(知識、技能、性格の基本をなす重要なパターンを貯蔵しておく)方法を手に入れ、たいていの死因は取り除けるようになるだろう。

分散化

次の数十年間、全体の流れは分散化に向かって進む。今日、エネルギープラントは高度に集中した無防備なものであり、エネルギー輸送には船や燃料ラインが使われている。ナノエンジニアリングによる燃料電池太陽光発電の出現により、エネルギー源をわれわれの生活基盤の中に広く分散し、しっかり組み込めるようになる。マイクロ・ナノテクノロジー製造は、安価なナノ加工の小規模工場に振り分けて行なわれるようになるだろう。VR環境では、ほとんどすべてのことを、誰とでも、どこからでもできるようになり、オフィスビルや都市といった集中型テクノロジーは時代遅れになる。
バージョン3.0の人体は意のままに異なる形状へ変わることができ、大半が非生物的となったわれわれの脳は、もはや生物としての限られた構造に縛られることはない。そうなると、人間とはなにかということが徹底的に問われるようになるだろう。ここに述べた個々の変化は一足飛びに起きるのではなく、一歩ずつ小さな歩みが続いた末にもたらされる。そうした歩みはせきたてられるように進んでいくが、一般に受け入れられるのもまた急速だ。体外受精のような新しい生殖技術について考えてみればよくわかる。最初は論争の的になったものの、たちまち広く利用され容認されるようになった。その一方で、変化はつねに原理主義者とラッダイトの反動を呼び起こし、それは変化の速度が増すにつれていっそう激しくなる。しかし、見た目は論争を呼んだとしても、人類の健康、富、表現力、創造性、そして知識にとって、圧倒的な利益をもたらすものであることはたちどころに明らかになる。