合成生物学の世界大会iGEMで優勝したい! 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=u-HPF3tZglg
『合成生物学の衝撃』須田桃子 2018年発行 文藝春秋BOOKS
2000年代初頭、マサチューセッツ工科大学に集まった科学者たちは、生物学を工学化することを思いつく。
コンピュータ上でDNAを設計し、その生物を実際につくってみるのだ。
「合成生物学」と呼ばれるようになるその学問はビル・ゲイツをして「もっともホット」な分野と呼ばれるようになる。
企業が血眼になり、軍の研究機関が莫大な予算を投じる。
そうした中、孤高の天才科学者が20年かけてついに人工生命体を作ることに成功する。
ヒトまでも人工的につくる時代が来るのだろうか?
●第5章 国防総省の研究機関は、なぜ合成生物学に投資するのか?
ベトナム戦争での対ゲリラ戦の兵器を次々と開発した実績のある国防総省の研究所DARPA。そのDARPAは合成生物学研究の最大のパトロンと言ってもいいかもしれない。
2014年だけで、1億1千万ドルもの予算をその研究に拠出している。
●第9章 そして人工生命体は誕生した
ヒトゲノムを公的チームよりも早く読み切った孤高の科学者クレイグ・ベンターは「ヒトゲノム合成計画」を嗤う。
「彼らは細胞ひとつすらくれないではないか」。そう、ベンターだけが、人工の生命体「ミニマル・セル」の作成に20年越しで成功したのだ。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163908243
『シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』 マシュー・バロウズ/著、藤原朝子/訳 ダイヤモンド社 2015年発行
人類は神を越えるのか より
新しいテクノロジーが人間の能力を拡張し、寿命を延ばし、生活の質を高めることについて、いまのところはうまくいっていると言っていいだろう。ただ、手遅れになる前に対策を講じるべき大きな問題が2つある。第1に、こうしたテクノロジーが新たな格差を生み出さないようにしなければならない。たとえば、親が子に受け継がせたい特質を選べるようになるのは遠い先の話ではない。スタンフォード大学法科大学院教授で、法律・生命科学センターのハンク・グリーリー所長は次のように語っている。「少なくとも先進国では、20〜40年後には、ほとんどの赤ん坊が対外受精で生まれるようになるだろう。親または親以外の誰かが、複数の胎芽から、生まれる子にいちばん受け継いでほしい遺伝子を持つ胎芽を選ぶ。そんなことが現実になる」。だが少なくとも実用化初期は、このテクノロジーを利用する資金的余裕がある親は限られるだろう。ということは、金持ちほど望み通りの子供を持てるようになるのか。また、グリーリーが指摘するように、「今後、中国の分化的・法的ハードルは低くなる」。つまり、西側では倫理的な理由からストップがかかるテクノロジーが、中国では野放し的に拡散する可能性がある。こうしたテクノロジーの運用について国際的なルールを設けるのは難しいだろう。
第2の問題点は、ある特質を獲得するために遺伝子を1から設計する合成生物学など、バイオテクノロジー革命の一部は、倫理的な一線を越えつつあることだ。
一線を越えつつあるという表現を使ったのは、気をつけないと、人間はパンドラの箱を開けてしまうと思うからだ。遺伝子をいじって疾患を予防したり、身体的・精神的特質を増強したりできるということは、半永久的な影響をもたらすウイルスも密かにつくれるということだ。遺伝子操作の倫理的・道徳的な問題や、安全保障上の問題は、無視はできてもなくなるわけではない。さほど費用がかからなくなれば、世界じゅうの親が赤ん坊の遺伝子を調べて、将来かかる可能性のある病気を知ろうとするだろう。また、出生前遺伝子検査が可能になれば、優生的な遺伝子操作に道を開くことにもなりかねない。何でもそうであるように、新しいテクノロジーにもプラス面とマイナス面の両方がある。
合成生物学も諸刃の剣になる可能性がある。自称バイオロジストやバイオハッカーは合成生物学を利用して、殺傷兵器をつくるかもしれない。諸費用が低下し、ゲノム解読と合成技術が進歩するにしたがい、合成生物学は重要な基礎を確立しつつある。