じじぃの「科学・芸術_860_人類宇宙に住む・トランスヒューマニズム」

Humans, Gods and Technology - VPRO documentary - 2017

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tQd_5as_cMY

What is Transhumanism?

トランスヒューマニズム

ウィキペディアWikipedia) より
トランスヒューマニズム(英: Transhumanism)は、新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想である。
省略して>HやH+と書かれる場合もある。日本語では「超人間主義」などと訳される。
トランスヒューマニズムは人間の機能拡張やその他将来の科学技術の開発・使用により、将来起こりうることを研究する学問でもある。

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『人類、宇宙に住む 実現への3つのステップ』

ミチオ・カク/著、斉藤隆央/訳 NHK出版 2019年発行

トランスヒューマニズムとテクノロジー より

ヒトの一部の特徴については遺伝子が特定されているので、人々にそれをいじらせないのは難しいだろう(たとえばあなたが、隣の家の子が遺伝子操作で知能を強化されたと知り、その子がわが子と競争していたら、わが子も同じようにして知能を強化しなければと切迫感を覚えるだろう。さらに、競技では莫大な見返りがあるため、アスリートに自分の体の強化をさせないようにするのはきわめて難しい)。それにどんな倫理的障害があろうとも、有害な改変とならないかぎり、われわれは遺伝的強化を拒否しないはずだ、とグレッグ・ストック(カリフォルニア大学ロサンゼルス校、UCLAの生物物理学者)は主張する。また、ノーベル賞受賞者のジェイムズ・ワトソンはこう語る。「だれも言おうとしないのだが、遺伝子の入れ方がわかって人類を改良できるとしたら、なぜそれをしてはいけない?」
トランスヒューマニズムの提唱者は、宇宙の先進文明に遭遇するとしたら、そのエイリアンは自分の生物としての体を改変し、さまざまな惑星の厳しい環境に適応させるレベルまで進化しているだろうと考えている。トランスヒューマニズムの提唱者にとって、宇宙の先進文明は、遺伝的にも技術的にも向上した未来をきっと手に入れているはずなのだ。したがって、われわれが宇宙からのエイリアンに遭遇したとして、彼らが生物と機械の合成であっても驚くにあたらない。
物理学者のポール・ディヴィスは、もう一歩先を行なっている。「私の結論は驚くべきものだ。思うに、生物の姿をした知性は、一時的に現れたものにすぎず、宇宙での知性の進化においてはつかのまの段階にすぎない可能性がきわめて高い――それどころか、これは必然とも言える。地球外の知世に遭遇することがあれば、それは本質的にポスト生物である生物である可能性が圧倒的に高いと思うし、この結論は、SETI(地球外知的生命探査)に明白かつ多大な影響を及ぼすだろう」
さらにAIの専門家ロドニー・ブルックスもこう書いている。「私は予感する。2100年までに、日常生活のどこにでも、非常に知能の高いロボットが存在するようになる。だが、人間とそれに別々に存在するわけではない――むしろ、人間は部分的にロボットになり、ロボットにつながれるのだ」
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これは人類の分裂に向かう一歩であり、人類の定義そのものが危うくなっている、と批判する人もいる。ひょっとすると、遺伝子を強化した人類のさまざまな分派が太陽系の各地に住み、やがては別の種に分かれてしまうかもしれない。そして、分派のあいだで対立のみならず、懸念さえ起こる可能性が考えられる。「ホモ・サピエンス」という概念にさえ、疑いが生じるのではないか。
オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』(大森望訳、早川書房など)ではバイオテクノロジーを用いて、生まれながらにして社会を導くよう運命づけられている「アルファ」という優等人種が生み出されている。それ以外の受精卵は、酸素が減らされて知能に障害を負い、アルファに仕えるものとして生み出されている。社会の底辺に位置するのは「イプシロン」で、単純な肉体労働をするように生み出される。この社会は、テクノロジーを用いてあらゆるニーズを満たす、計画的なユートピアであり、すべてが秩序正しく平和に見える。ところが社会全体は、底辺で生きるべく生み出された人々の抑圧と貧苦のもとになり立っているのだ。