じじぃの「歴史・思想_218_シンギュラリティ・人体3.0・サイボーグ化」

BioDigital Human 3.0 Platform Video

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=O2ua4eT8AAI

DK Eyewitness The Ultimate Human Body 3.0 (Repack)

http://www.shoplack.com/detail.aspx?id=236

楽天ブックス:シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき

レイ・カーツワイル(著)
【目次】
第1章 六つのエポック
第2章 テクノロジー進化の理論ー収穫加速の法則
第3章 人間の脳のコンピューティング能力を実現する
第4章 人間の知能のソフトウェアを実現するー人間の脳のリバースエンジニアリング
第5章 衝撃……
第6章 わたしは技術的特異点論者だ
https://books.rakuten.co.jp/rb/14117597/

『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 』

レイ・カーツワイル/著 NHK出版/編 2016年発行

衝撃…… より

われわれはサイボーグになっていく

バージョン2.0の人体のシナリオは、テクノロジーとますます緊密な関係になる傾向がこの先もずっと続くことを示している。誕生した当初のコンピュータは、空調のきいた部屋で白衣の専門家が管理する巨大な機械で、一般の人にとってはずいぶん遠い存在だった。それが机上に置けるようになったかと思うと、じきに腕で抱えて運べるようになり、今ではポケットに入っている。遠からず日常的に体や脳の内側に入ってくるだろう。2030年代までには、人間は生物よりも非生物に近いものになる。第3章で述べたように、2040年代までに非生物的知能はわれわれの生物的知能に比べて数十億倍、有能になっているだろう。
深刻な疾患や障害の克服という大いなる恩恵を求めて、これらのテクノロジーは急速に発展し続けるだろう。しかし、医療への応用はまだ初期の段階にある。技術が確立すれば、障壁はなくなり、それらによって人間の可能性はとてつなく拡大される。
バージョン2.0の人体にはさまざまなバリエーションがあり、器官と片だのシステムはそれぞれ独自の発展と改良の道をたどることになる。生物進化がもたらすのは、いわゆる「局所的最適化」だけだ。つまり、改良できるには、生物がはるか昔に到達した設計上の「決定」の範囲内に限られるのだ。たとえば、生物進化では、ひじょうに限られた材料――すなわち、タンパク質――からあらゆる部分を作られなくてはならない。タンパク質は一次元的なアミノ酸配列が折りたたまれてできている。また、思考プロセス(パターン認識、論理分析、技能形成、その他の認知スキル)は、きわめて時間のかかる化学的スイッチングによるしかない。そして生物の進化そのものはひじょうにゆっくりと進み、これらの基本概念の範囲内でに改良を続けていく。急激な変化、たとえば、組織がダイヤモンド状になったり思考プロセスがナノチューブベースの論理スイッチングになったりという変化はありえない。
しかし、この逃れようのない中にも道はある。生物の進化は、思考し環境を操作できる種を生みだしたのだ。この種は今やみずからのデザインにアクセスするとこ――ひいては改良すること――に成功しつつあり、生物の根本教義を再考し作り替えることを可能にしている。

バージョン3.0の人体

人体は――2030年代から2040年代には――さらに根本的なところから再設計されてバージョン3.0になっているとわたしは想像する。個々の下位組織を作り直すというよりも、われわれ(思考と活動にまたがる生物的および非生物的部分)はバージョン2.0での経験をもとにして人体そのものを刷新する機会を得るだろう。バージョン1.0から2.0への移行のときと同様に、バージョン3.0への移行もゆっくりと進み、その過程では多くのアイデアが競合することになる。
バージョン3.0の特性としてわたしが想像するのは、人体を変化させる能力だ。VR環境ではいともたやすく実現できることだが(次の「人間の脳」の節を参照のこと)。われわれは現実世界でもそれを可能にする方法を身につけるだろう。具体的にはMNT(マイクロ・ナノテクノロジー)ベースの構造が体内に組み入れることによって、身体的特徴を好きなようにすぐ変えられるようになる。
脳の大半が非生物的なものになっても、肉体の審美的価値と精神的意味が失われることはないだろう。

人間の脳

2030年のシナリオ

ナノボットテクノロジーは、現実そのものの、完全に見る者を取り込むVR空間を作りだす。ナノボットは人間の感覚から生じるあらゆるシナプス結合と物理的に近接した場所に陣取るだろう。すでにニューロンと双方向で情報伝達する電子デバイスを作る技術があり、それは直接ニューロンと物理的に接触する必要はない。たとえば、マックス・プランク研究所の科学者が開発している「ニューロントランジスタ」は、近くのニューロンの発火を検出するか、あるいは、発火を起こしたり抑止したりできる。これは、電子工学に基づたニューロントランジスタニューロンの間での双方向の情報伝達に等しい。前述したように、量子ドットもまた、ニューロンとエレクトロニクス素子間での非侵襲性の情報伝達能力を示している。
あなたが本物の現実世界を体験したいと思うときには、ナノボットは今いる場所(毛細血管の中)を動かずなにもしない。VRの世界に入りたいと思えば、ナノボットは五感をとおしてはいってくる現実世界の情報をすべて抑制し、ヴァーチャル環境に適した信号に置き換える。脳はこれらの信号をその肉体が体験したものであるかのように捉える。脳はもとより、体の体験するものを直接感じているわけではないのだ。
体からの入力――数百メガbpsにもなる――つまり、触感、温度、酸性度レベル、食物の移動、その他の物理的出来事を表現する情報は、ラミナ1(脊髄灰白質の第1層)のニューロンに流れ込み、視床下部後方腹内側核を通って、大脳の島(とう)皮質の左右2ヵ所に到達する。これらが正しくコード化されれば――脳のリバースエンジニアリングの取り組みがやがてその方法を明かすだろう――脳は合成された信号を事実の体験とまったく同じものとして捉える。筋肉や手足をいつものように動かそうとしても、ナノボットがそれらのニューロン間の信号を傍受して本物の手足が動きのを抑止し、代わりにヴァーチャルな手足を動かすことになる。その際、前庭神経系はしかるべく調整され、ヴァーチャル環境で適切に手足を動かし、学習をし始める。
ウェブ上には探検するにうってつけのヴァーチャル環境が勢揃いするだろう。実在する芭蕉を再現するものもあれば、空想的な県境もある。中には、物理の法則を無視した、現実にはありえない世界さえ生まれるだろう。そのようなヴァーチャルな場所を訪れ、シミュレートされた人間ばかりでなく、本物の人間(もちろん、突きつめれば、両者に明確な違いはない)を相手に、ビジネスの交渉から官能的な出会いまで、さまざまな関わりをもつことができる。「VR環境デザイナー」という新しい職種が生まれ、新しい芸術の形となるだろう。