じじぃの「歴史・思想_217_シンギュラリティ・人間の脳をアップロードする」

How close are we to uploading our minds? - Michael S.A. Graziano

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2DWnvx1NYUA

upload your brain to the cloud

楽天ブックス:シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき

レイ・カーツワイル(著)
【目次】
第4章 人間の知能のソフトウェアを実現するー人間の脳のリバースエンジニアリング
https://books.rakuten.co.jp/rb/14117597/

『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 』

レイ・カーツワイル/著 NHK出版/編 2016年発行

人間の知能のソフトウェアを実現するー人間の脳のリバースエンジニアリング より

脳と機械を接続する

人間の脳の仕組みを理解することは、同じような生物的な特徴をもった機械を設計する際に役立つだろう。そうした役立て方でもうひとつ重要なのは、われわれの脳とコンピュータを実際に接続することである。数十年先には、両者はますます密接に融合するようになる、とわたしは確信している。
すでに国防高等研究計画局(DARPA)が、年間2400万ドルを投じて、脳とコンピュータを直接連結する研究を行なっている。MITのトマソ・ポッジョとジェームズ・ディカルロ、およびカリフォルニア大学のクリストフ・コッホが、視覚対象の認識と、その情報の符号化の方法をモデル化しようと試みている。これらはゆくゆくは、イメージを直接脳に送り込むことに適用されるだろう。

人間の脳をアップロードする

「脳をスキャンして理解する」よりももっと論議を呼ぶシナリオが、「脳をスキャンしてアップロードする」というものだ。人間の脳をアップロードするということは、脳の目だった特徴をすべてスキャンして、それらを、充分に強力なコンピューティング基板に再インスタンス化する[プログラミングにおいて新たなデータを取り込み直す]ことである。このプロセスでは、その人の人格、記憶、技能、歴史のすべてが取り込まれる。
もしも、ある人物の頭脳プロセスを本当に取り込むのなら、再インスタンス化された頭脳には、身体が必要となる。なぜなら、われわれの思考の多くは、身体的なニーズや欲望に向けられているからだ。人間の脳をそのすべての細部まで取り込み再現するツールを手にするころには、われわれの知能を拡張し利用している非生物的人間、および生物的人間双方の21世紀型身体が、豊富に用意されていることだろう。人間の身体バージョン2.0には、完全に現実的なヴァーチャル環境におけるヴァーチャル身体や、ナノベースの物理的身体、その他もろもろのラインナップが準備されている。
第3章で、人間の脳をシミュレートするためのメモリとコンピューティングの要件を見積もった。1016CPSのコンピューティングと1013ビットのメモリがあれば人間レベルの知能を充分に摸倣できると推論したが、アップロードする場合の要件の見積もりはもっと高く、それぞれ1019CPSと1018CPSビットだった。見積もりに差があるのは、低いほうの値は、人間レベルのパフォーマンスを行なう脳の領域を再現する要件に基づき、他界法の値は、われわれがもつ約1011個のニューロンと1014個のニューロン間結合のそれぞれに見られる重要な細部を取り込むことを基本基本としているからだ、アップロードが実現可能になれば、たぶん、これらをミックスした解決法が好ましくなるだろう。
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おそらく、もっとも重要な問題は、アップロードされた人間の脳が、本当にあなたなのか、というものだ。

たとえアップロードされたものが個人専用のチューリングテストをパスして、あなたと見分けがつかないと判断されても、アップロードされたものがこれまでと同じ人なのか、それとも新しい人なのか、という疑問をもち続けるのは当然のことだ。なんといっても、オリジナルの人物はまだ存在しているかもしれないのだから、こうした本質的な問題は、第6章までとっておくことにする。
わたしの考えでは、アップロードのもっとも重要な点は、われわれの知能や個性や技能を、非生物的な知能へと、徐々に移し替えることだ。すでに、多様な人工神経装置の移植が実践されている。2020年代には、ナノボットを使って、非生物的な知能で脳を増強させるようになる。まずは、感覚処理や記憶といった「定常的」な機能に始まり、技能の形成、パターン認識、論理的分析に進んでいく。2030年代には、われわれの知能の中に占める非生物的部分の割合が優勢になり、2040年代には、第3章で述べてように、非生物的な部分の性能のほうが何十億倍も高くなる。ある程度の間は生物的な部分を保持しようとするかもしれないが、そのうちに、それにたいして重要なことではなくなる。そういうわけで、われわれは事実上アップロードされた人間になる。たとえその過程が徐々に進み、移管にはほとんど気づかなかったとしても。「古いレイ」や「新しいレイ」などというものはない。どんどんと性能を増すレイがあるだけだ。本章で論じた、一瞬にしてスキャンして移管するというシナリオのアップロードが本来の世界では当たり前になるに違いないが、徐々に、しかも避けがたく進行して、はるかに優れた非生物的思考に移行していく、というシナリオのほうこそ、人間文明を根底から変容させるものなのだ。