じじぃの「歴史・思想_159_ホモ・デウス・無用者階級」

Yuval Noah Harari: Workplace Automation & the "Useless Class"

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=OMDlfNWM1fA

The rise of the useless class

AI and the Creation of the Useless Class

September 10 by Ian Guerin
The development of full AI could spell the end of the human race” - Stephen Hawking
“Can we build AI without losing control over it?” - Sam Harris
“The biggest risk we face as a civilization is artificial intelligence” - Elon Musk
https://theianguerin.wordpress.com/2019/09/10/ai-and-the-creation-of-the-useless-class-2/

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来 2018/9/20 ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳) Amazon

世界1200万部突破の『サピエンス全史』著者が戦慄の未来を予言する! 『サピエンス全史』は私たちがどこからやってきたのかを示した。『ホモ・デウス』は私たちがどこへ向かうのかを示す。
全世界1200万部突破の『サピエンス全史』の著者が描く、衝撃の未来!
【下巻目次】
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第9章 知能と意識の大いなる分離
無用者階級/87パーセントの確率/巫女から君主へ/不平等をアップグレードする

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『ホモ・デウス(下) テクノロジーとサピエンスの未来』

ユヴァル・ノア・ハラリ/著、柴田裕之/訳 河出書房新社 2018年発行

知能と意識の大いなる分離 より

前の章では、自由主義の哲学を切り崩す近年の科学的発見をざっと眺めてきた。今度はそうした発見の実際的な意味合いを考察しよう。自由主義者は自由市場と民主的な選挙を擁護する。一人ひとりの人間が比類のない価値のある個人であり、その自由な選択が権威の究極の源泉であると信じているからだ。21世紀には、この信念を時代後れにしかねない、3つの一切的な進展が考えられる。
1 人間は経済的有用性と軍事的有用性を失い、そのため、経済と政治の制度は人間にあまり価値を付与しなくなる。
2 経済と政治の制度は、集合的に見た場合の人間には依然として価値を見出すが、無類 の個人としての人間には価値を認めなくなる。
3 経済と政治の制度は、一部の人間にはそれぞれ無類の個人として価値を見出すが、彼らは人口の大半ではなくアップグレードされた超人という新たなエリート層を構成することになる。

無用者階級

21世紀の経済にとって最も重要な疑問はおそらく、膨大な数の余剰人員をいったいどうするか、だろう。ほとんど何でも人間よりも上手にこなす、知能が高くて意識を持たないアルゴリズムが登場したら、意識のある人間たちはどうすればいいのか?
歴史を通して求人市場は3つの部門に分かれていた。農業、工業、サービス業だ。1800年頃までは、大半の人は農業に従事しており、工業とサービス業で働く人はほんのわずかだった。その後、産業革命の間に、先進国の人々は農地や家畜から離れた。大多数は工業の分野で働き始めたが、サービス部門で仕事に就く人もしだいに増えていった。過去数十年間に、先進国は新しい革命を経験した。工業の仕事が消え、サービス部門が拡大したのだ。アメリカでは2010年には、農業で暮らしを立てる人はわずか2パーセント、工業部門で働く人は20パーセントだったのに対して、78パーセントの人は、教師や意思やウェブページデザイナーなどの職に就いていた。心を持たないアルゴリズムが人間より上手に教えたり、診断を下したり、デザインをしたりできるようになったら、私たちはどうしたらいいのか?
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2030年や40年に求人市場がどうなっているか私たちにはわからないので、今日すでに、子供たちに何を教えればいいのか見当もつかない。現在子供たちが学校で習うことの大半は、彼らが40歳の誕生日を迎える頃にはおそらく時代遅れになっているだろう。従来、人生は2つの主要な部分に分かれており、まず学ぶ時期があって、それに働く時期が続いていた。いくらもしないうちに、この伝統的なモデルは完全に廃(すた)れ、人間が取り残されないためには、一生を通して学び続け、繰り返し自分を作り変えるしかなくなるだろう。大多数とは言わないまでも、多くの人間が、そうできないかもしれない。
やがてテクノロジーが途方もない豊かさをもたらし、そうした無用の大衆がたとえまったく努力をしなくても、おそらく食べ物や支援を受けられるようになるだろう。だが、彼らには何をやらせて満足させておけばいいのか? 人は何かする必要がある。することがないと、頭がおかしくなる。

彼らは1日中、何をすればいいのか? 薬物とコンピューターゲームというのが1つの答えかもしれない。

必要とされない人々は、3Dのバーチャルリアリティの世界でしだいに多くの時間を費やすようになるかもしれない。その世界は外の単調な現実の世界よりもよほど刺激的で、そこでははるかに強い感情を持って物事にかかわれるだろう。とはいえ、そのような展開は、人間の人生と経験は神聖であるという自由主義の信念に致命的な一撃を見舞うことになる。夢の国で人工的な経験を貪って日々を送る無用の怠け者たちの、どこがそれほど神聖だというのか?
ニック・ボストロムのような、一部の専門家や思想家は次のように警告する。人類はそのような堕落を経験しそうもない、なぜならAIは、いったん人間の知能を超えたら、人類をあっさり撲滅するかもしれないからだ、と。AIがそうするのは、反発した人類に電源を切られるのを恐れるため、あるいは、何か独自の計り知れない目標を追求するためである可能性が高い。なぜ計り知れないかと言えば、それは、人間が自分より利口なシステムの動機付けを制御するのは極度に難しいだろうからだ。
一見すると当たり障りのなさそうな目標を、あらかじめシステムにプログラムしておいた場合にさえ、想定外の恐ろしい結果を招きかねない。とても人気のある筋書きとして次のようなものが挙げられる。ある企業が人工のスーパーインテリジェンスの第1号を設計士、円周率の計算のような無害の試験を行なう。ところが、誰も事態を把握しないうちに、そのAIが地球を乗っ取って、人類を皆殺しにし、銀河の果てまで征服に乗り出して、既知の宇宙全体を巨大なスーパーコンピューターに変え、そのコンピューターがかつてないほど高い精度を追い求めて際限なく円周率を計算し続ける。なにしろそれが、自分の創造主によって与えられた神聖な使命なのだから。