じじぃの「歴史・思想_154_ホモ・デウス・認知革命」

Why humans run the world | Yuval Noah Harari

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nzj7Wg4DAbs

The Prehistoric Ages: How Humans Lived Before Written Records

メソポタミア文明 世界史の窓

ティグリス・ユーフラテス両河流域に前3000年頃、都市文明が成立。エジプトと並んでオリエント文明の中心地域となる。シュメール人セム系、インド=ヨーロッパ語系などの民族が興亡し、バビロニアアッシリア、ペルシア帝国などが古代国家が成立した。
●都市文明の形成
前4000年紀 前4000年紀の初め頃、最初の都市文明が形成された。その代表がユーフラテス下流の左岸にあるウルク(現在のワルカ)である。またウルク遺跡から楔形文字を記した粘土板が大量に見つかっており、これが最古のまとまった楔形文字資料である。このメソポタミア南部の都市文明を成立させたのはシュメール人(民族系統は不明)と言われている。
シュメール初期王朝 前3000年紀のシュメール初期王朝(前2900~2335年頃)時代には、ウルク、ラガシュ、ウル、ニップルなど20ほどの都市国家が形成された。シュメール人は青銅器や楔形文字を用い、多神教信仰、ギルガメッシュ叙事詩などの文化を産みだした。
https://www.y-history.net/appendix/wh0101-004.html

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来 2018/9/5 ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳) Amazon

世界1200万部突破の『サピエンス全史』著者が戦慄の未来を予言する! 『サピエンス全史』は私たちがどこからやってきたのかを示した。『ホモ・デウス』は私たちがどこへ向かうのかを示す。
全世界1200万部突破の『サピエンス全史』の著者が描く、衝撃の未来!
【上巻目次】
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手
紙の上に生きる/聖典/システムはうまくいくが……

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『ホモ・デウス(上) テクノロジーとサピエンスの未来』

ユヴァル・ノア・ハラリ/著、柴田裕之/訳 河出書房新社 2018年発行

物語の語り手 より

21世紀の新しいテクノロジーは、神や国家や企業といった虚構をなおさら強力なものにしそうなので、未来を理解するためには、イエス・キリストフランス共和国やアップル社についての物語がどうやってこれほどの力を獲得したかを理解する必要がある。人間は自分たちが歴史を作ると考えるが、じつは歴史はこうした虚構の物語のウェブを中心にして展開していく。個々の人間の基本的な能力は、石器時代からほとんど変わっていない。それどころか、もし少しでも変ったとすれば、おそらく衰えたのだろう。だが、物語のウェブはますます強力になり、それによって歴史を石器時代からシリコン時代へと押し進めてきた。

すべてが始まったのはおよそ7万年前、認知革命のおかげでサピエンスが自分の想像の中にしか存在しないものについて語りだしたときだ。

その後の6万年間に、サピエンスは多くの虚構のウェブを織り成したが、それはみな小さく局地的なものにとどまった。ある部族が崇拝する尊い祖先の霊は、近隣の部族の人々にはまったく知られておらず、ある土地で価値のある貝殻は近くの山脈を越えた途端に値打ちを失った。それでも、祖先の霊や貴重な貝殻についての物語にとって大きな強みだった。そうした物語のおけげで、何百もの、ときには何千ものサピエンスが効果的に協力できたからで、それはネアンデルタール人チンパンジーには望むべくもないことだった。とはいえ、サピエンスがまだ狩猟採集民であるうちは、本当に大規模な協力はできなかった。狩猟と採集では、都市や王国を養うことは不可能だったからだ。したがって、石器時代の霊や妖精や魔物は比較的弱い存在だった。
約1万2000前に始まった農業革命は、共同主観的ネットワークを拡大・強化するのに必要な物質的基盤を提供した。農耕のおかげで、込み合った都市の何千という人や、訓練された軍隊の何千という兵士を養うことが可能になった。とはいえ、共同主観的なウェブはそこで新たな障害にぶつかった。集団的神話を維持し、大規模な協力を組織するために、初期の農耕民は人間の脳のデータ処理能力に頼っていたが、その能力には厳しい制約があったからだ。
農耕民は偉大な神々についての物語を信じていた。彼らはお気に入りの神のために神殿を建て、その神を称えて祝祭を催し、生贄を捧げ、土地や収穫の一部や供物を献じた。6000年前頃、古代シュメールの初期の都市では、神殿は崇拝の中心地であるばかりか、最も重要な政治的中枢や経済的中枢でもあった。
シュメールの神々は、現代のブランドや企業に相当する機能を果たしていた。今日、企業は資産を所有し、お金を貸し、従業員を雇い、経済的事業を始める。ウルクやラガシュやシュルッパクといった古代都市では、神々は農地や奴隷を所有し、融資をしたり、受けたり、給金を払ったり、ダムや運河を建設したりできる法人として機能していた。

紙の上に生きる

書字はこのようにして、強力な想像上の存在の出現を促し、そうした存在が何百万もの人を組織し、河川や湿地やワニのありようを作り変えた。書字は同時に、人間にとってそうした虚構の存在を信じやすくもした。書字のおかげで、人々は抽象的なシンボルを介して現実を経験することに慣れたからだ。
狩猟採集民は木に登ったり、キノコを探したり、イノシシやウサギを追うかけたりして日々を過ごした。彼らの日常的な現実は、木々やキノコ、イノシシやウサギから成り立っていた。農耕民は畑を耕したり、作物を取り入れたり、小麦を挽(ひ)いたり、家督の世話をしたりして日がな1日、野良で働いた。彼らの日々の現実とは、素足で踏み締めるぬかるんだ大地の感触や、鋤を引く牛の臭い、かまどから取り出した焼きたてのパンの味だった。一方、古代エジプトの書記は、ほとんどの時間を読んだり書いたり計算したりするのに捧げた。彼らの日常の現実は、パピルスの巻物の表面に残されたインクの印から成り立っており、その印によって、誰がどの畑を所有し、牛1頭の値段がいくらで、その年に農民がどれだけの税を払わなければならないかが定められていた。書記はペンをさっと走らせるだけで、1つの村全体の運命を決められた。
大多数の人は近代になるまで読み書きができなかったが、最も重要な管理者たちはしだいに、文書という媒体を通して現実を見るようになった。古代のエジプトにおいてであれ、20世紀のヨーロッパにおいてであれ、読み書きのできるこのエリート層にしてみれば、紙に記されたことは何でも、木々や牛や人間と少なくとも同じぐらい現実味があった。
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書字の歴史はこの種の災難に満ち満ちているが、少なくとも政府の視点に立てば、行政の効率向上がもたらす利益は、たいていコストを上回った。筆を振るうだけで現実を変えようとすることの魅力に抗(あらが)える支配者はいなかったし、それが惨事を招いた場合の救済策はどうやら、なおさら大量の覚書を書き、なおさら多くの基準を定め、布告や命令を出すことだぅたようだ。
文字で表すのは現実を描写するささやかな方法と思われていたかもしれないが、それはしだいに、現実を作り変える強力な方法になっていった。公の報告者が客観的な現実と衝突したときには、現実のほうが道を譲ることがよくあった。税務当局や教育制度、その他どんな複雑な官僚制であれ、相手に回したことのある人なら誰もが知っているように、事実はほとんど関係ない。書類に書かれていることのほうがはるかに重要なのだ。