じじぃの「オールコックが見た日本・今に残る偏見!驕れる白人と闘うための日本近代史」

オールコックが描いた挿し絵

驕れる白人と闘うための日本近代史 松原久子 田中敏 文藝春秋BOOKS

●近代史を見れば、白人が野蛮だったのは明らかだ!
自分たちの歴史こそ世界史であり、自分たちこそ文明の名に相応(ふさわ)しく、地球上の全民族は欧米文明の恩恵に浴することで後進性から救われる、という欧米人の優越意識に、決然と闘いを挑むべくドイツ・ミュンヘンで出版され大きな物議をかもした書。
著者は、江戸期の鎖国日本がみごとなまでに経済的社会的にバランスのとれた「小宇宙」社会を形成していたこと、それを壊さざるをえなかったのが、欧米の「侵略」に抗した日本近代史の真相であると、「日本の文明的優越」論を展開する。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163669809

『驕れる白人と闘うための日本近代史』

原久子/著、田中敏/訳 文春文庫 2008年発行

一人の紳士 初代イギリス駐日行使・オールコックが見た日本 より

オールコックは当時最大の植民地保有国の外交官として、自分の役割に忠実であった。彼は全てに優先させて国益を念頭においた。当時の日本について記した著作には、思わず意に反して吐露してしまった感嘆と、植民地王国の矜持とがない交ぜになっている。
彼は書いている。
「将軍の都は心を奪われるほど美しい。冬でさえも。都は広大な谷の間に、危険を避けて身をかがめるように横たわっている。波を打つような丘陵を背景にした緑の森に囲まれ、丘陵は湾へとゆるやかに傾斜している。その湾の奥深くに、太平洋が磯に砕け散る激しい波を注ぎ込むことはできない。というのは、湾の入り口のおよそ20マイル前方に、火山岩が自然の防波堤を積み上げ、入り口の両側は緑の丘になっているからである。また湾全体は自然の浅瀬で、船底が20フィートの水深を必要とする戦艦では、砲撃に不可欠な20海里の近さまで都に接近するのは、困難だと思われる。世界の港都の中で江戸のように海側から攻撃するのが難しい都市は少ない。
……ヨーロッパには、江戸のように沢山の素晴らしい特質を備えている都はない。また、町のたたずまいと周囲の風景のこのような美しさを誇れる都もない。そして江戸ほど征服し占領するのが難しい都も、他には見あたらない。ペルシャ王クセルクセスの軍隊のような強力な大軍を編成すれば別だが。将軍の居城のある町の中心部の官庁街は、重要な区域であるが、ここはあまりにも広大な地域であるから、仮に占領はできても、その後、安全に確保し続けることはできないだろう。ヨーロッパの指揮官は、誰も江戸のような町を襲撃して占領するだけの自信がないだろう。敵対心を持った住民のもとでは、町は軍事的に持ちこたえられないだろう、たとえ1つか2つ橋頭堡を築くことができて、そこから町を容易に破壊することができたとしても」
この胸中を明かした一節は、オールコックが一時帰国後、1863年にロンドンとニューヨークで同時に出版した日本滞在記『大君の都』の中にある。
この本は、東アジア地域における欧米列強の権益拡大に強い関心を持っていた一般大衆を、大いに啓蒙した。
アヘン戦争があったのは、この本が出版されるわずか20年ほど前のことである。北京政府は、イギリスの東インド会社をはじめとする欧米の商社が、国内に大量のアヘンを持ち込むことに抵抗した。そのため大きな海港のいくつかが、イギリス艦隊の砲撃を受けて壊滅した。アヘン戦争に敗れた北京政府は、アヘンの輸入を妨害しないという保証も含めて、広範な貿易を容認しなければならなかった。このことが欧米の植民地利益の発展に、有利な効果をもたらしたことはいうまでもない。
ということを考えると、ここにオールコックの著作から引用した一節は、たまたま戦略的な問題に関心を抱いていたヨーロッパの一外交官の個人的な印象以上のものであったことは確かである。
図らずもオールコックのこの一節は、日本にキリスト教を伝え、後に聖人の列に加えられたスペイン人の宣教師フランシスコ・ザビエルが、これより300年以上前に、日本について記していたことを思い出される。ザビエルは、「日本人はみな用心深く、我々ヨーロッパ人が知っている武器は全て製造することも使うこともできる」と書き、日本は軍事力で征服を試みるには適さない対象である、と付け加えている。

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どうでもいい、じじぃの日記。
市内の図書館が閉まっていたので、古本屋に行った。
『驕れる白人と闘うための日本近代史』か。
本をパラパラめくったら、「一人の紳士 初代イギリス駐日行使・オールコックが見た日本」があった。
著者は松原久子という日本人だ。ドイツ評論家ということだが原書はドイツ語で書かれていて、わざわざ別の日本人に訳させている。
「訳者まえがき」に、こんなことが書かれていた。
  さて、逸話のクライマックスは番組終了後である。「テレビ局からケルン駅に出てハンブルグ行きを待っていると人ごみの中から中年の女性が近づいてきた。(中略)彼女は私の前に立ち、『我々のテレビで我々の悪口を言う者はこれだ。日本へ帰れ』と言うなり私の顔をぴしゃりと平手打ちをくらわし、さっさと消えていった」
ドイツ人もそうだが、白人こそ優れた人種で、黄色人種や黒人は劣等民族だと思っているヨーロッパ人が多いのだそうだ。
著者によれば、キリスト教のようなすばらしい宗教を持たない民族は劣等民族と見ているのだという。
日本滞在が長かった英国外交官ラザフォード・オールコックでさえ、日本人は器用な国民だが神を持たない劣等な国民と見ていたらしい。
現在、白人の中に教会に行く人が少なくなり、キリスト教信者も少なくなっている。
しかし今でも、白人の心のなかにはどこかに白人種が優れていると思い込んでいる人が多いのだそうだ。