じじぃの「歴史・思想_114_数学の天才・先駆者・ガロア」

Galois theory

Galois theory for non-mathematicians

Dec 26, 2019 Towards Data Science
How a teenager invented a new branch of mathematics to solve a long standing open question about equations
https://towardsdatascience.com/galois-theory-for-non-mathematicians-3bc08cd40c4a

『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』

イアン・スチュアート/著、水谷淳/訳 ダイヤモンド社 2019年発行

根と革命家 エヴァリスト・ガロア より

エヴァリスト・ガロア(1811~1832年
1832年6月4日の決闘前夜、ガロアは自らの数学研究の成果を文書にまとめていた。その中核をなしていたのが、置換の特別な集合(ガロアは「群」と名付けた)を使って、代数方程式の解の公式が存在するかどうかを判定する方法である。また、このアイデアと、楕円積分という特別な関数との関係性についても書き記した。ガロアの結果からは、一般的な五次方程式の解を与える代数学的な公式は存在しないという結論を、容易に導くことができる。それまで何百年ものあいだ、数学者はこの問題に悩まされていた。ガブリエル・ルッフィーニがそのほぼ完全な証明を発表したが、その証明はとてつもなく長く、ニールス・ヘンリク。アーベルがもっと単純な証明を考え出していた。

群は「数学全体」をその真髄まで削ぎ落としたもの

ガロアが偉人である理由は、その定理よりも方法論にある。いままではガロア群と呼ばれている置換の群は、解どうしの代数学的関係を保つような、解どうしのすべての置換からなる。もっと一般的に言うと、ある数学的存在が与えられたら、その構造を保つようなすべての変換(置換の場合もあれば、剛体運動のようにもっと幾何学的な変換の場合もある)を思い浮かべることができる。それをその数学的存在の対称群という。ここでいう「群」というのは、ガロアの考えた置換の群が持ついくつかの特徴のなかでも、とくにある一つの特徴に注目したものである。ガロアもその特徴と重視したが、もっと包括的な概念に発展させることはなかった。その特徴とは、ある対称変換をおこなったのちに別の対称変換をおこなうと、必ずある対称変換になるというものである。
幾何学における単純な例として、平面上の正方形を剛体運動によって嫌韓させる場合を考えよう。正方形は、横に滑らせたりぐるぐる回したりひっくり返したりできる。そのなかで、正方形の見た目が変わらないのはどのような運動だろうか? 横に滑らせるのはだめだ。中心が別の場所に移動してしまう。回転させるのはいいが、ただし90°が1回または何開花に限られる。それ以外の角度だと、最初の状態と違って傾いてしまう。最後に、ひっくり返す場合としては、2本の対角線と、互いの対辺の中点どうしを結んだ直線と言う、4本の軸を中心にしてひっくり返すのはかまわない。さらに、「何もしない」という当たり前の変換を忘れなければ、合計でちょうど8通りの対称変換がある。
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対称性は、、代数学から確率論まで数学のあらゆる分野に浸透していて、数学や数理物理学のまさに中核をなしている。何か数学的存在をあたえられたら、「その対称性は?」という疑問がすぐに頭に浮かんでくるし、その答えからはさまざまな情報を得られることが多い。
物理学でいうと、アインシュタインの特殊相対論は、物理法則のある特定の対称群(ローレンツ群という)のもとで物理量がどのような振る舞いを見せるか、それにほぼ尽きる。そして、誰がいつ観測するかによって自然法則が変化するはずはないという哲学的主張に基づいている。さらに今日、量子力学におけるすべての素粒子(電子、ニュートリノ、ボソン、グルーオンクォークなど)は、たった一つの対称群に基づいて分類され説明されている。
ガロアが踏み出した重要な一歩は、対称性を変換群のもとでの普遍性として形式化することにつながった。そして、現代の代数学の重要な特徴である、群の抽象的な定義へと至った。アンリ・ポアンカレはあるとき、群は「数学全体」をその神髄まで削ぎ落としたものであるとまで語った。大げさな言葉だが、気持ちはわかる。