じじぃの「歴史・思想_112_数学の天才・先駆者・フーリエ」

Episode 2 - Joseph Fourier

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=okGKd0W9-y8

Joseph Fourier

ジョゼフ・フーリエ

ウィキペディアWikipedia
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ男爵は、フランスの数学者・物理学者。
固体内での熱伝導に関する研究から熱伝導方程式(フーリエの方程式)を導き、これを解くためにフーリエ解析と呼ばれる理論を展開した。フーリエ解析は複雑な周期関数をより簡単に記述することができるため、音や光といった波動の研究に広く用いられ、現在調和解析という数学の一分野を形成している。
このほか、方程式論や方程式の数値解法の研究があるほか、次元解析の創始者と見なされることもある。また統計局に勤務した経験から、確率論や誤差論の研究も行った。

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『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』

イアン・スチュアート/著、水谷淳/訳 ダイヤモンド社 2019年発行

熱を操る者 ジョゼフ・フーリエ より

●ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ(1768~1830年
1804年のこと、数理物理学が世間の話題になっていた。以前にヨハン・ベルヌーイが、ニュートンの法則と、伸ばしたばねがおよぼす力に関するフックの法則とを組み合わせて、それをバイオリンの絃の振動に適用していた。そのアイデアをもとに、ジャン・ル・ロン・ダランベール波動方程式を導いた。それは偏微分方程式の一種で空間と時間に対する弦の形の変化率どうしを結びつけている。この方程式は、水の波、音波、振動と、あらゆる種類の波の振る舞いを支配している。これと同様の方程式が、時期、電気、重力に関しても提唱されていた。
そこでジョゼフ・フーリエは、これと同じ方法を、物理学の分野、媒質中での熱の流れに当てはめようと考えた。そして3年にわたる研究のすえ、熱の伝わり方に関する長大な論文を書き上げた。

地球温暖化の「温室効果

1820年代、フーリエ地球温暖化研究の先駆けの一人だった。とはいっても、人為的な地球温暖化による気候変動のことではない。生命を養えるほどに地球が暖かいのはなぜかを理解したかっただけだ。そのためにフーリエは、熱の流れに関するジ図からの理論を母なる惑星に当てはめた。当時、熱源として知られていたのは、太陽から地球に降り注ぐ放射だけだった。地球はその熱の一部を宇宙空間に再放射する。これらの放射の差で、観測されている地表の平均温度を説明できるはずだ。しかし辻褄が合わなかった。フーリエの計算では、地球は実際よりもかなり冷たいはずだったのだ。

フーリエのひらめきは現代にも幅広く応用されている

フーリエは、いまでは熱演算子と呼ばれるものを使って、平面領域や空間領域における熱の流れを表わす方程式も導いた。その方程式は、ある位置での温度変化と、その近傍への熱の拡散を組み合わせた形になっている。のちに、任意の次元の空間においてどんな場合にフーリエ級数で熱伝導方程式を解けるのかが、数学的に解明される。しかしそれ以前にすでに、この手法はもっとずっと幅広く応用できて、熱だけでなく電子工学にも通用することが明らかになっていた。
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200年近く経ち、フーリエのひらめきは数学者や物理学者や工学者にとって欠かせない道具となった。周期的な挙動は至るところに存在していて、そのような場合には必ず、それに対応するフーリエ級数を導いてその振る舞いを見極めることができる。この手法を一般化したフーリエ変換は、周期的でない関数にも通用する。離散的な場合の手法である高速フーリエ変換は、応用数学で最も幅広く使われているアルゴリズムで、信号処理や、計算機代数における高精度演算に応用されている。
フーリエ級数を使って地震学者は地震の解明に取り組んでいるし、土木技師は耐震性の建物を設計している。海洋学者は深海の地図を作り、石油会社は油田を探索する。生化学者はたんぱく質の構造を明らかにする。株式先物の価格を決めるのに使われているブラック=ショールズ方程式は、熱伝導方程式の親戚のようなものだ。熱を操る者の遺産は尽きることがない。