じじぃの「美女と野球・大金持ちになる方法・死ぬまでに人の心を打つ何かを造りたい!短編小説」

『美女と野球』

リリー・フランキー/著 河出文庫 2005年発行

大金持ちになる方法 より

ボクの親友にローズという男がいる。十年程前に国分寺界隈で、リリー&ローズと言えば、名前を聞いただけで全ての女子がXXXをパブパブとクラクションのように鳴らしながら悶絶し、ひと目顔を拝もうと押し寄せたギャルが青梅街道で渋滞を発生させるぐらいのセクシー・コンビであった。そしてボクらはゲイと噂(うわさ)される程に、毎日2人でギターをつま弾き合うピュアなギター少年でもあった。
ローズはヨハン・セバスチャン・バッハを奏でながらよくこう言った。
「一生貧乏で構わないから、死ぬまでに人の心を打つ何かを造りたい」
それにボクは、こう答えた。
「心を打ちたいのはボクもセイムだけど、一生貧乏はイヤだよ」
十代にありがちな、ちょっと酸っぱい会話ではあるけれど、ローズはその後、ヨーロッパに渡り、その夢をマット―するように、今はクラシックのギター奏者になっている。すごく素敵である。
で、日本に残った世界のセクシー・ガイ、リリー君といえば、ヒトの心はおろか、打つのは麻雀ぐらいで、おまけに意に反して一生貧乏街道暴走中である。なんたることか……。これはイカン。これではヨーロッパにいるローズに会わせる顔がないので、とりあえず大金持ちになることにしたのだ。しかし、どうすれば大金持ちになれるのだろう? 参考のため、本年度の所得番付を新聞で見てみる。
フムフム……。作家は赤川次郎。画家は平山郁夫ね……。んっ!? こ、これは困ったことに気づいたぞ! 日本では才能と収入が反比例するという図式を目の当たりにし、クリエイティブで大金持ちを目指すことは断念した。
では、商売か? いや、そのたぐいは元手がなきゃイカン。手っ取り早いのは、拾う。これが一番楽だがサイフの中の2、3万では話にならん。落ちてるモノでも、資産家の年寄りが道端でうずくまっていて声を掛けたのが縁で莫大な遺産を手にするというのがナイスだ。そう思って神社の境内から路地裏まで丹念にチェックするが、最近の年寄りは皆、ボクより元気がよろしい。ダメだ。まったく使いモンにならん。
こうなりゃ発明だ。昔、鉛筆の先っぽに消しゴム付けた人や、洗濯機に浮かべるチン毛取り風船を考えた人は億万長者になっているらしいじゃないか。
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よし、これならまずないハズだ! ウンコだ!! 陳腐な発想だと思うだろうが、ちょっと違うぞ。まんじゅうにウンコが入ってるぐらいじゃ、このカルトな御時世に誰も驚くまいて! ウンコにまんじゅうを入れるのだ!! どうかね諸君!? しかし、それではただのウンコである……。

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どうでもいい、じじぃの日記。
久しぶりに古本屋に寄った。
『美女と野球』か。
本をパラパラめくったら、「大金持ちになる方法」があった。
「一生貧乏で構わないから、死ぬまでに人の心を打つ何かを造りたい」
そうだな。
「よし、これならまずないハズだ! ウンコだ!!」
何で、大金持ちになる方法がウンコになるんだよ。
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