The Shakespeare Mystery
Mystery files Jack the Ripper
Jack the Ripper
切り裂きジャック 127年目の真実 著者 ラッセル・エドワーズ 訳 深澤 誉子 KADOKAWA
●DNA鑑定で新事実発！ 世界的猟奇事件の謎がついに解き明かされる！
1888年にロンドンを震え上がらせた連続猟奇殺人「切り裂きジャック」事件。5人の売春婦をバラバラにし、犯行予告を新聞社に送りつけながら迷宮入りしていた。最先端の科学技術が歴史を遡り、真犯人に迫る！
https://www.kadokawa.co.jp/product/321410000106/
『ビジュアルストーリー 世界の陰謀論』
マイケル・ロビンソン／著、安納令奈／訳 ナショナル・ジオグラフィック 2019年発行
彼らの正体は？
事実上実在した人物の正体について、定説を疑う陰謀説は星の数ほどある。なかでもその正体をめぐって議論百出の人物、といえば、イギリスの戯曲家で詩人のウィリアム・シェイクスピアだろう。あれほどの作品を、彼のような育ちの者が書けるはずがない、と言われている。この謎は「シェイクスピア別人説」と呼ばれ、真面目な学問の対象となっている。これに劣らず真剣に研究されているのは、おそらく世界で最も悪名高き連続殺人犯、切り裂きジャックの正体だ。1888年のロンドンに実在したこの殺人鬼は、少なくとも5人の女性を殺した。
ウィリアム・シェイクスピア
ウィリアム・シェイクスピア（1564～1616年）は自分で作品を書いたのか、という疑問が最初に出たのは19世紀である。ラルフ・ウォルドー・エマーソン（1803～1882年）をはじめアメリカ人作家が、庶民的な育ちのシェイクスピアがあれほどの作品を書いた、その理由を突き止めようとしたのだ。それまでシェイクスピアは天才で、英語で執筆する作者のなかでもその想像力はずば抜けている、とカリスマ視されていた。シェイクスピアの伝説によると、父親は革をなめし、手袋を作って生計を立てていた。そして、シェイクスピアは高い教育を受けていない。しかも、この質素な社会的地位を考えたら、戯曲によく登場する宮廷生活の知識などあるはずもない。この明らかなギャップ、そして、シェイクスピアの人生についてあまり多くが知られていない事実から、シェイクスピアの戯曲や詩は本当に本人が書いたのか、という疑問を持つ人が続々と現れた。
これまで数多くの著名人が、シェイクスピア作品は別人が書いたのではないか、という疑いを表明した。そのなかには、マーク・トウェイン（1835～1910年）、ヘンリー・ジェイムズ（1843～1913年）、ジグムンド・フロイト（1856～1939年）などもいた。シェイクスピアの”ゴースト”ライターを務めた”本物の”書き手候補は何人もいる。フランシス・ベーコン（1561～1626年）、5代ラトランド伯ロジャー・マナーズ（1576～1612年）、それに、第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアー（1550～1604年）が挙げられる。また、第6代ダービー伯爵ウィリアム・スタンリー（1561～1642年）はシェイクスピアとイニシャルが同じだから明らかに怪しい、という意見もある。
これらの論説から陰謀説が続々現れた。なかでもとりわけ有力視されているのが、シェイクスピア俳優であり、ロンドンのグローブ座の舞台監督である、マーク・ライランス（1960年～）の意見だ。ライランスは、当時の著述業はいまと違い、共同執筆で書かれていた可能性がある、という。
切り裂きジャック
1888年秋、ロンドンのイーストエンドで5人の娼婦が無残にも殺された。事件は10週にわたって発生し、しかもそのうち2件は同じ晩に起きていた。俗に切り裂きジャックと呼ばれたこの犯人は、まんまと捜査の手を逃れる。この事件は近代史初の連続殺人事件として知られ、その不気味でミステリアスな印象はいまだ異彩を放ち、切り裂きジャックの足取りをたどるウォーキング・ツアーは途切れることなく実施され続けている。切り裂きジャックの正体は謎に包まれているため、疑わしい人物や、隠蔽工作について、陰謀の噂は絶えない。なかでも突飛な説に、犯人は、王族一族の一人、ヴィクトリア女王の孫のクラレンス公アルバート・ヴィクター（1864～1892年）である、というのがある。彼の犯行は政府やロンドン警視庁の画策によって、闇に葬られたらしい。この説のほかにも、作家のルイス・キャロル（1832～1898年）やウォルター・シッカート（1860～1942年）が切り裂きジャックだったのではないか、という推理もある。しかしいまでは、いずれも”リッパロジスト（切り裂きジャック研究家）や学者”の分析により、ほとんど反証されている。
