じじぃの「歴史・思想_74_チャイナスタンダード・エチオピアの奇跡」

Chinese-built light rail in Ethiopia changes lives

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=etT5iNmN2Dg

Chinese investors assess new Ethiopia industrial park

Ethiopia rail system reflects growing ties with China

『チャイナスタンダード 世界を席巻する中国式』

朝日新聞国際報道部/編 朝日新聞出版 2019年発行

開発と協力

エチオピアの奇跡 より

2018年6月上旬、アフリカ東部エチオピアは雨期の始まりを告げる大雨が続いていた。首都アディスアベバの中心から車で約49分、ヤギや羊が草をはむ、のどかな風景を抜けると真新しい工場群が見えてきた。
14年に開業した工業団地「ポレレミ1」は、現地政府や世界銀行の融資で建設され、約160ヘクタールの敷地に中国や韓国など11社の縫製工場が入る。出入り口付近には地元の従業員を送迎する大型バスが何十台も停車し、朝夕は通勤ラッシュが起きる。隣では中国の建設会社「中地海外集団」などが約180ヘクタールの「ポレレミ2」の完成に向け、工事を続けていた。
15年に進出した中国の革製品工場では、中国人が監督する中、地元の女性ら約500人が黙々と羊皮の手袋を縫っていた。ミシンや糸など主な機材や原料は中国から持ち込んだものだ。
従業員の平均年齢は22歳。高卒以下の若者も多い。1日3000双を製造し、中国や欧米、日本向けに輸出するという。責任者の李志文は「現地従業員の人件費は月80ドル(約8800円)前後。各国の製造業は人件費の安い中国や東南アジアばどに進出してきた。次はアフリカというのが自然の流れだ」。将来は1日1万双を生産し、さらに雇用を増やす計画だ。

悲願の鉄道 より

アディスアベバ郊外に設けられた駅舎の前で、エチオピアと中国の国旗がはためいていた。ここはインド洋に面した隣国ジプチまでの750キロ超に及ぶ鉄道の発着地点だ。
早朝からトランクや重い荷物を抱えた乗客が次々と駅舎をくぐる。中国製客車の入口には、真っ赤な征服姿のエチオピア人駅員が立ち、切符を確認する。隣には指導役の中国人駅員。運転士も中国人だ。電車はほぼ自国どうりに出発した。
列車の営業が始まったのは18年1月。内陸国エチオピアの輸出入品は約9割がジプチの港を通る。車で3日前後かかるジプチまでの道のりを約10時間に短縮する悲願の事業だった。
約34億ドル(約3740億円)に上った総工費の7割を中国輸出入銀行が融資した。建設は中国中鉄と中国土木工程集団の国有企業2社が担当。最初の6年間は中国人の技術者が運営に関与し、現地の運転士や駅員の育成に携わる。
エチオピア鉄道公社の担当責任者タラフン・サルカは「欧州などと違い、中国は1つの銀行から資金を借りることができ、手続きが便利。施行技術もしっかりしている。中国との関係は良好で、規模も大きくなっている」と話した。
記者もアディスアベバ駅から途中駅まで乗車したが、草原や草木が生い茂る一帯を通過し、乗り心地も日本の電車とさほど変わらない。妻と一緒に乗車していた会計士デリブ・グデタは「首のおかげで車の運転ができなかったが、この電車のおかげで安心して帰れる」と感謝する。ただ、現地の従業員は「家畜が線路を通過するのを待ったりして、電車が遅れることも少なくない」と言う。
15年に開業した首都中心部を走るLRT(次世代型路面電車)も中国輸出入銀行が85パーセントを融資し、中国中鉄が建設した。建設責任者を務めたバハイル・シンタイエフによると、契約書にはこの事業が「中国標準」で実施されると明記された。設計から建設まで「高水準」を求められ、多くの機材は中国から運ばれ、中国人作業員らが工事を担った。
「我々が技術を身に付けるためには中国人技術者が必要だった。管理者クラスでは中国人とエチオピア人の割合が1対5だったが、現地の雇用増加にも努めた」と語る。