じじぃの「科学・芸術_929_遺伝子DNAのすべて・老化とがん」

Naked Mole Rats | World's Weirdest

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=A5DcOEzW1wA

Why these two animals can resist cancer

Why these two animals can resist cancer

October 14, 2015  Quartz
●Elephants don’t go through menopause
By that logic, however, elephants-which have perhaps 100 times as many cells as humans-should have gone extinct from the sheer number of cancer types they face. But only 5% of elephants die of cancer in comparison to more than 20% humans. So why the discrepancy?
https://qz.com/523764/these-two-cancer-resisting-animals-offer-hope-for-a-human-cure/

がん ウイルス療法の臨床研究

東京大学医科学研究所附属病院
ウイルス療法は、増殖するウイルスを使ってがんを治す画期的な治療法です。
本臨床研究で用いるG47Δウイルスは、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないように工夫されています。つまり、ウイルス遺伝子を組み換えることによってウイルスの作用をコントロールし、がん細胞内だけでよく増えるようにすることで直接的にがん細胞を破壊します。加えて、G47Δウイルスが感染したがん細胞は免疫を担う細胞(リンパ球)に発見されやすくもなっており、より強力な抗腫瘍免疫効果(がんワクチン効果)が期待できます。
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/glioma/research/virus.html

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

物事が悪い方向へ進んだら

人の体を含め、永遠に続くものは何もない。遺伝子は、老化するにつれてかかりやすくなる病気にも重要な役割を果たしている。

がんに関わる遺伝子には2つのおもなグループがある。1つめは1970年代、細胞をがん化させるウイルスの研究が行われていたときに発見された。科学者たちは、細胞を成長させるウイルスの遺伝子が、じつは細胞分裂に関わる正常な遺伝子の複製であることに気づいた。進化の過程のどこかで、ウイルスはそれらの遺伝子を捕らえ、感染すると細胞に制御不能な増殖を起こさせるようになった。のちに科学者たちが発見したのは、ヒトのがんの多くが、増殖にはずみをつけるのにウイルスを必要とはせず、それ自体の細胞分裂に必要な遺伝子の正常アレルに、異常である発がん遺伝子(オンコジーン)があることだった。当時は、ウイルスがすべてのがんを引き起こすと考えられていたが、この新たな発見によって、がんは自らの細胞内にできた遺伝子の異常で始まる可能性が示された。発がん遺伝子を活性化させる病因的変異は、適切でないときに細胞増殖させて、がんの推進力となるおもな要因と見なされている。
多くの発がん遺伝子がコードするタンパク質は、細胞に入り込んで分裂を指示するシグナルを送受信する。通常これらのシグナルは、新たな細胞が必要なときだけ送られる。たとえば、死んだか損傷した細胞を交換するためや、生物が成長するときだ。発がん遺伝子のある種の変異は、つくっているシグナルがないときでさえ細胞分裂を持続的に命じるよいになる。これは車のアクセルを踏み込んで、どんどん加速していく様子にも似ている。
2つめの重要な遺伝子群は、がん抑制遺伝子と呼ばれ、細胞のブレーキとして働く。細胞増殖を引き起こす発がん遺伝子と違って、がん抑制遺伝子は人体をがんから守る。DNA修復や細胞死などの過程に関わるタンパク質をつくり、損傷した細胞ががん化する前に修復や破壊を行う役割を担っている。がん抑制遺伝子を不活性化する異常があると、細胞が適切に修復されなくなるか、あるいは、必要なときに死滅しなくなる。細胞の抑制が外れ、増殖が始まってがん化するのは、アクセルの操作不能(発がん遺伝子の過剰活性化)とブレーキの欠陥(がん抑制遺伝子の不活性化)が原因だ。
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長く生きるうえで心配しなければならない病気は、がんだけではない。認知症のリスクは高齢になるほど上がり、65歳から90歳で5年ごとに約2倍になる。認知症には多くの型があるが、すべて記憶と脳機能の進行性障害を特徴とし、行動と人格の変化を伴う。最も一般的な型はアルツハイマー病だ。1906年に初めてこの病気を記述したドイツの精神科医、アロイス・アルツハイマーにちなんで名づけられた。
現在では、アルツハイマー病が脳に劇的な変化をもたらすことが知られている。明らかな所見の1つは、アミロイドとタウと呼ばれる有害な2種類のタンパク質の形状があり、それが蓄積することだ。病気になると、この2つが脳のなかで増えて、有害なかたまり状のアミロイドプラークとタウの長いもつれ(タングル)がつくられる。今のところ、アミロイドとタウのどちらがアルツハイマー病を促進する主な原因なのか、それとも別の潜在的な過程が作用しているのかは明らかになっていない。

なぜゾウはがんにならないのか? より

1970年代、イギリス人の生物学者リチャード・ピートー教授は、奇妙な矛盾に気づいた。もし体内の1個の細胞ががん化する確率がすべての動物で同じだとすれば、たとえばゾウのように大きく長生きする種は体にずっと多くの細胞を持つので、人間よりずっと多くのがんを発症しているはずだ。
しかし、ゾウはめったにがんにならない。2015年、ユタ大学のジョシュア・シフマン博士が率いるチームは、その理由を発見した。ユタ州のホーグル動物園のゾウから採取したDNAサンプルを調べたところ、ゾウはゲノムのなかに”P53”の守護遺伝子を特に多く持つことがわかった。P53が多くあるおかげで、がんからさらにしっかり保護され、細胞が損傷を受けると、増殖し続けて腫瘍を形づくる代わりに、確実に死滅するようになっている。
がんに対して並外れた抵抗性を持つ別の動物に、ハダカデバネズミがいる。変わった容貌をした、無毛のげっ歯類の動物種で、アフリカの砂漠の地中に暮らしている。この生き物は、がんから身を守るのに役立つ特別な腫瘍抑制遺伝子をもっている。さらに、”ヒアルロン酸生成酵素2”という遺伝子のまれなアレルを持っている。この遺伝子でつくられる酵素はとても大きく粘度の高い分子で、一種の細胞接着剤のように働き、どんながん細胞もネズミの体内で拡がるのを阻止している。