Climate Change Animation Shows Devastating Effects
シベリアの永久凍土が熱波で融けはじめている
シベリア永久凍土の融解で危険な病原体が放出される可能性
2018年03月13日 Sputnik 日本
北極圏とシベリアの永久凍土が溶け、炭疽菌に感染した家畜が露出する可能性は非常に高いと、世界自然保護基金(WWF)ロシア支部寄稿プログラムのアレクセイ・コロリン部長がスプートニクに伝えた。
https://jp.sputniknews.com/science/201803134661093/
『とてつもない失敗の世界史』
トム・フィリップス/著、禰冝田亜希/訳 河出書房新社 2019年発行
人類が失敗を予測できなかった歴史 より
2016年8月に12歳の男の子が死に、この子のほかに少なくともトナカイを放牧している遊牧民20人が病院で手当てを受けた。シベリアのヤマル半島で炭疽菌が発生したのだ。炭疽菌がこの地で見られたのは75年ぶりだった。発生は夏の熱波の時期に起こった。普通より25度高い気温だった。シベリアをおおう分厚い永久凍土が熱波で融け、何十年も前に形成された氷の層をむき出しにした。そこには1941年に発生した炭疽菌で死んだトナカイの凍った死体があった。
氷は病原体をそのままの状態で保つことができる。何十年も何百年も、もしかしたらもっと長く、生きているが活動していない状態で保つのだ。ロシアの冬がヒトラーの軍隊を敗ったころから病気はずっと零度以下の気温で休眠状態にあり、氷の檻(おり)が融けるときをひたすら待っていた。2016年についにその時が来て(それは記録をし始めて以来の、地球上で最も暑い年だった)、温暖化の世界がバクテリアをもう一度、解き放った。まずは2000頭のトナカイが感染し、それが人間にも押し寄せた。
災難がそんなに複雑怪奇だと予想できた者は誰もいなかったと言いたくもなる。だが、実際はこれより5年先立って、2人の科学者はまさにこのことが起こると予測していた。つまり、気候変動がさらに悪化したときに永久凍土が次第に後退すれば、長いこと存在しなかった歴史上の病気が将来的に世界に戻ってくると。
これは気温が上昇した場合に限って、歴史を後戻りさせるという興味深い結果をともなって起こり続ける。実験室で仕事に精を出したトマス・ミジリーに戻り、公園で鳥かごを開けるユージーン・シーフェリンに戻り、帝国を夢見るウィリアム・パターソンに戻り、産業革命の結果としての気候の変化が私たちを過去に後戻りさせるのだ。今世紀の間に、どれだけ多くの人が気候変動のせいで殺されるのかわからないし、それがどんなふうに社会を変えるのかもわからない。