じじぃの「科学・芸術_913_遺伝子DNAのすべて・はじめに」

Fertilization

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

はじめに

たった1つの受精卵から複雑な人間へ、DNAからの暗号(コード)が遺伝情報を発し、生命のさまざまな過程を導いていく。

血縁関係が近い人同士がよく似ていることは、どの家族を見ても明らかだ。とはいえ、母親か父親と完全にそっくりな人はいないし、一卵性の双子にも違いはある。科学者たちは、なぜ形質や特徴が両親から受け継がれるのだろうと何千年ものあいだ頭を悩ませ、ありとあらゆる説明を考え出した。その情報がどうやって、DNAに書き込まれた遺伝子という形で子孫に伝わっていくのかが解明されたのは、20世紀に入ってからだ。さらに、遺伝子から人間がつくられるまで、つまり遺伝子型(ある特徴をつくり出す遺伝子)から表現型(受け継がれた形質の身体的発現)までの道すじは、単純ではないことも明らかになった。
もっと詳しく言えば、成人の体には数えきれないほどの小さな細胞があり(40兆個くらいとの見積もりもある)。別個の特徴とし形と機能を持つ器官や組織をつくっている。肺や肝臓、リンパ節から、腸、膀胱、脳まで、何百種類もの細胞がある。けれども、すべては受精のときにつくられた、わずか1この細胞から生まれる。この細胞は分裂して、2個の細胞になる。それが成長してまた分裂し、4つの細胞になって、さらにまた次々に分裂していく。やがて、成長する胚の別々な部分にある細胞が分化して、ついには赤ちゃんをつくるのに必要なあらゆるタイプの細胞ができる。しかし、この過程は、そこでは終わらない。人間の体がさらに発達するあいだ、細胞は休みなく分裂を続け、傷ついたりくたびれたりした細胞を交換し、傷を修復している。
今では、遺伝子がこのような過程のすべてをコントロールしながら、まわりの環境にも反応していることがわかっている。つまり、生まれと育ちはどちらも、きわめて重要だ。科学者たちは、次のようなとびきり重大な疑問に対する答えを、ようやく見つけようとしている。
・受精卵は、どのように分裂・分化して全身の組織をつくっているのか?
・どうして幹細胞は肝臓に、脳細胞は脳にとどまっているのか?
・あなたの遺伝子は、あなたという人間をどうやってつくっているのか?
・物質や特徴、病気はどのように遺伝するのか?