じじぃの「科学・芸術_902_チリ・日本との関係史」

日本とチリが合同で津波防災訓練

「防災」で繋がる日本とチリ ~タルカワノ市の取組みから~

2016年3月15日 JICA
時差12時間、地球のちょうど正反対に位置する日本とチリ。2つの国は「地震津波多発国」という共通点を持ち、最近では2010年チリで、2011年には日本で、大規模な地震津波が発生しました。災害に強い地域づくりを目指す二つの国の取組みをご紹介します。
https://www.jica.go.jp/kansai/topics/2015/160315.html

『チリを知るための60章』

細野昭雄、工藤章、桑山幹夫/編著 赤石書店 2019年発行

日本・チリ関係の展望 修好120周年を経て新たな時代へ より

後に述べる、サンティアゴ大学国際関係論専攻のセサル・ロス教授も、日本とチリの関係の特徴として、「長期的関係の重視」「困難や危機を乗り越えていく強さ」「相互の不快理解」をまず挙げた。そして、教授は次のような重要な認識を示した。長期的関係の重視については、チリ側は、当初十分理解していなかったが、長期にわたる関係の発展を通じてその重要性を理解していった。相互理解は相互の努力に基づくもので、それによって両者が達成したいことの実現に向けて合意する意志を可能にするものだという。さらに教授は、世界で第3の経済大国日本と、ラテンアメリカの中でも中堅国家にとどまるチリという、経済規模からみれば、大きく異なる両国が、今日このような関係を構築するに至ったことは、非常に意義深いことを強調している。
上記のような特徴を持つ関係が築かれていることは、両国にとってかけがえのない資産であり、それを活かし、一層充実させていくことがこれからの両国の関係の発展を実現するためのカギとなるであろう。相互の理解やそのための文化学術交流については、修好100周年後のここ20年間で、一層進んでいる。チリ側からは、いくつかの両国関係に関する研究が行われ、刊行された。まず、1997年『日智友好の1世紀』(スペイン語)が出版された。オスカル・ピノチェツト・デラ・バラ氏の編集の下、複数の執筆者が、前半で日本とチリ両国のそれぞれ歴史や外交などを俯瞰し、後半でチリと日本の関係史、両国の経済関係の特徴などを論じている。また、同年、駐日チリ大使のハイメ・ラゴス氏が『チリと日本――100年史』(日本語)を刊行した。両国の100年間の関係史と、経済関係、文化・学術関係を論じている。
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以上に述べたような、相互の理解、長期的な関係で表現した多くの成果、制度の充実などを活かして、今後の両国にはどのような展望が可能であろうか。日本とチリは、ともにAPECのメンバーであり、OECDの加盟国であり、TPPの推進国である。これらの組織が依拠している多くの普遍的価値を両国は共有している。これまでの経済関係をさらに発展する形で、両国は、これら組織の中で連携し、いくつかの分野で主動的役割を果たすことが可能であろう。その1つとして、両国がアジアとラテンアメリカの関係緊密化に様々な形で貢献することも可能であろう。チリは、太平洋岸にあって、メルコスール諸国とアジア諸国を結ぶゲートウェーの1つとしての役割を果たすことが可能である。
チリはラテンアメリカの中でもビジネス環境の最も整備された国の1つであり、かつ、早くから、チリの航空・海運業は、強い競争力を有し、南米南部の輸送・ロジスティクスの有力なハブとしての機能を果たしており、ゲートウェーとなる条件を十分備えている。さらに、アンデス横断のトンネルのような、そのための、インフラ建設などに日本とチリが協力して取り込むことも可能であろう。
チリの産業の多角化へも日智関係は、両国の協力と連携の強化を通じて寄与することができよう。セサル・ロス教授は、日本とチリは、銅産業や、水産業などで緊密な協力を行ってきたが、これらに次ぐ新たな産業として、電気自動車には欠かせない電池のためのリチウムとその関連産業において両国が協力しうることを強調した。チリはリチウムの世界2位の生産国であり、日本は世界の自動車産業で重要な位置を占める。この両国が協力することは、チリと日本のそれぞれの分野での国際競争力の拡大につながる可能性もある。同様な視点は、サービス産業、エネルギー産業などのチリの今後の産業の多角化を担う産業にも当てはまると言えよう。
日本とチリの両国が、その関係の将来について、様々な機会に、様々な分野で対話と交流を行い、ビジョンを共有することは、中長期的に、戦略的で、効果的な協力を進めさらに緊密な関係を構築していくために肝要であろう。