じじぃの「科学・芸術_880_クロード・シャノン・京都賞」

The Shannon Limit - Bell Labs - Future Impossible

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HSoog0OqgV0

Claude Shannon:Serious Scientist Accomplished Juggler

クロード・エルウッド・シャノン

第1回(1985年)受賞者 京都賞
アメリカ / 1916年-2001年
情報科学
マサチューセッツ工科大学 教授
情報技術の数学的基礎となる情報理論の創成
情報理論創始者。1940年後半に、情報の量、信頼度、情報の交換や同値性などに関する諸問題を数学的に解析する理論を確立し、今日の通信技術の著しい発展の基礎を築いた。
https://www.kyotoprize.org/laureates/claude_elwood_shannon/

クロード・シャノン 情報時代を発明した男』

ジミー ソニ、ロブ グッドマン/著、小坂恵理/訳 筑摩書房 2019年発行

京都 より

授賞式への出席が増え始めた頃には、シャノン夫妻は3人の子どもに恵まれていた。そのため授賞式は家族にとって、世界のあちこちを見て回るチャンスになった。娘のペギーはつぎのように回想している。「父がイスラエルから賞をいただいたときは、学校が休みではなかったのに、6~7週間の家族旅行に出かけました。イスラエルのあとは、エジプト、トルコ、イギリスを訪問しました……そのために学校を6週間ぐらい休んだんですよ」。
こうした旅行について、シャノンの気持ちは複雑だった。彼は家にいるのが好きで、内向的で、おまけに食べ歩きに積極的ではなかった。肉やポテトを使った家庭料理が好みで、海外で似たような味の料理を見つけられるか深刻に悩むタイプだった。ペギーの回想によれば、シャノン一家は普段マサチューセッツにいるときでさえめったに外食しなかった。したがって、イスラエルでクスクスを、日本で生魚を食べるだけで、父親は不安を募らせたという。
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当然ながら、ノーベル賞の話題はキャリアの大部分でシャノンに付きまとった。1959年には、ノーバート・ウィーナーと共にノーベル物理学賞の候補になったが、結局受賞したのはエミリオ・ジノ・セグレとオーウェンチェンバレンで、ふたりは反陽子を発見した功績を認められた。シャノンとウィーナーは候補者として勝ち目がなかったが、候補になったという事実だけでも、同時代人のシャノンへの評価の高さがうかがわれる。シャノンがノーベル賞を受賞するためには、構造的な問題が立ちはだかっていた。「ノーベル数学賞という分野はないが、創設するべきだ」と、シャノンも語っている。ジョン・ナッシュやマックス・ボルンなど、ノーベル賞を受賞した数学者は、経済学や物理学の分野で受賞しているし、バートランド・ラッセル文学賞だ。シャノンの研究は複数の学問分野にまたがっているが、ノーベル賞のひとつの分野に押し込めるのは難しい。結局、この賞には縁がなかった。

ただし1985年、シャノン一家はストックホルムではなく、京都から連絡を受けた。京都賞基礎科学部門の第1回の受賞者に、クロードが選ばれたのだ。

この賞は、富豪の稲盛和夫によつて創設された。稲盛は日本の応用化学者で、多国籍企業の京セラの創業者でもあり、後には日本航空の再生に尽力した人物である。エンジニアとしての訓練を積み、自らの意思で仏門に入り、事業再生の手腕を評価されている。経営哲学を学ぶと同時に仏教徒であるため、以下に紹介する京都賞の創設理念からは、スピリチュアルなテキストと株主最新情報が入り混じった独特の印象を受ける。
  創立25周年、4分の1世紀を経過した今日、我々は今までの昼夜を分かたぬ、誰にも負けない努力の成果と、同時に神の導きがあって、年間売上額2300億円、税引前利益530億円という企業にまで発展をして来ました……この時にあたり……人類の進歩、発展にいささかでも貢献したいと思い、ここに京都賞の創設をいたしました。
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やがて京都賞は、独自のスタイルのせいもあって、ノーベル賞のライバルとして高く評価されるようになった。受賞者を発表するプレスリリースは、つぎのような書き出しになっている。「文化や科学の分野で傑出した人物が生涯をかけて達成した功績を認める点において、ノーベル賞と並んで世界最高峰である京都賞の今年の受賞者は、以下の方々に決定しました……」。しかも京都賞の受賞者はノーベル賞を受賞するケースが多く、何年も後にノーベル賞受賞者になると、ストックホルムでの記念講演で同じ内容をくり返さないよう苦労した。
京都賞の受賞者はノーベル賞のように華やかで洗練されており、日本の皇族も参列する。そしておそらく、まだ眠っているビジネスチャンスに対する創設者の強い関心の表れとして、京都賞のカテゴリーは幅広く、数学や工学など、ノーベル賞では対象外の分野も含まれている。ノーベル賞のほうが84年早く始まったが、京都賞は賞金の面で引けを取らない。
京都賞はシャノンにとって大変な名誉で、多くの点でキャリア最高の評価となった。