じじぃの「科学・芸術_872_数学的な宇宙・多宇宙」

Evidence for Parallel Universes - Max Tegmark / Serious Science

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bJpIclDmi2M

Parallel Universes by Max Tegmark

マックス・テグマーク

ウィキペディアWikipedia) より
マックス・エリック・テグマーク(Max Erik Tegmark、1967年5月5日 - )は、スウェーデン出身で、現在アメリカ合衆国において研究活動を行っている物理学者、理論物理学者である。専門は宇宙論、万物の理論に関する研究。2011年12月現在、マサチューセッツ工科大学教授。
意識についての説明に量子効果を利用する理論(量子脳理論)を唱えている人々、たとえばロジャー・ペンローズやステュワート・ハメロフなどに対する強い批判を行っている。
テグマークは数学的宇宙仮説の提唱者としても知られている。数学的宇宙仮説とは「数学的に存在できるものは、物理的に実在する」という単純な主張である。これはある種の形而上学であるが、一切の自由なパラメータなしですべての可能な数学的構造が、物理的に実在することを主張する(自由なパラメータが無いのは、自由度と呼べるようなものが仮にあるなら、そのすべての場合に渡る物理的宇宙が実現されていると考えるためである)。つまりこれはある種の多元宇宙論である。そうした多数の宇宙の中で、自己意識を持ちうるだけの部分構造(self-aware substructures: SASs)を持つことができるほどに複雑な宇宙においては、それら自己意識を持つ部分構造たちが、自分たちが物理的な「実在の(real)」世界に居ることを見出すことになるだろう、とテグマークは示唆する。これが数学的宇宙仮説(Mathematical universe hypothesis)である。論文 "The mathematical universe(数学的宇宙)"と、そのショートバージョンである"Shut up and calculate(黙って計算しろ)"の中で内容が述べられている。

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『数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて』

マックス・テグマーク/著、谷本真幸/訳 講談社 2016年発行

生命、宇宙、すべて より

これまで本書では、私たちの究極の物理的実在について、私が考えているとおりに描いてきた。私はその姿を、息をのむほど美しく、刺激的なほどに壮大だと思っている。しかし、それは本当なのだろうか? それとも、その壮大な姿のほとんどは、人を誤らせるだけの単なる幻だろうか? 私たちは本当に多宇宙に住んでいるのだろうか? それとも、ここで考えてきた疑問はすべて、科学の境界の外にある、考えても意味の内馬鹿げたものなのだろうか? 私の見解を述べておこう。
多宇宙のアイデアは従来、科学界から冷遇されてきた。前に指摘したように、無限に広がった空間という多宇宙像を唱えたジョルダーノ・ブルーノは、1600年に火刑に処された。量子的な多宇宙の存在を唱えたヒュー・エヴェレットは、1957年に論文を発表した後、物理の職を得ることができず、物理学界を去らねばならなかった。前に述べたように、私自身も冷たい空気を感じることがあった。多宇宙について論文を書いたとき、こんな馬鹿げた研究をしていると研究者としての将来を台無しにするぞ、と教授から忠告されたことなどだ。しかし近年、空気はがらっと変わった。今や並行宇宙は大はやりで、本や映画にもしょっちゅう登場し、ジョークにさえ使われるほどだ。
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私なりにジョークの見解をまとめると、次のようになる。
1.インフレーション理論は間違いかもしれない(あるいは、永久ではないかもしれない)。
2.量子力学は間違っているかもしれない(あるいはユニタリーでないこもしれない)。
3.弦理論は間違っているかもしれない(あるいは、複数の解がないかもしれない)。
4.多宇宙は反証不能かもしれない。
5.多宇宙の証拠とされる事実の一部は疑わしい。
6.微調整に関する議論は多くのことを仮定しすぎている可能性がある。
7.さらに大きな多宇宙へ滑り落ちてしまう危険性がある。
(実際には、ジョージは記事で項目2についてはふれていない。しかし、編集者が6ページより多くのスペースを彼に与えていたなら、きっと加えていただろうと思うので、ここに加えることにした)
これらの批判に対して私がどう思っているかというと、これら7項目すべてについて、実はまったくその通りと思っているのだ。そしてそれでもなお、こうも思っている。もし賭けをするなら、多宇宙が存在する方に私の老後の蓄えを喜んで賭けると。
最初の4項目から始めよう。第6章で見たように、インフレーション理論は極めて自然にレベルⅠ多宇宙を作り出す。これにさらに、弦理論とその「ランドスケープ」(考えられるすべての解)も加えると、レベルⅡ多宇宙が得られる。また第8章で見たように、波動関数に収縮がない(すなわち「ユニタリー」な)、数学的に最も単純な量子力学を考えると、レベルⅢ多宇宙が得られる。したがってこれらの理論が否定されれば、これらの多宇宙の主要な証拠も崩れ去ることになる。思い出してほしいのだが、並行宇宙は理論ではなく、理論から導かれる予測なのだ。
私にとって重要なポイントは、考えている理論が科学的であるなら、その理論から導き出せるすべての結果を導き出し、検討することも、たとえそこに観測できないような対象が含まれていたとしても、正当な科学なのである。