粒子と波: 量子力学の謎 - チャド・オーゼル
カエルの視点(錯覚の例)
『別冊日経サイエンス実在とは何か』
2012-11-03 logical cypher scape2
主に、相対論、量子論、その2つを統合する万物理論あたりの宇宙論、宇宙物理学について。冒頭は、マルチバース関連の記事が続く。
●並行宇宙は実在する M. テグマーク(03年8月号)
並行宇宙を4つに分類して紹介する。
レベル3:量子論の多世界
と、上のような感想を書いたけれど、ちゃんと量子論の多世界解釈の話も出てくる。
鳥の視点(外部からの眺め)と蛙の視点(内部からの眺め)を区別する。鳥の視点から見れば、1つの波動関数があるだけである。一方、蛙の視点から見ると、自分のいるレベル1宇宙が見えるだけ。
https://sakstyle.hatenadiary.jp/entry/20121103/p1
エヴェレットの多世界解釈
ウィキペディア(Wikipedia) より
エヴェレットの多世界解釈(英: many-worlds interpretation; MWI)とは、量子力学の観測問題における解釈の一つである。 プリンストン大学の大学院生であったヒュー・エヴェレット3世が1957年に提唱した定式を元に、ブライス・デウィット(英語版)によって提唱された。
ヒュー・エヴェレットは、量子もつれと一貫した歴史を前提とした、射影仮説のない量子論の新しい定式化を試みた。 エヴェレット自身はその論文中でエヴェレットが提唱した理論は決定論的であると述べている。 論文によれば、量子もつれにより相関した多数の分枝を相対状態として波動関数に記述しており、それらの分枝同士はお互いに干渉できないまま常に並存している。 観測者のうちのひとつの分枝の主観では、それと相関した分枝のみが観測可能な世界であって、相関していない他の分枝は観測できない。
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『数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて』
マックス・テグマーク/著、谷本真幸/訳 講談社 2016年発行
内的実在、外的実在、合理的実在 より
合理的実在
これまで本書の第Ⅰ部とⅡ部では、私たちの物理的世界が数式によってすこぶるうまく記述できることを見てきた。このぶんだといつか、マクロからミクロまで、すべてのスケールにわたって外的実在(数学的記述)を完全に記述する方程式――「万物の理論」の方程式――が見つかるのではないか、そう思えてきたかもしれない。そんな方程式が本当に見つかった場合、物理学の究極の勝利は次のようになるだろう。まずこの方程式(Tシャツに書けるくらい単純な式であることが理想)を数学者が「鳥の視点」から研究し、外的実在を明らかにする。そして、そこから内的実在(主観的認識)――外的実在の一部たる観測者が持つ「カエルの視点」から主観的に外的実在を認識する仕方――を明らかにするのだ。これを成し遂げるためには明らかに、錯覚、脱落、幻覚などを含め、意識の仕組みを詳細に理解する必要があるだろう。
しかし外的実在と内的実在の間には、第3の実在として、「合理的実在(古典物理による記述)」が存在する。
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「実在」用語集
外的実在・・・・物理的世界。人間が存在しなくても存在する
合理的実在・・・物理的世界に関する記述・説明のうち、意識を持つ観測者が合意し共有するもの
内的実在・・・・外的実在の主観的な認識
実在モデル・・・脳によって作られる外的実在のモデル。これを内的実在として認識する
鳥の視点・・・・外的実在を記述する抽象的な方程式を通して外的実在を見るときの視点
カエルの視点・・物理的世界を主観的に見るときの視点(内在実在)
外的実在と合理的実在を結びつける物理学
このように、合理的実在(古典物理学による記述)と内的実在(主観的認識)はかなり異なっていて、両者を結びつけることは意識の理解と同じくらい難しいといえる。
同時に、合理的実在と外的実在(数学的記述)もかなり異なっていて、両者を混同しないことは決定的に重要といえる。実際、私の意見では、現代物理学の最も偉大な画期的発見のいくつかは、その数字に関する部分ではなく、これら2つの実在の関係を理解する部分が最も難しかったのである。
たとえば、アインシュタインが特殊相対性理論を1905年に発見したとき、鍵となる重要な方程式の多くはすでにヘンドリック・ローレンツらによって発見されていた。アインシュタインが天才だったのは、数学と観測事実の関係を明らかにしたことなのである。外的実在を数学的に記述するときに現れる距離と時間は、合理的実在として認識される距離と時間は異なっており、両者の差は運動速度に依存する――ということをアインシュタインは明らかにしたのだ。たとえば、飛行機が群衆の上を飛ぶ場合、その群衆の合理的実在としては、飛行機の長さは離陸前より短く、機内の時計の進みは自分たちのより遅くなる。
アインシュタインが10年後に一般相対性理論を発見したときもやはり、数学的定式化の重要な部分はすでにベルンハルト・リーマンによって用意されていた。しかし、この理論の1番重要な部分――外的実在の数学的記述に現れる「曲がった空間」が、合理的実在としては「重力」として認識されること――は、アインシュタインの天才的な洞察をもってして初めて明らかにされたものだった。これがどれだけ難しいことかを理解するため、こんな想像をしてみよう。死の前夜、アイザック・ニュートンの枕元に精霊が現れて、最後に願いを1つだけ叶えてあげようと言った。しばらく考えた後、ニュートンは願いを決めた。
「300年後、最新の重力方程式がどうなっているか教えてほしい」
精霊は一般相対性理論の完全な方程式を紙に書き、親切にも、それが当時の古い記法でどう表されるかについても襲えた。さてこの場合、それらの式がニュートン理論の一般化になっていることを、ニュートンは理解できただろうか?
外的実在と合理的実在を結びつけることの難しさは、量子力学の発見により史上最高を記録した。このことは発見からおよそ1世紀たった今もなお、その解釈について論争が続いていることからも明らかだろう。第8章で見たように、外的実在は「ヒルベルト空間」とその中を決定的に時間発展する「波動関数」によって記述されるが、合理的実在としては、「物事は見かけ上ランダムに起こり、その確率分布は波動関数から高精度に計算できる」と認識される。ヒュー・エヴェレットによってこの2つの実在がどのように関係しているのかが示されるまでには、量子力学の誕生から30年以上を要した。それからデコヒ―レンスが発見されるまでには、さらに10年を要した。外的実在としては「巨視的物体の重ね合わせ」があるのに、それが合理的実在としては認識されない、という見かけの矛盾を解決するために、デコヒ―レンスは決定的に重要な役割を果たした。