じじぃの「歴史・思想_29_合衆国史・先住民の奴隷狩り」

Slavery - Crash Course US History #13

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Ajn9g5Gsv98

Native American enslavement of Africans

今なお続く悲劇と惨劇――〈アメリカ先住民政策〉の歴史

wondertrip
1492年、コロンブスによるアメリカ大陸発見。ヨーロッパ人にとっては「発見」でしたが、そこに代々住み生活していた人びとにとっては「侵略」のはじまりでした。
〈インディアン〉(この記事では北米ネイティヴ・アメリカンを示すために〈インディアン〉の呼称を用います)たちは白人たちによる虐殺と疫病、戦争や強制移住におびやかされ、その余韻は今なお残っています。この大地のもとの主であるアメリカ先住民たちに、白人は一体どのような政策でもって臨んできたのでしょうか?今回は〈アメリカ先住民の歴史〉をあつかいます。
https://wondertrip.jp/101080/

『植民地から建国へ 19世紀初頭まで シリーズアメリカ合衆国史①』

和田光弘/著 岩波新書 2019年発行

3人種の遭遇 より

こうして(バージニア植民地で初めて黒人奴隷の法案による)イギリス第1帝国の内外から白人と黒人の労働力が移植される一方で、先住民の排除(「清掃(クリアランス)」)が進行した。先住民は黒人と同様、帝国の外部に位置づけられ、その人的損失は帝国とにとって負担とは見なされなかったのである。
伝染病とならぶ先住民「清掃」の手段として、第1章でも述べた戦争を挙げることができる。新世界の征服が生みだした野蛮によって、この地ではいわば暴力が合法的に抑制を解かれて、ヨーロッパ内の戦争とはまったく性格を異にする戦い、すなわちジェノサイドがもたらされた。
とりわけ火器の導入によって破壊力が増し、直接、白人が先住民と戦火を交える場合だけでなく、先住民の部族対立を助長することによって、先住民による先住民の「清掃」政策が遂行された。この火器は、同様にヨーロッパから持ち込まれた酒類――アルコール度数の高い蒸留酒など――とともに先住民に非常に好まれたことから、これらと交換するために先住民どうしで先住民の奴隷狩りがおこなわれたり、また、ヨーロッパで需要が大きかったビーバーなどの毛皮の乱獲が生じた。そのため生態系のバランスが崩され、飲酒による生活様式の激変もあった、相対的な先住民文化の破壊へと帰結したのである。
一方、白人の入植者には、「自由」かつ「ただの(無料の)」広大な土地が解放された。彼らは「発見」された土地はすべて国王のものであり、占有・定住によって所有権が発生するとしてその収奪を正当化したが、これは先住民の土地に対する観念――排他的な所有ではなく、必要な範囲を利用する――とは全く相容れない論理であった。
かくして北米大陸において、3人種は不幸なかたちで遭遇した。先住民を「清掃」した「フリーランド(自由な土地・ただの土地)」に、本国(そして他のヨーロッパ諸国)の余剰人口が植え付けられ、不足する労働力を補うために黒人がアフリカから収奪され、強制的に植民される。この人的システムによって、中核の諸問題は帝国の周辺部、さらに外部へと転嫁され、先住民と黒人は莫大な血のコストの負担を余儀なくされたのである。

近世大西洋世界を駆動させたこの忌わしいメカニズム――黒人奴隷制と先住民の抑圧――は、罪深きカインの刻印となった。

先住民や黒人が、混血(カスタ)の人々とともにともかくも社会のなかに位置づけられたラテンアメリカとは異なり、イギリス人が北米に築き上げた社会は、彼らを排除したうえで、白人の共和主義・民主主義を追求してゆくことになる。