じじぃの「科学・芸術_849_米国の企業・クアルコム(米大手半導体)」

『世界の覇権企業 最新地図』

現代ビジネス研究班/編 KAWADE夢文庫 2019年発行

クアルコムQualcomm) 「5G」時代の技術競争で進撃中の中国に対抗できるアメリカの雄 より

「5G」時代に向けて、ファーウェイ・ハイシリコン連合に対抗するのは、アメリカの半導体メーカー・クアルコムだ。カリフォルニア州サンディエゴに本拠を置くクアルコムは、移動体通信技術の大手企業であり、半導体ユニットの販売と特許ライセンスをふたつの柱としている。
2018年初頭の時点で、5Gスマートフォンのモデムチップは、クアルコム製品かハイシリコン製品かのどちらかだ。すでに述べたように、ハイシリコンは親会社のファーウェイにしか自社製品は売らない。となると、ファーウェイ以外の企業は、5Gスマートフォンクアルコムのモデムチップを組み込むしかない。クアルコムは、5G時代に向けて着々と市場を獲得しているわけで、このあとはファーウェイのスマートフォンとの性能対決となるだろう。
そのハイシリコンとクアルコムには、古き縁があるという。じつは、中国の半導体開発を育てるのに、クアルコムが一役買ってきているのだ。クアルコムは1980年代から中国に進出、北京郵電大学に接近、1998年には同大学に共同研究所を設立している。クアルコムは北京郵電大学へ援助を惜しまず、ときには1億ドル(約110億円)もの援助をおこなっている。
じつのところ、ハイシリコンの総裁である何庭波は、北京郵電大学の卒業生である。共同研究所設立前の卒業とはいえ、すでにクアルコムは同大学への援助をはじめていたから、彼女もまたクアルコムの恩恵を受けてきたひとりと考えても不思議ではない。クアルコムは、自ら育てた開発者と次の時代の覇権をかけて技術競争をおこなっているのだ。
クアルコムが早くから中国に目をつけ、投資していたのは、ひとつには中国の有望性を理解していたからだろう。
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クアルコムの思惑は外れたが、世界レベルでみるなら、クアルコムは技術の進化に貢献したといえる。
2019年まで、クアルコムと対立していた企業は、アップルだ。過去、アップルはクアルコムのモデムチップを使い、両者は蜜月にもあったが、アップルが「不当なライセンス料の請求をされている」とクアルコムを訴えた。以後、両者は訴訟合戦を繰り返してきた。
訴訟合戦のため、アップルは5G対応のiPHoneを開発したくても、クアルコムクアルコムのモデムチップを使えない。アップルはインテルの5Gモデムチップを当てにしていたのだが、インテルの開発は遅れるいっぽうだった。2019年4月、アップルはついにクアルコムとの和解へ乗り出した。クアルコムの技術力が、アップルを折れさせたともいえるのだ。