じじぃの「次世代通信規格・5G革命・ファーウェイ・ショック!米中攻防の最前線」

What is a smart city? | CNBC Explains

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bANfnYDTzxE

NHKスペシャル「追跡!“ファーウェイ ショック”~5G米中攻防の最前線~」

2020年1月19日
2020年、各地で運用が本格化する次世代の通信規格「5G」。5Gを制する者は世界を制すといわれる程、経済から安全保障までをも左右する技術だ。この5Gで世界を席捲するのが、中国の通信機器メーカー「ファーウェイ」だ。
アメリカは安全保障を脅かすとして、各国にファーウェイ排除を求めている。番組では、攻防の最前線となっている欧州を中心に、その舞台裏に密着。各地で巻き起こる「ファーウェイ・ショック」を追う。
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20200119

2020年1月19日、NHKスペシャル「追跡!“ファーウェイ ショック”~5G米中攻防の最前線~」 より

今、世界で注目を集める中国の通信機器メーカー・ファーウェイ副社長が緊急渡米した。
アメリカ戦略の見直しに追われていた。
従業員19万人、売り上げ13兆円、一企業の存在が今世界を大きく揺るがしている。
ファーウェイが世界を席巻しているのが次世代の通信規格「5G」。
今年、世界各地で運用が本格化する。
通信速度はこれまでの4Gの10倍。
膨大なデータを瞬時にやり取りできるためさまざまなハイテク技術に不可欠な通信インフラになるという。
これまで、その内情をほとんど公にしてこなかったファーウェイ。
今回、その内部にカメラが入った。
今、急ピッチで開発を進めているのがスマートシティ。
5Gを使うことで行政システムや交通網などあらゆる都市の機能をつなぐことができる。
5Gは、軍事技術も飛躍的に高める。
中国が一手に握れば世界の安全保障に重大な影響を与えかねないとアメリカが危機感を強めている。
専門家たちが、そう指摘する中ファーウェイの5Gを導入検討している国は既に80を超え世界に広がっているという。
私たちはファーウェイの進出を巡って揺れる欧米各国の現場に密着した。
世界を揺るがすファーウェイ・ショック。
5Gを巡る攻防の最前線を追った。
今、世界で急速に存在感を高めている通信機器メーカーファーウェイ。
スマートフォンのシェアはアップルを抜き世界2位に。
過去最高益を記録する見込みだ。
中国・深圳市の中心部から車で2時間。
ヨーロッパ風の町並みが突如現れた。
ここがファーウェイの一大研究拠点だ。
敷地面積は、東京ドーム26個分に当たる120万平方メートル。この建物一つ一つが研究所。
研究開発費は、毎年売り上げの10%以上。日本円で1兆円を超える。
今、ファーウェイが開発に力を入れている最先端の技術がある。
今回その心臓部にカメラが入った。
深圳市が世界に先駆けて始めたスマートシティはスマートフォンなどの位置データを集積。
刻一刻と変わる人々の動きや混雑状況を正確に割り出す。
さらに、車からのデータを分析し交通渋滞を解消するなどネットワークによって都市全体をしようとしている。
次世代のハイテク技術に不可欠とされる通信インフラが5Gだ。
今年世界で運用が本格化するのをにらみファーウェイが攻勢をかけている。
5GのGとはジェネレーション世代を意味する。
肩に掛ける携帯電話が登場した当時通信規格はまだ1Gだった。
3G以降、通信速度が飛躍的に向上。
5Gでは、通信速度がこれまでの10倍になるという。
4Gに比べ監視カメラなど、接続できる機器の数も10倍に増える。
深圳市のスマートシティには既に8万台の監視カメラが接続され町じゅうの映像が24時間リアルタイムで集積されている。
5Gによって都市の治安も強化されるという。
特に効果的だとされるのが監視カメラの映像をもとにAIが行う顔認証。
異常を検知すると個人を特定。
犯罪と判断すれば警察に、その情報を送る。
これは、実際に起きた強盗事件の映像だ。
バスに乗って逃走した犯人の姿をほぼ途切れなく監視カメラが捉えていた。
すぐに、登録されている顔写真と照合し名前と住所を特定。
僅か30分で拘束された。
ファーウェイのスマートシティを導入した結果過去3年で事件の発生率は25%減少したという。
ファーウェイの梁華会長がインタビューに応じた。
5Gとあわせ、スマートシティの技術を世界中に広げたいと意欲を見せた。
ファーウェイは今スマートシティなどの実現のためインフラとなる5Gの設備を世界中で売り込んでいる。
その強みはコストだ。
独自の技術で、基地局を小型化。
設置費用などを抑えることで他社より最大で3割安いという。
今、世界の5Gの基地局のシェア争いはファーウェイが韓国のサムスン電子エリクソンなどのヨーロッパ勢を抑えトップを走っている。
これは、アメリカの通信会社の調査をもとにしたファーウェイの5Gの導入状況だ。
本格運用を前に、既に導入を決めている通信会社がある国はロシアや中東諸国などおよそ40。
さらに、実証実験を行うなど導入を検討している国を合わせると80を超えるという。
もともと、アジアやアフリカで強いファーウェイが今攻勢をかけているのがヨーロッパ。
その経済の中心、ドイツだ。
最前線となっているのが西部にある工業都市デュイスブルク
この町を中国総領事が訪れていた。
出迎えたのは、デュイスブルク市で中国企業の誘致を担当しているヨハネス・フルークさんだ。
デュイスブルク市はファーウェイの5Gとあわせてスマートシティの導入にも舵を切った。
5Gのネットワークで町全体をつなぎ市役所の業務は全て電子化。
さらに渋滞を予測し、解消するなど都市機能を飛躍的に向上させる。
最先端の都市を目指すことが狙いだ。
中国・深圳市を訪れファーウェイのスマートシティを視察したことが採用の決め手になったという。
実は、デュイスブルクは中国政府にとっても重要な意味を持つ場所だという。
中国とデュイスブルクの関係が深まったきっかけは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にあった。
一帯一路は、鉄道や港の建設を通じてアジアとヨーロッパをつなぐ壮大な戦略だ。
一帯一路に沿った大陸横断鉄道。
その終着駅が置かれたのがデュイスブルクだった。
さらに中国は、この一帯一路に沿って新たにデジタル・シルクロード構想を打ち出す。
中国企業が5Gなどの通信網を整備しそこにスマートシティなどのハイテク技術を輸出。
中国発の巨大デジタル社会を作り上げる構想だ。
習近平国家主席自ら一帯一路に関係する国の代表を招きデジタル・シルクロード構想への参加を呼びかけた。
中国政府に経済政策などの提言を行う呉暁波教授。
こうした中国の国家戦略にとってファーウェイは民間企業でありながら不可欠な存在だという。
デジタル・シルクロード構想の重要拠点となったデュイスブルク
ファーウェイのスマートシティ導入を決めたことで中国企業が続々と進出しようとしている。
この日、やって来たのはフルークさんと共に中国企業の誘致を進めている于凱さんだ。
中国・深圳市を拠点に電気自動車を手がけるこのハイテク企業。
今、開発しているのがネット通販で注文を受けるとその荷物を無人で届けることができる自動運転車だ。
ファーウェイの5Gを利用し研究開発を進める予定だ。
さらに、デュイスブルクはこうした中国企業を集めた拠点を新たに建設。
敷地面積6万平方メートルの中国貿易センター・ヨーロッパだ。
町の未来を変える存在としてファーウェイに期待をかけるデュイスブルク
長年、雇用を支えてきた製鉄所の閉鎖が相次ぎ人口の流出に歯止めがかからず市の財政も厳しい状況が続いている。
その経済状況を一気に変える可能性を中国のハイテク企業に感じているとフルークさんは言う。
しかし、フルークさんの期待とは裏腹にファーウェイを巡る事態が大きく動き出していた。
トランプ大統領NATO=北大西洋条約機構の首脳会議に出席。
その場でトランプ大統領が各国の首脳に対しファーウェイの5Gを排除するよう迫ったのだ。
5Gは軍事面も大きく変えるとされている。
ドローンやロボット兵器が戦場の情報を瞬時に共有し攻撃できるようになるからだ。
アメリカが特に懸念しているのが安全保障を脅かす情報セキュリティの問題。
その根拠の一つとなった調査がある。
通信機器のセキュリティを独自に調査し企業や政府機関に助言をしてきたこの会社。
去年ファーウェイの通信機器500種類以上を調査しある問題を発見したという。
これはネットワークの構築に必要な通信機器。
こうした機器に搭載されたソフトウェアに問題が見つかった。
外部からの侵入を可能にするアカウントが存在していたというのだ。
ソフトウェアは開発段階でセキュリティ上の弱点が生じることがある。
開発者が不正にアクセスするためにその弱点を意図的に設けた場合情報の抜き出しや遠隔操作を行うための裏口つまり、バックドアになる可能性がある。
調査の結果、ファーウェイのソフトウェア一つにつき平均で100を超える弱点が見つかったという。
国務省でサイバーセキュリティを担当するストレイヤー氏は中国政府がバックドアを利用する危険性を指摘する。
アメリカが、こうした事態を強く警戒するのは中国に国家情報法という法律があるからだ。
これは、中国のあらゆる組織や個人に対して国家の情報活動を支援し協力するよう義務づける法律だ。
アメリカが懸念しているのがこの法律に基づき中国政府が情報を引き渡すよう求めた場合ファーウェイは応じざるをえず軍事情報などの国家機密を抜き取られる恐れがあることだ。
ファーウェイはアメリカの懸念にどう答えるのか。
私たちは、ファーウェイの梁華会長に質問をぶつけた。
さらに、梁華会長は強く反論。
ホームページでもアメリカの会社の調査について調査方法自体に問題があり重大な弱点を発見したとは言えないと主張した。
一企業である、ファーウェイの排除を各国に求めるアメリカ。
ファーウェイが攻勢を強めるドイツを訪れたのがポンペイ国務長官だ。
それまで、メルケル首相はファーウェイを排除しない方針を示唆してきた。
ポンペイオ長官は、ドイツに対し改めてファーウェイを排除するよう迫っていた。
その3日後ドイツ連邦議会が新たな動きを見せた。
連立与党でサイバーセキュリティを担当するハクヴェルディ議員。
安全保障上の懸念が指摘される中、ファーウェイ導入の是非を検討する公聴会を開いたのだ。
公聴会にはファーウェイ・ドイツの代表も呼ばれた。
5Gの本格的な運用が始まる前に問題がないか見極めようというこの公聴会
質問は、中国政府と一企業であるファーウェイとの関係に集中した。
公聴会でさらに、疑念が深まったというハクヴェルディ議員。
議会でファーウェイを排除する法律の成立を目指すという。
ファーウェイのスマートシティ導入を決めているデュイスブルク
中国企業の誘致を進めるフルークさんの周囲にも変化が及んでいた。
町の経済の再生をかけたスマートシティの導入。
安全保障を巡るファーウェイへの批判をきっかけに反発が広がり始めていたのだ。
ドイツでファーウェイに対する逆風が強まる中中国政府が更なる一手を打った。
急きょ、中国大使がデュイスブルクを訪問したのだ。
大使は市民に対し中国政府とファーウェイとのつながりを否定。
問題はないと訴えた。
このあと、中国大使とデュイスブルク市の代表との話し合いが船の上で行われることになった。
フルークさんと于凱さんも代表のメンバーとして船に向かった。
いつもはカメラを拒まないフルークさん。ここではカメラの同行を許さなかった。
船の上で、何が話し合われたのか。
後日の取材によれば、新たな投資案件が持ちかけられたという。
ヨーロッパで問題となっているのは安全保障だけではない。
ファーウェイの技術が導入されることで、民主主義や人権が脅かされるのではないかという懸念も広がっている。
これまでにファーウェイの5G導入が決定、もしくは検討されている国を見てみるとカンボジアミャンマーパキスタンなどのアジア諸国からアルジェリアケニアナイジェリアなどのアフリカ諸国まで近年、中国との関係を強めている国が多いことが分かる。
さらに、ハンガリーベラルーシといった東ヨーロッパの旧社会主義国なども目立つ。
そうした国の一つ、セルビア
強権的な政権運営が欧米から懸念されているブチッチ大統領。
今、急速に中国との結び付きを強めている。
この日、地元警察が中国の警察とテロ対策を学ぶための合同演習を初めて行った。
セルビア政府はファーウェイのスマートシティを首都ベオグラードに導入。
そのねらいは、コストの安さに加え中国の技術への期待があると見られている。
交通量の多い交差点。
人通りの多い広場など町の重要な場所に監視カメラを設置した。
今後、5Gの導入によってカメラの台数が飛躍的に増える可能性がある。
市民の間には、政府がスマートシティを利用することで民主主義が脅かされるのではないかという不安が広がっている。
毎週末に行われる反政府デモで声を上げてきた主催者のバレンティーナ・レーコビッチさん。
レーコビッチさんが不安を感じるようになったのは、実際にある出来事に直面したからだ。
最近インターネットで目にした記事。
映像に、うつっていたのは自分たちの拠点に出入りする野党の幹部の姿だった。
拠点のすぐそばにカメラが設置され自分たちの行動が監視されていると感じていたやさきの出来事だった。
今、レーコビッチさんは仲間たちと共に町じゅうに設置された監視カメラをチェックして回っている。
レーコビッチさんは、同じような不安を抱く市民たちと共にデモを行うようになった。
強権的な政権がスマートシティや5Gを利用し市民への監視や取締りを強化するのではないか。
レーコビッチさんは、危機感を強めている。
ファーウェイ・ショックが世界に広がる中各国にファーウェイの排除を迫っているアメリカ。
これまでその要請に従ったのはオーストラリアや事実上排除すると見られる日本など僅かな国と地域にとどまっている。
ファーウェイは。、今排除を迫るそのアメリカの足元さえも揺るがし始めている。
ファーウェイ・アメリカの幹部を務めるドナルド・モリシーさん。
中国の本社から急きょ、アメリカに来た副社長と対アメリカ戦略を協議していた。
本社の命を受けモリシーさんが向かったのはニューヨークで行われていたパーティーの会場。
モリシーさんは、企業の議会対策を行ういわゆるロビイストとして議員たちと人脈を築いてきた。
この日、パーティーに出席していた政財界の関係者らと積極的に話すモリシーさん。
ファーウェイ排除の政策を見直すよう働きかけを行っていたのだ。
モリシーさんがロビー活動を急ぐ背景には議会で審議が進められている法案の存在がある。
それは、アメリカ国内に既に設置されたファーウェイの機器を撤去し他社の機器に交換させるものだ。
この法案が、アメリカの地方で思わぬ波紋を広げている。
人口1万8,000人のオレゴン州ハーミストン。
この町で通信会社を営むジョー・フラネルさんだ。
フラネルさんはファーウェイの機器を使用して高速インターネット回線を整備してきた。
この町のように人口の少ない地域はビジネスになりにくく欧米の企業は取り引きに消極的だった。
そこにビジネスチャンスを見いだしたのがファーウェイだった。
ファーウェイが排除されれば地方の情報インフラの維持は難しい。
その現実が見えていないのではないか。
フラネルさんは、法案に強く反対している。
ファーウェイ・アメリカの幹部モリシーさんはこうした地方の声を集めて新たな一手を打ち出した。
ファーウェイが排除されれば何が起きるのか。
ビデオを制作し世論に訴えることにしたのだ。
このビデオは地方の情報通信を支えてきたファーウェイを排除すればアメリカ社会が掲げてきた平等という理念が奪われかねないと訴えている。
ファーウェイを事実上排除すると見られる日本。
2020年。今年、東京オリンピックが開かれる。
ハッピーニューイヤー! 開催までに5Gの運用が本格的に始まる。
日本の大手通信会社は既に、ファーウェイではなくエリクソンノキアなどを使うことを決めた。
ファーウェイは、梁華会長が自ら来日。
その選択を見直すよう働きかけを続けている。
世界に広がるファーウェイ・ショック。
これが、何をもたらすのか。
ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は、アメリカと中国2つの大国の攻防を研究している。

「5Gをはじめとするハイテク覇権を中国が握ろうとすることでアメリカの世界秩序が大きく揺らいでいる」

それを象徴するのがファーウェイを巡る米中の攻防だという。
ファーウェイの5Gを巡る攻防。
そこから見えてきたのは、これまで民主主義という土台の上で発展してきた経済やテクノロジーがそれとは異なる価値観のもとで広がっていこうとする姿だった。
私たちはそれに、どう向き合えばいいのか。
2020年。5Gが世界を覆い尽くす時代がもう始まっている。

                        • -

『「5G革命」の真実――5G通信と米中デジタル冷戦のすべて』

深田萌絵/著 WAC 2019年発行

5G通信のビジネスと今後 より

インターネットだけでなく、今後は、経済、ビジネスの世界も二分されていくだろう。今までのように米国と中国に二股をかける取る匹は難しくなる。少なくとも、通信関連での共同研究や開発は自粛を求められる。現在、米国で、利用を禁止されてるのはファーウェイ、ZTE、ハイクビジョン、ダーファ、ハイテラだが、大将が拡大される余地は十分にある。
日本企業も今後、「中国を取るか」、「米国を取るか」の選択が迫られる。現段階では、与党に対して影響力の強い経団連媚中派が中国との良好な関係を保つよう国会議員に働きかけているが、米国から強く要請を受けた時には国内の民間企業もファーウェイとの取引停止を余儀なくされるかもしれない。
ファーウェイの迂回取引先として、ファーウェイの組立工場であるホンハイが買収したシャープが利用されている可能性がある。『ビジネスインサイダー』(ニューヨークに拠点を置くビジネス・技術ニュースの専門ウェブサイト)の報道によれば、ドコモの夏商戦モデルの中には、新たにシャープのモバイル、WI-FIルーターがラインアップされている。これまでモバイル、WI-FIルーターといえば、ファーウェイの代名詞的な存在だったが、「法人顧客のなかには中国メーカー製品を選びづらいという企業もある。顧客に選択肢を与えるため、シャープに作ってもらうことにした」(業界関係者)という。だが、これまで日本製のモバイルルーターといえばNECだったのだがいきなりシャープになったことには違和感を覚える。それだけでなく、シャープはすべての家電にカメラやマイクを取り付ける準備をしている。家の中まで監視する日本の家電製品が日本ブランドとして世界に拡散していくリスクがある。