Time Dilation - Einstein's Theory Of Relativity Explained!
ブラックホールであることの決め手は?
2016年6月27日 奥州宇宙遊学館
1915年に発表された一般相対性理論の骨子である「アインシュタイン方程式」の特殊解として、ブラックホールの存在が予測されました。
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生涯最大の過ち 静止宇宙とビッグバン宇宙 より
アインシュタイン方程式は、時空の構造(左辺)と物質・エネルギーの分布(右辺)を結びつける方程式である。宇宙空間に存在するブラックホールなども、すべて、このアインシュタイン方程式から導かれる産物だ。
そして、このアインシュタイン方程式は、なんと宇宙全体に対しても適用できるのである。すなわち、もし宇宙全体の物質分布(右辺)を与えることができれば、アインシュタイン方程式から、宇宙の時空構造(左辺)を決めることができる。あるいは、逆にみれば、もし宇宙の時空構造(左辺)を決めたとすると、アインシュタイン方程式から、その構造に合う物質の分布(右辺)がわかるのである。
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一見、物質が一様に分布していたら、同時に等方的な感じがする。しかし、物質の分布が一様だが等方でない場合もある。たとえば、物資が縞状に分布している場合などだ。だから、この一様性の仮定と等方性の仮定は別なものである。
この一様性の仮定と等方性の仮定は、あわせて、今日、「宇宙原理」と呼ばれているものだ。このふたつの仮定は、現在においても、宇宙論におけるごく基本的な仮定であり、また観測的にもこの仮定に反する観測事実は見つかっていない。
この宇宙原理を大前提として(そして簡単にするために、宇宙が空間的に閉じているという仮定もして)、アインシュタインは、ひとつの「静的な」宇宙を考案した。それがアインシュタインの「静止宇宙」である。宇宙が静的で時間的に変化しないと考えたということは、やはりアインシュタインといえども、従来の描像に捕らわれていることを示している。とはいうものの、アインシュタインが静止宇宙を提案したのは、ときに1917年、宇宙膨脹の証拠が発見されるはるか以前のことであった。
ところが、オリジナルなアインシュタイン方程式を使って静止宇宙を作ろうとすると、それは不可能なことがわかった。というのも、物質だけが分布していれば、それらはお互いの重力によって引き合うので、じっと静止することなんてできないのだ、たとえて言えば、台の上で重たい玉(宇宙の物質)を中空に浮かせるようなもので、どだい無理な相談なのである。考えてみれば、実に当たり前の話だ。
そこでアインシュタインが採った方法が、本章のタイトルにした、自らをして”生涯最大の過ち”と呼ばせた方法だった。彼は方程式の中に、いわゆる「宇宙項」を導入したのである。
すなわち、力学的なイメージで言えば、中空に玉を浮かせることは無理だが、玉の下にバネを入れれば、玉が落ちないように支えることができる。玉の重みでバネが縮み、適当なところで釣り合うだろう。またバネの力は縮んだ長さに比例するので、玉が重くなれば、より縮んで、適当なところで釣り合うことができる。
こうしてアインシュタインは、時空構造を表す方程式の左辺にひとつだけ項を加え、
と、変形した。この付け加えた左辺の第3項が宇宙項(あるいはΛ、ラムダ項)である。この宇宙項は、(右辺の物質の分布ではなく)左辺の時空構造に加えられた修正で、空間の各点に縮むバネのような性質を与えるように作用するのだ。すなわち宇宙項は、距離に比例する斥力として働くのである。ちなみに、Λ項を右辺へ移動すると、ある種のエネルギーとして扱うことができる。それが、2000年ごろに発見された、宇宙の膨張を加速させる「ダークエネルギー」に他ならない。
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かつてニュートンは、万有引力によって地上界と天上界の力のルールを統一した。しかし、ニュートンの宇宙は、あくまで絶対時間と絶対空間の支配する、静止した宇宙であった。ニュートンの神の世界は、死んだ世界だったのである(そういう意味では、アインシュタイン自身の提案した静止宇宙も死んだ世界であった)。
しかし、アインシュタインの一般相対論からは、まったく異なる宇宙、ダイナミックに変化する宇宙が飛び出してきたのだ。そこは、生きていて進化する世界である。
また、相対論以前の、古代から近代までの宇宙観では、宇宙は混沌たるカオスから始まり、現在の調和に満ちたコスモスへ変化してきた、というイメージが強い。しかし相対論以後、現代の宇宙観では、むしろ逆のイメージがある。すなわち光に満ちたビッグバンで始まる宇宙の最初は(何の構造もないという意味で)むしろ整然としたコスモスであり、その後、銀河や星や惑星や生命にいたるまで、さまざまな構造形成が起こって、現在の、複雑なカオス状態へと変化してきたのである。
相対論以前と相対論以後では、宇宙に対する見方はコペルニクス的転向に匹敵するぐらいの大転換をしたのである。