じじぃの「未解決ファイル_202_宇宙定数」

はてな宇宙 特別企画「村山斉が解説する2011年ノーベル物理学賞 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=BEAav1iOyoo
Terence Mckenna - The Cosmological Constant 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=H984-by_jFs
宇宙膨張 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=gPvuRRHa2zQ
アインシュタイン 画像
http://famasaki.com/wp-content/uploads/2012/10/ain.gif
サイエンスZERO 「ダークエネルギーが宇宙を加速する」 2011年12月10日 NHK Eテレ
【司会】安めぐみ 、山田賢治 【コメンテーター】東京大学数物連携宇宙研究機構機構長 村山斉
12月10日に行われるノーベル賞授賞式。今年の物理学賞を受賞したのは、「加速しながら膨張する宇宙」を発見した3人の研究者です。宇宙が加速するためには、重力とは反対の性質を持つ「ダークエネルギー」が必要であることもわかり、宇宙論を根底からくつがえすことになりました。そして世紀の発見までには2つの研究チームの熾烈な先陣争いありました。現代宇宙論最大の謎・ダークエネルギーをめぐるドラマに迫ります。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp369.html
宇宙定数 ウィキペディアより
宇宙定数(cosmological constant)は、アインシュタイン重力場方程式の中に現れる宇宙項の係数。 宇宙定数はスカラー量で、通常Λ(ラムダ)と書き表される。
重力場方程式を最小限の仮定で導出すると、
Ruv - 1/2Rguv + Aguv = 8πG/c4Tuv
という式が得られる。宇宙定数 Λ と計量テンソル guvの積である左辺第3項が宇宙項 Λguvであり、時空が持つ斥力 (Λ > 0) または引力 (Λ < 0) を表すが、通常はわずかに正(わずかな斥力)とされる。
アインシュタインが1916年に発表した最初の重力場方程式は、
Ruv - 1/2Rguv = 8πG/c4Tuv
であった。最初の式で Λ = 0 とした場合に相当する。しかし、1917年の論文ではアインシュタインは、宇宙項を含む式を発表した。その理由は明確には語られていないが、宇宙定数をわずかに正とし「万有斥力」を導入することで質量が持つ万有引力に拮抗させ、定常な宇宙を導くためと言われる。
【再評価】
標準ビッグバン宇宙モデルの初期条件を説明する宇宙のインフレーションモデルは、宇宙の初期に時空が指数関数的な膨張を遂げた、とするモデルであるが、その原理は、宇宙項の存在に相当する真空のエネルギーの存在である。
近年、遠方の超新星の観測結果および宇宙マイクロ波背景放射宇宙背景放射)の観測結果などから、我々の宇宙は現在、加速的に膨張していることが明らかになってきており、加速膨張を説明するメカニズムとして、宇宙項の存在が支持されている。 宇宙定数の源の有力な候補としては真空のエネルギーなどが挙げられ、これを仮定すると宇宙定数の大きさは、自然単位系で評価してナイーブには1の程度になる。しかし、観測的には10-120以下であることが分かっており、このギャップを埋めるメカニズムは現代宇宙論の未解決問題のひとつになっている。最近では、宇宙の加速膨張を担うものとして、宇宙項の可能性を含め、ダークエネルギーと総称することが普通になっている。

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アインシュタインの望遠鏡―最新天文学で見る』 エヴァリン ゲイツ/著、野中香方子/翻訳 早川書房 2009年発行
宇宙定数 (一部抜粋しています)
宇宙定数(Λ:ラムダで表わされる)は、物理学者にとって最も馴染みがある。過去90年間、舞台裏に潜んでいたが、素粒子世界についての理解が進むにつれて、今では宇宙定数は存在するという見方が強くなっている――宇宙定数はゼロだというのであれば話はべつだが、素粒子物理学の標準モデルによると、からっぽの真空空間にもエネルギーは存在する。量子力学は、真空で仮想粒子のペアが生まれることを可能にし、真空では粒子と反粒子のペアがほんの短い時間で生成と消滅を交互に繰り返していると考える――量子力学では、禁止されていないことは、何ごとも必須なのだ。ゆえに、真空は実際にはエネルギーの海になっていて、そこには仮想粒子のあらゆる組み合わせが存在する。
このエネルギー値を計算しようとすると、やっかいな問題に突き当たる。いきなり無限大という答が出てくるのだ、標準モデルでは、粒子と場のエネルギーは、仮想粒子ペアのエネルギーが増すほど大きくなる。そして、エネルギーが高くなるほど、こうした粒子はますます生まれやすくなり、そのすべてを加えていくと総量は無限に大きくなる。もっとも、この手に負えない性質は、標準モデルで計算する際には問題にならない。標準モデルは重力を含まないので、真空エネルギーの絶対値がいくらであっても関係ない。その方程式に含まれるのは、真空エネルギーの差だけなのだ。(したがって無限大という部分は無視される)。海抜が低いところで、自転車に乗ることを考えてみよう。ほとんどの人が気にかけるのは、選んだルートの高低差であって、海抜ではない――いったいいくつの丘を、懸命にペダルを踏んで上らなければならないのだろうかということだ。150メートルの急勾配を必死の思いで上りきって息をはずませている時に、今上ってきたのが海抜5メートルから155メートルまでなのか、あるいは海抜10メートルから160メートルまでなのかはどうでもいいのだ。
一方、重力は、真空エネルギーの数値にこだわる。時空は、真空エネルギーの実際の数値に対応するので、つじつまの合う数値を算出する方法が必要になる。真空エネルギーが無限大になるこれまでの計算は、どれほど高エネルギーの領域でも量子力学は正しく機能するという仮定に基づいていたが、わたしたちはそれが正しくないことを知っている――量子力学を道具として進んでいけるのは、それが信用できるところまでだ。エネルギーが非常に高い領域では、重力を組み入れた量子力学が重要になる。そのようなエネルギー領域で何が起きるのか、実際のところはわからないが、重力は時空の本質とつながっているので、その未知の領域でも何かと結びついているに違いない。
真空のエネルギーを算出する2番目の方法は、また別の仮定の上に成り立っている。それは、真空エネルギーがある「カットオフ(遮断)」値に達すると、(まだわたしたちが知らない)基本的なメカニズムがはたらいて、それ以上、エネルギーが増えないようにするというものだ。あらゆる仮想粒子ペアのエネルギーがすべて真空エネルギーに足されていくが、それはカットオフ値に達するまでの話だ。その結果、答は有限になる。1から数字を無限に足していけば、答はつねに無限大になるが、1から100万までの数字なら、大きいとはいえ有限の答が出る(いくらになるか、計算してみよう)。
カットオフをもたらすものとしては最も理解しやすのは、そこから先は量子重力理論が必要になる。プランクスケールと呼ばれるエネルギーレベルだ。プランクスケールは、陽子の質量エネルギーよりおよそ1019倍大きい。(宇宙論者が桁数で語るのには訳がある。プランクスケールで計算された真空エネルギー値は、桁があまりにも大きすぎて、一番上の位の数字が何であっても[2でも5でも7でも]関係ないのだ)。この方法でエネルギー密度を計算すると、真空エネルギー密度はの予測値はおよそ10120乗になる。しかし観測による真空エネルギー密度はおよそ0.7というはるかに低い数字で、予測値より120桁(1の後に120のゼロが並ぶ数字だ)も小さい。なんということだ。
次のステップには超対称性という理論が関わってくる。超対称性が確かに成立するのであれば、すべての既存の粒子はかならず未知のパートナーを持つことになる。超対称性粒子がまだひとつも発見されていないという事実は、超対称性粒子が対応する通常物質の粒子よりも、かなり重いことを意味する(もちろん、超対称性粒子は存在しないことを意味するのかもしれないが、とりあえずここでは存在すると仮定しよう)。電子の超対称性パートナーのスエレクトロンの質量が、電子と同じなら、粒子加速器実験ですでに見つかっているはずだ。だが、スエレクトロンはいまだ発見されていないので、これまで加速器で発生させた最高のエネルギーでも検出できない重い粒子のはずで、電子より大きな質量を持つことになる。これは、電子とスエレクトロンの対称性が破られていることを意味する。
どのように超対称性が破れるかはまだわからない(もちろん多くの仮設はあるが、決定的なメカニズムは見つかっていない)が、一般的な対称性の破れについては、比較的簡単に理解できる。
ルーレットのホイール(回転盤)を考えてみよう。最初は、ホイールと球は速く回転していて、どの数字にも等しく選ばれる可能性がある。(ホイールに細工がされていない限り)。この場合、全部の数字に対称性が成立している――つまり、すべて対等で、特に選ばれやすいものはない。しかしホイールとボールが減速すると、この対称性が破れる。ひとつの数字が選ばれ、その数字を選んだ人だけに配当は支払われる。それと同様に、超対称性は、粒子世界を支える理論の要素ではあるが、実際の宇宙では破れているのだ。
超対称性が破れるエネルギーレベルがわかれば、「無限大」に制限を設けるもうひとつのチャンスとなる。このエネルギー値より高い領域では、標準モデルの各粒子の真空エネルギーへの寄与が超対称性パートナーの寄与によって相殺される。この筋書では、真空エネルギーへの寄与がカットオフされるレベルが、超対称性の破れるレベルになる。そのエネルギー値は最も少なく見積もっても陽子の質量エネルギーのおよそ1000倍で、宇宙の真空エネルギーの予測値は1060にもなる。やはり観測値0.7とは大違いだ。
じつに困った問題だ。仮にダークマターが、宇宙定数ではなく今述べてきたほかの理論で説明できたとしても、依然として真空エネルギーの予測値がこれほど現実とかけ離れているのはいったいどういうわけだろう。超対称性があろうとなかろうと、量子力学は、真空エネルギーを観測とはかけはなれた非常に大きな値だと予言する。もし真空エネルギーが1060ほどもあったとしたら、わたしたちはここでこうして気をもんでいたりしないだろう――そんな宇宙には、どんな銀河も恒星も生まれるはずがないのだから。つまり、現在わたしたちが描いている量子世界の絵には重要な何かが欠けているのだ。それが何なのかまだわからない。

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『ヒッグス 宇宙の最果ての粒子』 ショーン・キャロル/著、谷本真幸/訳 講談社 2013年発行
真空エネルギー (一部抜粋しています)
1998年、遠方の天体の速度を研究していた天文学者が驚くべき発見をした。宇宙は膨張しているだけでなく、膨張速度が加速しているというのだ。遠方の銀河はわれわれから遠ざかっているだけでなく、遠ざかる速度が増加していた。この現象には複数の説明があるが、データに非常によく合う単純な説明が1つある。1917年にアインシュタインが「宇宙定数」として導入した「真空エネルギー」だ。
真空エネルギーは時間的に変化しない自然定数で、一定体積の完全な真空にどれだけのエネルギーが含まれるかを表してる。このエネルギーがゼロでないと(実際、ゼロであるべき理由はない)、宇宙の各点は互いに押しのけ合おうとし、宇宙膨張が加速する。2011年、ソール・パールムター、アダム・リース、ブライアン・シュミットは、宇宙の加速膨張の発見によりノーベル賞を受賞した。
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天文学者が発見した加速膨張を説明するのに必要な真空エネルギーは、それほど大きくない。1立方センチメートル当たり1万分の1電子ボルトほどでよい。一方、ヒッグス場の値と同じく、真空エネルギーも簡単な計算で大まかな値を推定でき、答えは1立方センチメートル当たり約10の116乗電子ボルトとなる。これは観測地より120ケタも大きい。実際、もおう特別な呼び名もないほど大きな数字だ。階層性問題は困った問題だが、真空エネルギーの問題は数値的にもっとたちが悪い。
真空エネルギーの問題は現代物理学における最も重要な未解決問題の1つである。真空エネルギーの推定値を大きくする原因の1つにヒッグス場がある。この場は真空でゼロでない値を持つため、真空で(正または負の)大きなエネルギーを持つ必要があるからである。フィリップ・アンダーソンが現在ヒッグス機構と呼ばれているものに慎重だったのもこれが理由の1つで、実際、真空で大きなエネルギー密度を持つ場があることと、現実の真空エネルギー密度が比較的小さな値を持つこととは相容れないように思える。しかし今日、この事実はヒッグス機構の実在性をひてする根拠とは見なされていない。その理由はヒッグス場によるものよりさらに大きな真空エネルギーへの寄与がたくさんあり、ヒッグスの寄与だけが問題というわけではないからである。問題はもっと深いのだ。
真空エネルギーは厳密にゼロの可能性もある。というのも、時間的に厳密に一定値をとる真空エネルギーの代わりに徐々に減少する形のエネルギーが存在し、このエネルギーのために宇宙が加速膨張している、という可能性も考えられるからだ。このような考えは「暗黒(ダーク)エネルギー」の範疇に入る。天文学者はこの可能性を検証しようと、考えられるあらゆるテストをしている。最も人気のある暗黒エネルギーのモデルは、ヒッグスと類似するが質量が信じられないほど小さい新たなスカラー場を考えるモデルだ。この場は何十億年とかけてゆっくりとエネルギーがゼロに近づいてゆくが、そうなるまでの間、宇宙空間に滑らかに分布し、暗黒エネルギーとして振る舞う。
LHCで発見されたヒッグス粒子は真空エネルギーと直接の関連はないかもしれないが、間接的には関連する。ヒッグス粒子の詳しい性質が分かれば、真空エネルギーがなぜこんなに小さいのか、あるいは、時間的にゆっくり変化する暗黒エネルギーがどのような仕組みで現れるのかについて、より良く理解できるかもしれない。そうした理解がすぐに得られるわけではないが、真空エネルギーのような頑固な問題に対処するには、どんなヒントも真剣に検討する必要がある。

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どうでもいい、じじぃの日記。
1917年に、アインシュタインは膨張も収縮もしない静的な宇宙モデルを得るために「宇宙定数(宇宙項、真空エネルギー)」を導入した。
のちに、ハッブルらの観測によって膨張宇宙説が正しいことがわかり、アインシュタインは自ら宇宙定数の導入について誤りを認めた。
「真空エネルギーは厳密にゼロの可能性もある。というのも、時間的に厳密に一定値をとる真空エネルギーの代わりに徐々に減少する形のエネルギーが存在し、このエネルギーのために宇宙が加速膨張している、という可能性も考えられるからだ」
宇宙の膨張が加速し始めたのは、約70億年前からなんだそうだ。
「暗黒(ダーク)エネルギー」なのかなあ。宇宙の膨張にヒッグス粒子はどうも関係していないみたいだ。