じじぃの「科学・芸術_788_アメリカ500年史・宗教的になる共和党」

George Bush Loves Christ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gI8QeVrXkwU

2001.09.11: Terrorists Attacks In U.S.

ファンタジーランド(下) 狂気と幻想のアメリカ500年史』

カート・アンダーセン/著、山田美明、山田文/訳 東洋経済新報社 2019年発行

共和党が道を踏み外したとき――なぜ狂信者を統制できなくなったのか より

1990年代以降、たがが外れたアメリカの右派は、たがが外れた左派よりもはるかに大きくなり、強い影響力を持つようになった。それに加えて、右派はかつてない権力を握っている。2016年時点で、合衆国政府の大部分を実質的に支配していると言っていい。
大人でしらふの左派が、仲間たちとのつながりをそれなりに保っているのに対して、地に足の着いた右派は空想に耽りがちな熱狂的信者をコントロールできなくなった。これはなぜなのか?
その1つの理由は、宗教ではないかと思う。共和党は現在、あからさまにキリスト教的であり、アメリカにこれほど大きな宗教的政党ができるのは初めてのことだった。これはまさにアメリカ的な連合体だ。白人のキリスト教徒が主義や階級の違いを隠して結びつき、奇妙なことに、現代の大統領の中で最も宗教的でない人物に率いられている。ある政党に超自然的な考えを過剰に信じる人が増えれば、当然ながら、その政党は政治と政策において作り話を受け入れるようになる。南部バプテスト連盟の聖職者で大学教授でもあるロジャー・オルソンは、福音派根本主義者に乗っ取られたと嘆く一方で、「共和党で起ったこともこれと似ている」と記している。共和党でも穏健派が脇に追いやられてきた。ただし、、両者の動きは単に似ているだけではない。キリスト教と政治的右派の変化は同時に起こり、互いに増幅し合っていた。
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共和党がおかしくなってしまったのは、極端に自由至上主義に走ったせいでもある。私にも自由至上主義の傾向が多少あるが、きわめて純粋な自由至上主義からは、ほとんどの少年が大人になるにつれて卒業するものだ。だが、1980年代以降のアメリカ右派は、このイデオロギーから卒業しなかった。かつての自由至上主義には、それに対抗する強力な左派も存在した。どちらも政府を嫌った。どちらも、現在3億人もの人口を抱えるこの国を19世紀に戻すことができる、あるいは戻しべきだという空想的でノスタルジックは確信を抱いていた。どちたも「金(きん)」に執着するおなじみのアメリカ的魔術思考を持っていた。金だけがリアルだと考え、アメリカの通貨の基礎として再び金に拠り所を見出そうとしていた。
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共和党ははっきりとキリスト教政党になっただけでなく、かってないほど意識的にアメリカの白人政党にもなった。
1960年代からは、南部戦略(人種分離主義や白人至上主義を主張する共和党が用いてきた戦略)を全国展開した。これがうまくいったのは、人口構造の変化に便乗できたからでもある。1960年には、アメリカ人の90パーセントは白人で、非ヒスパニック系だった。白人の人口が70パーセント以下の州は、ミシシッピサウスカロライナルイジアナアラバマだけだ。だが現在では、アメリカ全土で白人が占める割合は60パーセントにまで下がった。つまりアメリカの人種構成は、1960年代の南部諸州よりもさらに「南部的」になった。
しばらくの間、党のリーダーたちはあからさまな人種差別的言動をしないように注意していた。1960年代から80年代二かけて、凶悪犯罪が急増したのを懸念するのは当然ではないか? 貧困と依存の文化を助長する社会福祉プログラムは不要ではないか?
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それに、恐怖の対象となるさまざまな非白人が新たに現れた。20001年9月20日、ブュシュ大統領は、アメリカの敵は「周囲に大勢いるイスラム教徒の友人たち(中略)やアラブ人の友人たちではない」と強調した。しかしその後、多くの共和党員がイスラム教徒の脅威をあからまさに誇張して煽り、とりわけこの傾向は、非白人でミドルネームがフセインである大統領が当選したあと顕著になった。共和党員の半分、予備選でトランプに投票した人の3分の2が、オバマイスラム教徒だと信じていたのはなぜだろうか? 共和党の議員や保守派のリーダーたちが、10年以上もこうした考えを助長してきたからだ。イスラム教徒へのヒステリックな恐怖心は、アメリカで古くからおなじみの、空想に駆り立てられた嫌悪感をいくつか組み合わせたものだ。高い地位にいる謎の陰謀家への嫌悪感、白人による非白人への嫌悪感、プロテスタントによる非プロテスタントへの嫌悪感、キリスト教徒による非キリスト教徒への嫌悪感、アメリカ国民による恐ろしい外国人への嫌悪感……。
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2008年には共和党大統領予備選候補の4分の3が進化論を信じていたが、2012年には3分の1にまで減り、2016年にはたった一人、ジェブ・ブュシュだけだった。そのブュシュも慎重な姿勢を見せ、進化生物学は自分にとって真実だというにすぎず、公立学校で「カリキュラムに含まれる必要はない」としたうえで、仮にカリキュラムに含めるのなら創造説とともに教えるべきだと語っていた。
現在、この白人キリスト教政党のメンバーのほとんどが、確固たる非宗教的なアメリカの未来像を持っていない。共和党の3分の2が、「キリスト教を国歌宗教にすることを支持する」という(また、アメリカ人の大多数が「(アメリカは)すでに憲法によりキリスト教国家として成立していると」と信じている)。アメリカがサウジアラビアやイランのキリスト教版になることはまずないだろうが、すでにトルコのような状態に近づいているのではないか? 公式には無宗教だが、はっきりと宗教的な政党が政権を握っている。