じじぃの「科学・芸術_787_アメリカ500年史・新世界秩序」

The Georgia Guidestones: America's Most Mysterious Monument

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yIfU41BICf4

ヨハネの黙示録の四騎士

ウィキペディアWikipedia) より
ヨハネの黙示録』第6章第2節に記される、第一の封印が解かれた時に現れる騎士。白い馬に乗っており、手には弓を、また頭に冠を被っている。勝利の上の勝利(支配)を得る役目を担っているとされる。

X-ファイル

ウィキペディアWikipedia) より
X-ファイル』は、1993年から2002年にかけてアメリカで製作されたSFテレビドラマ(海外ドラマ)である。 超常現象をテーマにしたストーリー展開や映画並みのロケが話題となり、世界中でヒットした。製作総指揮はクリス・カーター。 2016年1月からアメリカでシーズン10にあたるミニシリーズが放送されており、2018年にはシーズン11が放送された。

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ファンタジーランド(下) 狂気と幻想のアメリカ500年史』

カート・アンダーセン/著、山田美明、山田文/訳 東洋経済新報社 2019年発行

現実は陰謀である――X-ファイル化するアメリカ より

ジョン・マックが、エサレン協会の呼吸法から前世、エイリアンによる誘拐、宇宙規模の「自明の宿命」に進んでいったのと同じで、ビル・クーパーも次から次へと別の空想に引きずり込まれていった。ヨハネの黙示録から、地球上における地球外生物の存在へと向かい、その2つを組み合わせた巨大陰謀説を信じるようになった。クーパーによると、「エイリアン」は「反キリストの真の姿だ。そう考えることによってのみ、さまざまな要素を1つにまとめられる」。
最終的な黒幕は、クーパーの説では「イルミナティ」である。この18世紀ヨーロッパ知識人の秘密結社は、今から200年前にアメリカの陰謀論者たちを怯えさせたが、それが1960年代に極右の強迫観念の対象として復活し、その存在は1980年代と90年代にかってないほど大きく膨れ上がった。イルミナティの「1917年以来」の基本計画は「人類を1つの世界政府にまとめるために、宇宙からの脅威を」使うことだった。そしてそこには、ありとあらゆる組織や人間が参加している。「イエズス会フリーメイソン(中略)ナチ党、共産党(中略)外交問題評議会(中略)日米欧3極委員会、ビルダーバーグ会議(中略)バチカン(中略)スカル・アンド・ボーンズ(訳注:イェール大学の秘密結社)(中略)いずれも中身は同じで、すべて同じ究極の目標、新世界秩序に向かって動いており」、その新世界秩序は「扉を叩き壊しつつある」。それに加えて、ロックフェラー家、ランド研究所連邦準備銀行、CIA、国連も関与している。実のところ、ブッシュ大統領イルミナティによる「新世界秩序の夢」の実現計画について公言し始め、覆面がはがれつつある、とクーパーは言う。
「新世界秩序」――当時この言葉が、邪な陰謀が世界を動かしていると信じる人たちにとって、すべてを包含するただ1つのキャッチフレーズになりつつあった。その陰謀には、クーパーが列挙するエリート集団のほか、数十年前に反共産主義者やジョン・バーチ協会が挙げていた銀行、報道機関、芸能産業も加担している。この世界規模の陰謀を信じる勢力が、地球外生物陰謀説の余波に乗って拡大していた。いわば、1つの空想に基づいた疑惑がまた別の空想を呼んだのである。政治学者のマイケル・バカンは『現代アメリカの陰謀論』の中でこう述べている。 「かつて新世界秩序を信じるのは2つのサブカルチャーに限定されていた。第1が過激な過激な反政府右翼、第2が「終末」に現れるという反キリストに不安を抱くキリスト教根本主義者である。彼らが信じることは、すぐに外部の人たちに広がることはなかった。極右はのけ者扱いされ、その見解はマスコミや流通の経路から常に排除されていた」。だが、ハーバードの教授や主流派ジャーナリストによって、地球外からの訪問者の存在を信じることが「それなりに尊重される」ようになり、「正統性らしきものが付与された」。それが結果的に、「陰謀説が文化的にイメージアップするプロセスを前進させた」。アメリカ人のかなりの部分が、地球上に地球外生物が存在することをアメリカ政府が隠蔽していると考えるようになると、「UFO研究は(中略)本来なら縁のなかった人にまで新世界秩序の考えを届ける手段になった」。
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黙示録に固執するキリスト教徒は、ポスト共産主義に向けて準備万端だった。彼らは1世代にわたって世界規模の陰謀と終末論を混ぜ合わせ、1980年代の終わりから90年代初めにかけて両者を完全に一体化させた。根本主義者の伝道師でメディア王のパット・ロバートソンは、1988年に共和党の大統領候補者指名争いに出馬した際、4つの州で勝利を収めた。そのときに主張したロバートソンの政策は、自分の神学そのものだった。1991年に刊行されたロバートソンのベストセラー『The New World Order(新世界秩序)』は、本質的には『白い馬を見よ』と同じで、キリスト教の要素が増えてエイリアンが消えただけだ。ロバートソンによると、イルミナティから連邦準備銀行までのおなじみの陰謀は、ヨハネの黙示録が預言するハルマゲドン前の悪魔的な信仰を生み出そうとしている。ニューエイジの魔術師たちも同様に、キリスト教に代わる悪魔的な信仰を生み出そうとしている。クーパーと同じく(またおそらく現在のウラジーミル・プーチンとも同じく)ロバートソンも、イルミナティがロシアの共産主義を設計し、75年後にそれを崩壊させ、イルミナティが仕切る金融システムに世界が依存するように仕組んだと考えているが、その物語にロバートソンはひとひねり加える。冷戦も、アメリカを破産させるためにイルミナティが仕組んだことであり、それによってはアメリカを乗っ取ろうとしたというのだ。
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『白い馬を見よ』の刊行から10年後、この運動の始祖であるビル・クーパーが、アリゾナの自宅で保安官補たちとの銃撃戦の末に殺害された。保安官補たちは、クーパーが隣人を銃で脅したため彼を逮捕しようとしていた。これは2001年のことで、警察がもともとクーパーの逮捕を予定していたのは……9月11日だった。この偶然のタイミングのおかげで、当然ながら新世界秩序信者たちの間では、殉教した英雄としてのクーパーの地位がいっそう高まった。彼らにとって偶然は存在しない。それから間もなく、FOXは『X-ファイル』の新エピソードを放送しなくなった。いずれにしても、それ以上は必要なかっただろう。この番組はすでに人々を教育することに成功していた。「真実はそこにある」のだから、「信じろ」「誰も信じるな」。2001年、アメリカ人はすでに数多くのUFO目撃情報を寄せていたが、2015年にはその数が2001年の241%に達した。