じじぃの「科学・芸術_775_現代中国・攻めの大国外交」

China's Future MEGAPROJECTS (2019-2050's)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gNE7VPtvfbI

China 2050

プライムニュース 「田中均X藤崎一郎X宮本雄二 米朝 “交渉決裂後のシナリオ” 関係諸国はどう動く?」

2019年3月11日 BSフジ
【キャスター】竹内友佳、松山俊行 【ゲスト】田中均(元外務審議官 日本総研国際戦略研究所理事長)、藤崎一郎(元駐米国大使 中曽根平和研究所理事長)、宮本雄二(元駐中国大使 日中友好会館 会長代行)
“物別れ”に終わった2回目の米朝首脳会談。交渉再開に向けて、共に“前向きな意向”を発しながら、互いを牽制し合う米朝両国だが、北朝鮮が持つ核・ミサイル関連施設に関して、『活動再開』など不穏な動きも伝えられる中、米朝交渉は水面下でどのように動いているのか?
一方、“貿易戦争”を抱える米中関係では、アメリカ側が制裁関税の期限を延長するなど両国が交渉継続の姿勢を示すなか、中国の国会・全人代が終われば、米中首脳会談も月内には行われる見通しだ。経済・軍事の両面で台頭を図る習近平体制にトランプ政権は、どのようなサプライズ戦略を打ち出すのか?
●米中対立の焦点と想定リスク
中国と米国との貿易交渉、覇権を巡る争いについて。
先ごろ香港のメディアが中国共産党の内部で対米方針が決定されたと報じた。
・対抗と冷戦を回避し順を追って解放しつつ、国家の核心的利益は譲らない
・米側のタカ派に科学技術の新冷戦に引き込まれるのを回避するという大局を最優先して、ファーウェイ問題を慎重に米中交渉から切り離す
宮本雄二、「実際適用するのは難しい。何が国家の核心的利益なのか。どうやって対抗と冷戦を回避するのか。具体的な方針は書かれていない。中国は米国と衝突しても勝てないというのが重要」
藤崎一郎、「米国はこの2年間が終わるまではみんなが中国に対して強い姿勢を取ると思う。来年は大統領選挙があり、弱腰になると何を言っているんだと言われる。米国は鄧小平の言う『韜光養晦』とはやっていることが違うということに気づいた。米国は政権が代われば新しい政策が打ち出されることもある。常に米中対立が続くことはないかもしれない」
前編:http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d190311_0
後編:http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d190311_1

『現代中国を知るための52章【第6版】』

藤野彰/編著 赤石書店 2018年発行

協調と摩擦の大国外交 国益グローバル化を背景に積極攻勢 より

「中国は自国の利益をかなえるため、(インド太平洋)地域に影響を及ぼそうとしている。……地域および世界の安全保障の支援に対する中国の責任能力は高まっている。我々が中国に促したいのは、安定を強化し、国際法を強固なものとし、自分たちよりも小さな国々の利益と彼らが平和的にそれを追求する権利を尊重する形で自らの力を行使することだ。……オーストラリアは中国との関係を強化していく。今や中国はオーストラリアのほとんどすべての国際的な利益に影響を及ぼす能力を持つ地政学上の主要なプレーヤーだからだ。中国は2016年のわが国の輸出額の32%を占めるなど、最大の貿易相手国であり、現在のところ、予見しうる将来もそうであり続けるだろう」
オーストラリアは2017年11月に発表した外交政策白書のなかで対中関係の現状と展望についてこのような見解を示した。そこには国際的な影響力を高める中国に対する警戒と期待が複雑に交錯している。(近年の中国の対外拡張路線には強い危機感を抱かざるをえない。中国が国際法を無視して傍若無人な振る舞いをすることがないよう防備を強化し、牽制していかなければならない。とはいえ、中国との経済貿易関係はもはや後退不可能なレベルにまで深まっており、国益を考えれば、安定したパートナーとしての協力関係をさらに発展させていきたい)。オーストラリアの基本的な対中アプローチはそういったところにあると見ていいだろう。そして今日、これは中国と幅広い分野の関係を有する国々に多かれ少なかれ共通する外交心理と言える。
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1978年の改革・解放以降、中国は先進国から資金や技術を導入し、経済建設に専念するために、客観的にも主観的にも安定した国際環境を必要としてきた。世界第2位の経済大国となった現在も中国は依然として発展途上にあり、引き続き平和な国際環境を求めているという状況は基本的に変わっていない。ここで思い起こされるのは、改革・解放を主導した最高実力者の鄧小平が1990年代初期に提起した国際戦略の指導思想「韜光養晦(とうこうようかい)、有所作為(ゆうしょさくい)」である。これは「能力を隠して外に現さず、いくらかの成果を出す」という意味であり、中国外交の戦略性を物語る言葉としてよく知られている。
当時、外相を務めていた銭其シンの証言によると、鄧小平にソ連・東欧社会主義の崩壊、東西冷戦の終焉といった国際情勢の激変を念頭に、「能力を隠して外に現さず、一心不乱に事に当たる。旗降り役にならず、先頭に立たない。行き過ぎた話はせず、行き過ぎた事もやらない。本当に手堅くしっかりとした経済建設に取り込み、ぐずぐずしてはいけない。国際舞台において中国は取るに足りない存在ではなく、いくらかの成果を出すことができるし、そうでなければならない」と関係者に指示した。
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習近平の外交を論じた中国の研究所によると、国内では多くの者が「『韜光養晦』はもはや中国の対外関係発展の全体的ニーズに適応しておらず、調性が必要な時期に至っている」と考えており、「『韜光養晦』は中国がさらに国際的地位を向上させ、大国イメージを樹立するうえで不利に働く」「『韜光養晦』戦略ではもう中米間の戦略的立率を回避できない。中国は幻想を捨て、衝突を直視し、恐れずに刃を抜かなければならない」といった意見さえ出ているという(金燦栄等著『中国智恵――十八大以来的中国外交』中国人民大学出版社、2017年)。
同書のなかで、外交問題専門家の金燦栄・中国人民大学教授は従来の中国外交について「長いこと(少なくとも改革・解放以降)、中国の自己評価は一貫して『発展途上国』『東アジアの地域大国』というものだった。このような『地域大国』という国家の位置づけはわが国の発展の長期にわたる立ち後れという全体的国情によるもので、それに応じた外交目標も主として国内の経済発展の後ろ盾になることだった。これは明らかに守りの外交姿勢であった」と総括している。そのうえで、習近平外交に関して「中国の国益は日増しに『グローバル化』するようになった。旧来の目標の位置づけは経済、社会の発展と一致しないだけでなく、わが国の国益の正当な擁護にも影響を及ぼそうとしている。このため、新たな中央指導グループは発足以降、初めて中国外交の総体的な目標、すなわち『中国の特色ある大国外交の構築』を打ち出し、世界大国としての中国の位置づけを明確に指し示した」と指摘している(前掲書)。つまり、習政権は鄧小平時代以降の「守りの外交」と決別し、「世界大国としての外交」を目指しているということだ。