じじぃの「歴史・思想_408_日中漂流・中国の3つのシナリオ」

【中国情勢】中国が隠し続けた夢が「復讐」だった 100年マラソン

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=UiGALN6qau4

『China 2049』(マイケル・ピルズベリー/著)

●本書の概要 著者プロフィール 目次
今後50年、100年の国際政治においては、米国が覇権を保ち続けるとも、中国やインドが台頭するとも言われている。しかし、中国はそんな風には考えていない。すなわち、100年越しの「中国主導の世界秩序」回復を狙っているのだ。その時期は2049年共産党100周年記念の年であり、そのためのプランは着実に実行されてきたという。
本書は、そんな中国の驚愕の国家戦略「100年マラソン」計画を明らかにし、あらゆる角度から検証した一冊だ。著者は米政府で長く対中国防衛政策を担当し、現在も国防省顧問、ハドソン研究所中国戦略センター所長を務める中国研究の第一人者。刊行にあたっては、CIA、FBI、国防長官府、国防総省の査読も受けたといういわく付きの内容である。
中国指導者層は『資治通鑑』など古典から学び、数世代にも及ぶ長期戦略を実行に移してきたが、その戦略においては、野心を隠し敵を欺くことが最も重要とされたという。その野心に気付かず様々な対中支援を行ってきたアメリカは、著者を含め、これまで見事に騙されていたのである。
こうした中国の戦略は、防衛戦略はもちろん、対中ビジネスにも大きな影響を与えるむしろ、政治経済が一体化しているのが中国の強みであり、本書ではそうした国有企業や市場の実態にも迫っている。また、領海をめぐる近年の日中間の緊張や日米関係についても言及が多く、全ての日本のビジネスパーソン必読の一冊といえるだろう。
https://book-smart.jp/11984/

『日中漂流――グローバル・パワーはどこへ向かうか』

毛里和子/著 岩波新書 2017年発行

中国外交は攻撃的か より

米国でのディベート

2015年頃から米国では対中国戦略をめぐって激しい論戦がある。中国の実力をどう評価するか、中国の国際戦略をどう見極めるか、昨今の強硬外交には権力内の闘争、国有企業や地方と結びついた利益集団の突き上げてがあるのではないか、文民、とくに外交部の統制から離れた解放軍が独自の行動に走っているのではないか、などの疑問や憶測が渦巻いている。いま、米国の中国専門家を大きく3つに分けると次のようになろう。
ハト派
ハト派は、大きく安定した中国こそ、米国の世界戦略と矛盾・衝突しないと考える。代表はエズラ・ヴォ―ゲル(ハーバード大学)。彼は、自分は1972年の米中和解の受益者であるとともに、推進者でもある、としたうえで、鄧小平時代の中国、米中関係は、依然として有効であり、双方ともに利益をうる、米国の対中政策も大きくは変わらない、という。
*中間派
中間派の代表としては、シャンボーやランプトンなどが挙げられる。安定的で冷静な中国認識と評判だったシャンボーが「中国共産党統治の最終幕が始まった」という一文をウォルストリート・ジャーナルに書いて大変話題になった。エリートの海外脱出、習近平への過剰な権力集中と人権派の抑圧、解放軍の独立的動きから、習近平政権の統治能力に大きな疑問を提起した。しかし彼には、権力の崩壊はゆっくりと進み、近い将来の突発事は想定にならないようである。
タカ派

タカ派として挙げられるのは、ピルズベリー(ハドソン研究所)などだろう。

『China 2049』で彼は、「中国は私たちと同じような考え方の指導者が導いている、脆弱な中国を助けてやれば、中国はやがて民主的で平和的な大国となる。そして中国は大国になっても、地域支配、ましてや世界支配をもくろんだりはしない……こうした仮説はすべて危険なまでに間違っていた。現在、その間違いが、中国が行うことによって日に日に明らかになっている」と、これまでの対中宥和政策を徹底批判するのである(ビルズベリー・2015)。彼からすれば「強い中国」は米国にとっての脅威以外の何ものでもないのである。
なお、フリードバーグ(プリンストン大学)は、昨今の中国は大国化し、現状維持国家ではなくなったとし、米国内で議論されている対中戦略には次の6つのオプションがありうる、と分析している(フリードバーグ・2015)。
*中国を飼いならす
*冷戦期のような軍備管理交渉で中国の安全を保障する。
*影響圏構想。キッシンジャーの太平洋共同体論
*離岸均衡戦略
*よりよい均衡戦略
*完璧な封じ込め
このように、台頭中国についての米国の認識は大きく揺らいでいる。だが不確実なのは、肝心な中国自身がどのような外交目標と対外戦略(米国と覇権を争うか否か)をもつか、であろう。もっとも、トランプ現象に見られるように、米国はそれ以上に不確実かもしれない。