じじぃの「インクの匂い・指に感じる紙の手触り・プリントの逆襲!アナログの逆襲」

本が醸し出すインクの匂い

『アナログの逆襲』

デイビッド・サックス/著, 加藤万里子/訳 インターシフト 2018年発行

プリントの逆襲 より

彼女は表現方法として本を選んだことに、こと細やかに反論を並べたてた。本を書くには取材と執筆に膨大な時間と労力が必要だが、出版社から支払われる報酬はごくわずかだし、作家が大金を稼げるほど売れる本はほとんどない。それに加えて印刷されたものなんて誰も読まない、と。
じゃあ、どうすればいいんです?と、私は尋ねた。
「ブランド・コンテンツよ」。さもわかりきったことのように答えが返ってきた。世界はブランドによって動いていて、アーティストやほかのクリエイティブな人たちはブランドのために素晴らしい作品を創っている。彼女にとって、『アナログの逆襲』をそうしたプロジェクトのひとつと見なすのはいともたやすいことだった。レコードに関するウェブ動画サイトにソニー・ミュージックが資金を出してくれるかもしれないに、キャノンがアナログ”製造者たち”をテーマにしたブログを後援してくれるかもしれない。もう本を読みたがる人なんていない、と彼女は言う。「みんなが求めているのは、消化しやすいブランド・コンテンツのかけら」なのであって、私のようにアートやアイデアを生み出す人間は、そうしたコンテンツを作って金を稼ぐか、絶滅寸前の文化の象徴にしがみついてますます貧乏になっていくのかのどちらかだ、と。
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理由は簡単だ。紙で読むことはきわめて機能的で、私たちにとってほとんど習性になっているからだ。マリア・セブレゴンティが説明したモレスキンのノートの魅力と同じように、紙に触れることは五感を使う行為だ。たとえ『エコノミスト』の印刷版がウェブサイトやアプリで読める記事と同じでも、インクの匂い、ページをめくるときのカサカサという音、指に感じる紙の手触りはデジタルでは経験できない。こうしたことは、記事を読むうえで関係ないと思うかもしれないが、実は重要だ。iPadで読むと、どの記事も同じように見えるし、同じように感じられる。印刷版は、ページを指でめくることで、過剰な情報にさらされているという感覚をせき止めることができるのだ。
デジタル出版社もこの事実に気づきはじめ、多くが印刷出版物を試しはじめた。

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どうでもいい、じじぃの日記。
日本でも世界でも、本の売り上げが減少し続けているのだそうだ。
「インクの匂い、ページをめくるときのカサカサという音、指に感じる紙の手触りはデジタルでは経験できない」
死んでしまったら、本を読むことができなくなるんだ。 (--、)