じじぃの「スマートなビジネス・シャイノーラ・デトロイトの腕時計!アナログの逆襲」

Shinola: Inside Detroit's Unlikely Luxury Brand

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6v1QNUwJx8Q

デトロイトの腕時計

『アナログの逆襲』

デイビッド・サックス/著, 加藤万里子/訳 インターシフト 2018年発行

仕事の逆襲 より

製品の伝統的なデザインを見ると由緒あるブランドのように思えるが、シャイノーラ(腕時計など高級ブランド)はまったく新しい企業である。そうかといって、限られた資金とリソースで市場に挑み続けるスタートアップとも違う。カーツォティス(シャイノーラの創業者)は、1990年代にショッピングモールを席巻した、現在価値約35億ドルの腕時計ととアパレルの企業「フォッシル」の創業者であり、元会長だ。個人資産は控えめに見積もっても数億ドルは下らない。シャイノーラは、2010年に正式にフォッシルを自認した後に彼が手がけた最大のプロジェクトだ。
当初の予定では、ティファニーやモバードに卸すプライベート・レーベルの時計工場を作るはずだった。テキサスに住むカーツォティスがそのための土地を探していたとき、手ごろな工場用地と手先を使う技能労働者がそろうデトロイトは、申し分のない候補地だった。しかし、はたしてデトロイトで作られた高級ブランドを買う人がいるだろうか? カーツォティスには確信が持てなかった。

そこで調査を実施して、中国製の5ドルのペンと、アメリカ製の10ドルのペンと、デトロイト製の15ドルのペンのどれを購入したいかを消費者に尋ねることにした。圧倒的多数の回答者が、いちばん高額なペンを選んだ。デトロイト製だからという理由だけで。

カーツォティスは、デトロイトが高級品の発信地になりうること、「メイド・イン・デトロイトの腕時計ブランドが他社ブランドの腕時計を作るよりもはるかにメリットが大きいことに気がついた。腕時計業界のある友人にこの計画を話したところ、その友人は「トム、”おまえはまるでわかっていない(ユー・ドント・ノウ・シット・フロム・シャイノーラ)”」という。第二次世界大戦時に兵士がよく使った言い回しを口にした。そのなかに出てくる「シャイノーラ」という当時人気だった靴墨の名前が、そのまま新しいブランド名になった。
シャイノーラの拠点は、すべてデトロイトに置かれている。「アメリカ製が生まれるところ」をモットーとし、全製品の製造と組み立てをデトロイトの工場か他州のサプライヤーでおこない、国産であることを売りにしている。
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問題は、アナログな仕事はテクノロジー関連の仕事と違って、政治家、投資家、フィランソロピスト(成長性の高い組織や企業を中長期にわたり支援して事業の成長を促し、社会的課題の解決を図る人)、メディアにとって魅力的ではない、ということだ。
ツィッターダウンタウンのオフィスにひとり人員を配置するだけで、シャイノーラがここに工場を建てたのと同じくらい大々的に報じられる」というのは、カイル・ポークだ。彼は、地元企業タウン・パートナーズの不動産デベロッパーであり、「デトロイト・フューチャー・シティ」という市の経済データの収集・分析プロジェクトのコンサルタントもしている。デトロイトで育った彼は、ニューヨークで投資銀行業務に携わり、連邦準備銀行で働いた後、故郷に戻ってきた。祖母が所有する古い家で子供たちを育てており、コミュニティのニーズの現実と、それを向上させるためのデジタル・テクノロジー企業ができることを正しく理解している。
ポークは、デトロイトの問題の解決策として浮上している様々な都市再活性化計画や開発についてこう言った。「みんな、ホールフーズ・マーケットを誘致すれば、”暮らし、仕事、遊び”がそろったコミュニティを作れると思っている。でも、職がなくて腹を空かせた住民は、暮らすことも働くことも遊ぶことだってできやしない。そんなことをしたって、ホールフーズの駐車場でくそったれの強盗に金を奪われるのがおちだ! 住民をよけい苛立たせるだけさ。デトロイトの失業者の大半は、大学を出ていない。コミュニティに仕事を持ってきたいなら、なんで大卒者向けの仕事を持ってくるんだ? アナログはトレンドじゃなくて、スマートなビジネスなんだ。物量倉庫とヤフーのどちらかを選べるなら、どうして労働者たちのためになる方を誘致しない?」
その点、シャイノーラはこの都市に適したモデルだとポークは見ている。つまり、今後の拡大が見込めて、デトロイトの人間とフィジカルな資産で成り立つリッチなビジネスであり、投資家にとって魅力的で競争力がある。

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どうでもいい、じじぃの日記。
2018年2月の放送だったが、BSフジ 「プライムニュース」で、「日本の製造業は中国に追い越されるのではないか」のようなタイトルの番組を観た。
中国に進出している日本企業の専門家がこんなことを言っていた。
「日本の方は、中国の製造業が日本の製造業を追い越すのではないかと心配しているが、我々は全く心配していません。なぜなら、モノを作っても彼らには製品を共有するこということがない。日本人は作ったモノに対しみんなで思い入れがあり共有している。だから、日本が製造業で負けるなどとは思っていない」
作ったモノに対し思い入れがあり共有しているというのは、アナログ的な仕事のように思える。