じじぃの「人の生きざま_781_市原・悦子(女優・声優)」

日本昔ばなしで有名な市原悦子、あの話し方には理由があった

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4OWXoRgqtJ0

女優の市原悦子さん死去 「家政婦は見た!」など

2019年1月13日 産経ニュース
テレビドラマ「家政婦は見た!」など、多くの映像作品に出演した女優の市原悦子(いちはら・えつこ、本名・塩見悦子=しおみ・えつこ)さんが12日、心不全のため、東京都内の病院で死去した。82歳だった。
通夜は17日午後6時、葬儀・告別式は18日午前11時、東京都港区南青山2の33の20、青山葬儀所で。
https://www.sankei.com/life/news/190113/lif1901130044-n1.html

女優・市原悦子 最後まで声には力が宿っていた より

ドクター和の臨終図鑑 【執筆者】長尾和宏(医学博士) 2019年1月26日号 夕刊フジ
まんが日本昔ばなし』のアニメが始まったのは、私が高校生の頃でした。部活と受験勉強に明け暮れた時期でしたが、時々、言いようのない残酷さを孕(はら)んだ物語を、つい夢中になって見ていました。
あの番組で7つの声色を使っていた女優の市原悦子さんが、1月12日に都内の病院で亡くなりました。享年82。死因は心不全とのことです。
その1ヵ月ほど前に盲腸と診断されています。手術は行わず、薬で治療を終えて12月30日に退院。お正月は自宅で過ごしましたが、1月5日に再び体調不良を訴え、別の病院に入院。7日までは会話ができていたそうですが、徐々に意識が混濁し、帰らぬ人となりました。
報道だけでは、盲腸と死因の因果関係はわかりませんが、寝込んだのはわずか1週間あまり。ピンピンコロリと言えなくもありません。
市原さんは、7年前にS字結腸がんを手術。2年ほど前には自己免疫性脊髄炎と診断されました。脊髄とは背骨に通っている神経のことです。免疫システムが脊髄の中に異物を見つけたと勘違いし、攻撃することで炎症が起こります。明確な原因は不明です。腰や背中がしびれ、痛むこともあり、思うように動けません。薬で痛みを緩和させるしかないのですが、悪化すると排泄(はいせつ)も困難になります。
市原さんは上手に治療と付き合っていたようで、女優の仕事はセーブしていたものの、声優などで活動を続けられました。
年を重ねると、声が掠(かす)れたり弱々しくなるものですが、市原さんの声には最後まで魔力が宿っていたように感じます。彼女の声でなければ、『日本昔ばなし』もあれだけのお化けアニメ番組になっていたか、どうか。
昔話とはすなわち「死の物語」の伝承であると私は考えます。かぐや姫が月へ行くということ。浦島太郎が竜宮城で暮らすということ。龍の子太郎の母親はなぜ龍になったのか…死を暗示し、世の無常を子供に教える。それが昔話の役割だったはずです。
今、わが国では死を見たことがないまま大人になる人が珍しくありません。医者や看護師にもそういう人は多く、終末期を診る医療現場は混乱するばかりです。『日本昔ばなし』の映像を小中学校でしっかり見せるだけでも、日本人の死生観は大きく変わるはず。学校の先生方、どうかよろしくご検討ください。
空襲体験のある市原さんはさらに、「戦争童話」を朗読する仕事も長年続けられていました。