じじぃの「幸せ回路と共感性・ドーパミン!こころを動かす物質」

お天道様

『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」』

櫻井武/著 ブルーバックス 2018年発行

「心」とは何か より

私たちは前頭前野の機能により、自らおかれている環境を理解し、自分の身体の状態を認知しながら生活している。前頭前野は意識や認知、論理的思考、内省、倫理的判断、未来の予測などに深くかかわっており、また、思考に用いる作業記憶もこの部分に存在する機能である。作業記憶の内容は、現時点で私たちが認知していることである。私たちの「自我」や「意識」はこの部分に存在すると言っても間違いではない。
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ここまで、情動を紡ぎだす大脳辺縁系や報酬を取り扱う報酬系などが「こころ」のもとになっていることを見てきた。それらを踏まえて、日常の「こころ」の動きがどのようにつくられているのかをまとめてみよう。
たとえば、恐怖を感じるとはどういうことだろうか。これにはいままでの章で見てきた扁桃体を中心とした、大脳辺縁系の働きが大きく関係している。
ヒトや動物は外界の状況を、感覚系を介してキャッチしている。その情報は、視床を介して扁桃体にやってくる。その人が恐怖を感じる対象や状況を認知したときに、扁桃体は強く興奮する。扁桃体が中心核を介して視床下部や脳幹に情報を送ると、自律神経や内分泌系が変動するとともに、脳内でもモノアミン系ニューロン群が大きく活動を変える。とくに青班核ノルアドレナリンニューロンの活動が増え、扁桃体に作用することにより、恐怖行動は強化される。扁桃体が交感神経系を興奮させることで、心拍数は増加し、手掌の発汗や、筋肉の緊張が起こる。それを前頭前野が知覚することで、内的状態としての恐怖が認知され、それによってさらに恐怖は強くなる。
一方で、喜びを感じているときには、報酬系の活動が起こっている。報酬をゲットできる、あるいはゲットできるかもしれないと前頭前野が認知することにより、腹側被蓋核のドーパミン作動性ニューロンが活動することが、喜びの「こころ」をつくる。
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だが、複雑な社会形態のなかで生きているヒトの「こころ」は、さらに複雑だ。それは、いままでの章で述べた「共感性」や「社会性」という機能をもっているためである。この機能こそが、ヒトの「こころ」を「こころ」たらしめている要素といえる。
ヒトは他者の立場に立って、そのヒトの気持ちを類推することができる。他者の幸福や不幸を脳内でシミュレートし、擬似体験することができるのである。この他者は、ときには物語のなかの登場人物であることもある。そしてこのとき、報酬系大脳辺縁系は自分が体験したときと同様に機能し、他者の幸福を喜んだり、憐れんで涙を流したり、他者が感じた恐怖体験を脳内で疑似体験したりすることができる。さらには嫉妬などのかなり複雑な「こころ」にも、共感性が関与している。ある報酬を他者が得られ、自分が得られないことを理解できるからこそ、そうした感情が生まれることになる。その結果、大脳辺縁系が活動し、モノアミン系ニューロン群を動かすことにより、特有の気分、そして「こころ」が生まれるのである。

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どうでもいい、じじぃの日記。
私は大人の発達障害だ。これまでほとんど人と交わりがなく生きてきた。
2、3年前だが、ある本に「お天道様が見ている」ということが書かれていた。
人は人との交わりで成長(共感性や社会性など)していくのだろう。
それでも、私はこの言葉を意識して生きるようになった。ちょっと遅かったが。