じじぃの「科学・芸術_742_スペイン・フラメンコとカンテ」

スペイン・コルドバ・フラメンコ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2PrH_ygx6IM

フラメンコ

フラメンコ ウィキペディアWikipedia) より

フラメンコ(Flamenco)は、スペイン南部のアンダルシア地方に伝わる芸能で、歌、踊り、ギターの伴奏が主体となっている。
フラメンコの歴史と発展にはヒターノ(スペインジプシー)が重要な役割を果たしている。さらにさかのぼると、ムーア人の影響もみられる。
19世紀後半に入るとフラメンコの本場であるアンダルシア以外にも、マドリードバルセロナなどスペイン国内の各地にカフェ・カンタンテが出現し、フラメンコはアンダルシア地方の一民族音楽から大きく飛躍することとなった。またこの時期にはフラメンコの内容も大きく変容し、ギターがフラメンコの主流の楽器となったほか、それまでのヒターノたちの影響を強く受けたカンテ・ヒターノのほかに、元からのアンダルシア民謡がフラメンコの影響を受けたカンテ・アンダルースと呼ばれるもう一つの新しい流れが生まれた。そして各地にカフェ・カンタンテが出現したことから、芸能として確立されたフラメンコには優れた奏者が次々と現れ、フラメンコはより豊かで洗練されたものとなっていった。

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『アンダルシアを知るための53章』

立石博高、塩見千加子/編著 赤石書店 2012年発行

フラメンコとカンテ より

フラメンコと聞くと、まず華やかな衣装に身を包んだ女性の踊りを思い浮かべる人が多いに違いない。しかし、フラメンコの根幹はカンテ(歌)にある。
日本では、フラメンコの本質はカンテ・バイレ(踊り)・トケ(ギター)の3者が一体となるところにある(三位一体)といわれることが多いが、じつはこれはハイレ側からの見方にすぎない。
実際、踊り手は歌やギターから刺激を受けながら、ときに即興的な感興をもって踊るし、素晴らしい踊りを前にすれば歌い手や弾き手も気持ちが入る。踊り手はそれに反応し……という相互作用が良いステージを作る重要な要素であることは事実だが、これは別にフラメンコに限った話ではない。もちろん、踊り・歌・ギターの3者がそろわなくても立派にフラメンコは成立する。1人の歌い手と1人のギターでカンテだけを聞かせるステージは多いし、ギターだけのリサイタルもある。そして、複数の演者がいるときには、今述べた相互作用が必ず動く(はずだ)。だから、先ほどの「三位一体」は、伴奏も単なる添え物と見てはいけないという、踊り手の心構えを述べたものだと考えたほうがよい。
フラメンコの根幹はカンテだというのは、踊りよりも歌のほうが偉い(踊り手は歌い手に従属する)などという意味ではない。フラメンコというジャンルが歌を中心に確立し、発展してきたということだ。
もともとフラメンコには「曲」という概念がなく、かわりに多種多様な「形式」だけが存在する。それらの形式のなかには、歌われるだけで踊られないものも多くある。マラゲーニャやグラナイーナなど、歌い手が定型的なリズムに従わずに歌う「自由(または内的)リズム」と呼ばれる形式は、基本的に踊られない。また、フラメンコのもっとも奥深い形式のなかに数えられるシギリージャやマルティネーテは、これらを初めて踊った踊り手の名前がわかっている。ということは、踊られるようになったのが比較的最近だということだ。また、ギターその他の楽器による伴奏をともなわない、歌だけの形式(トナーなど)もある。
つまり、フラメンコというジャンルを構成する諸形式をすべてカバーしているのはカンテだけなのだ。現在ではバイレのレパートリーも拡大して、カンテが独占してきた形式も踊られるようになってきているが、これはカンテを出発点にした発展だといえる。