じじぃの「科学・芸術_703_時間を意識する自己・アメリカカケス」

Causal understanding of water displacement by a crow 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ZerUbHmuY04
お利口なカラス

2012年1月3日 TBS チンパンジーが教えてくれる希望の秘密 より
【出演者】俳優 袴田吉彦京都大学霊長類研究所所長 松沢哲郎 【レポーター】CBCアナウンサー 青木まな
人はサルから人類へと進化を遂げた。その過程の解明は少しずつ進みつつある。これまで謎だった、喜怒哀楽から複雑な感情までを抱く「人の心」はどのように形成されていったのかについても研究が進んでいる。
最後は4時間目。
ディスプレイ装置の脇に半円球のボールのようなものが置かれている映像が出てきた。
あれ、今までとは何か違う。今度の先生は大学院の学生さん。視覚と運動について研究する兼子さん。
兼子さん、「トラックボールで画面の点を動かし、ターゲットに当てる。マウスのような装置ですけど、これを使って画面に出ているカーソルをターゲットに持っていく」
黄色がスタート。緑がゴール。紫のマークは特別な装置で作った「アユム」の視線(見ている場所)。白い点を動かして、ゴールを目指すとき、目はどこを見ているのか記録する。
アユム君、上手だなあ。
チンパンジーは人間にとても似ている、でも同じじゃない。ふう〜ん。
チンパンジーの瞬間的な記憶力、一瞬で見きわめる力はアフリカの森で身を守るのに必要だ。僕たちの祖先はその力を封印して言葉を手に入れた。その先に何があるのだろう。
松沢先生が作業服に着替えた。
松沢先生、「アイちゃん、手伝って」
アイの前に白黒の塗り絵のような絵が置かれた。絵はチンパンジーの顔だが、目は片目しか描かれていない。
アイは塗り絵のような紙の上に無造作に線を引き始める。一体、これは。
松沢先生がアイが描いた絵に、これが言葉の先にある人間のもう1つの能力を示しているという。
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病気になったチンパンジー「レオ」のVTRが流れる。
下半身が麻痺状態になった。リハビリをしていても、健康なチンパンジーと同じ動作をする。
そして、僕はすばらしい答を見つけた。
袴田さん、「レオは何であんなにあきらめないのかと、率直な感想を受けたんですけど」
松沢先生、「まったく同じ感想を持ちました。どうしてこの子、絶望しないんだろう。その次に思ったのが自分が研究者として見てきたことと、つながるものがあると思いました。たとえば、こういう絵(塗り絵)を見たとき、まず、どこに目が行きますか?」
袴田さん、「目がない」
松沢先生、「実際、人間の3歳を越えた子だったら、ほぼここに目を描き入れますよ。おメメがない、なんて言いながら。だけど、チンパンジーにやってもらうと、何もないところに目を描き入れたというチンパンジーは一人もいなかった。要はチンパンジーは目の前にあるものを見て、目がある。人間は目の前にあるところから出発して、ないものを考える」
袴田さん、「想像力ということですか?」
松沢先生、「想像する力、それが人間をして人間たらしめている。要はレオ、そしてチンパンジー一般は今、ここの世界に生きている。今日、ここ。このまま寝込んでしまったらどうなるんだろう。という今、目の前にない遠い先のことで悩んだりしない。でも、人間は想像する力があるから絶望してしまう。でも、同じ想像する力があるから、たとえ今、ここの世界が悲惨なことも、きっと明るい未来がある、将来があるという希望を持つことができる」
袴田さん、「そうですよ。人間誰しもが希望を持てる生き物ということですよね」
松沢先生、「そうです。人間誰しもが、全ての人間が希望を持てる。それがチンパンジーが教えてくれた人間の心だと思います」

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『神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 フラー・トリー/著、寺町朋子/訳 ダイアモンド社 2018年発行
現代ホモ・サピエンス――時間を意識する自己 より
子どもが4歳くらいになると「自伝的記憶」として知られる機能の最初の段階が発達する。自伝的記憶はエピソード記憶と呼ばれることもある。4歳に満たない子どもは、次のように言われている。「時間の奥行きがあまりない世界に生きている。幼い子どもにとっては、現在が突出している。子どもの人生は、過去にも将来にもあまり踏み込んでいかない」
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子どもの自伝的記憶の発達に関する研究から、過去と将来の次元が同時に発達して認知的に統合されることが示されている。過去と将来が合わさって時間的自己意識を形成することで、人は過去を利用して将来を把握することができる。
このように過去と将来を結びつけることは、神経科学者のサー・ジョン・エックルスによれば、「過去に経験したことの記憶を活かして将来の計画を立てる人間の非凡な能力」を示している。エックルスは、さらにこう述べている。「私たちは過去ー現在ー将来という時間の枠組みのなかで生きている。人間が『今』という時間を自覚しているとき、この経験には、過去に起きた出来事の記憶だけでなく、予想される将来の出来事も含まれている」
さらに、「エピソード記憶」[自伝的記憶]のおもな役割は……過去の情報を与えて将来のシミュレーションに役立てることかもしれない」という主張もなされている。
一部の文筆家は、自伝的記憶の過去の次元だけでなく将来の次元にも言及してきた。T・S・エリオットの『四つの四重奏』という長編詩の冒頭では、それが簡潔に述べられている。
  現在の時間と過去の時間は
  いずれも将来の時間のなかに存在し、
  将来の時間は過去の時間に含まれる。
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ヒト以外の動物には、自伝的記憶があるだろうか? 多くの動物が将来に備え、食物を蓄えたり遠い場所に移したりするが、それは本能による移動的な行動だと考えられている。一部の研究者は、チンパンジーが過去を利用して将来の計画を立てる能力を持っていると主張している。なぜなら、チンパンジーは、あとで使うかもしれない道具を取っておくことが知られているからだ。それで、スウェーデンの動物園にいるサンティノという名のチンパンジーは、あらかじめ石を集めて積み上げておき、動物園が午前中に開園したら来園者に石を投げつけられるように準備していると言われている。
また、アメリカカケスが自伝的記憶を持っていると主張している研究者もいる。それは、アメリカカケスが単に食物を蓄えるのではなく、ほかの鳥がその貯蔵食物をいつ盗む可能性が高いのかを予測するからだ。より最近では、ラットが実験用の迷路を走っているときに脳の海馬が活性化することに基づいて、ラットが自伝的記憶を持っていると主張している研究者もいる。そのような行動が本物の自伝的記憶を表しているのかをめぐる議論は続いているが、研究者の大多数は、それらの証拠は曖昧だと見なしている。