じじぃの「科学・芸術_689_オプトジェネティクス(光遺伝学)」

エド・ボイデン: ニューロンの光スイッチ 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?time_continue=37&v=hupHAPF1fHY
Optogenetics can be used to treat various disorders in mice models.

もの忘れは無くなりイヤな記憶は消せるように!? 記憶のメカニズムが解明されマウスの記憶の書き換えにも成功している最新の脳神経科学を紹介 #又吉直樹のヘウレーカ Togetter
狙った神経細胞の活動だけをコントロールできる。
オプトジェネティクスでマウスの喉の渇きをコントロールしました。
https://togetter.com/li/1295738
又吉直樹のヘウレーカ!「“誰だっけ?”をなくせますか?」 2018年12月5日 NHK Eテレ
【出演】又吉直樹 【解説】奥山輝大(東京大学定量生命科学研究所准教授)
又吉が番組制作スタッフを覚えているかテストをしたところ結果は…。
人の名前や顔、話し声を聞いて「あの人だ!」とわかるのはなぜだろう?この時脳内で複数の神経細胞が活動していることがわかった。ノーベル賞受賞者利根川進さんの元で研究してきた奥山輝大さんは今、日本でマウスを用いた記憶研究にまい進する。記憶の「書き換え」の実験も行っていて、遠い将来は「誰だっけ?」がなくせるかも知れないと考えている。
マウスは、親しい個体よりも見知らぬ個体と積極的に接近する生得的な性質があるので、社会性行動をテストすることで、社会性記憶を調べることができます。
まず、社会性記憶の貯蔵脳領域を調べる目的で、光刺激でニューロンの活動を制御できる光遺伝学(オプトジェネティクス)を使って、海馬の様々な小領域の興奮阻害を行いながら社会性記憶をテストしてみました。すると、これまで記憶における機能がほとんど未知であったある領域の錐体ニューロンを興奮阻害した際に、親しい個体のことを思い出せないことが分かってきました。
オプトジェネティクスでマウスの喉の渇きをコントロールしました。
マウスの脳に光ファイバーを挿入し、神経細胞に直接光を当てる。するとマウスは喉が渇いたと感じ水が出るパイプへと一目散に向かう。しかし光をオフにするとマウスの喉の渇きはおさまる。
つまり、オプトジェネティクスによって記憶の操作ができるようになっている。脳の神経細胞に直接光を当てることで細胞の活動を操作でき、行動もコントロールできるのです。
http://www4.nhk.or.jp/heureka/x/2018-12-05/31/11127/1426026/
『つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』 理化学研究所 脳科学総合研究センター/編 ブルーバックス 2016年発行
記憶をつなげる脳 より
「記憶」は脳のどこにどのように蓄えられ、どのように思い出されるのでしょうか? そのメカニズムが明らかになりつつあります。なんと、記憶を人為的に想起させたり、経験していない記憶を作ることまで可能になってきているのです。
もし、海馬の一部にだけ存在するタイプのニューロンに対して、そのニューロンに特有のプロモーターを見つけて、そのプロモーターを使った遺伝子操作を行えば、目的のタイプのニューロンだけを遺伝子操作できます。これによって、記憶を担う細胞を特定することができるようになったのです。
この細胞タイプに特異的な遺伝子改変マウスを使うことによって、脳の記憶メカニズムの研究が大きく進展しました。たとえば、ある特定のタイプのニューロンだけに毒性のあるタンパク質を発現させると、そのタイプのニューロンだけが欠落した神経回路を海馬に作ることができます。そのとき、マウスの記憶がどのように野性型と変わるかを調べるのです。この技術を使って我々は、多くの種類の細胞からなる複雑な神経ネットワークに対して、それぞれの種類の細胞が、どのように記憶と関係するのかを詳しく探っていきました。
しかし、脳を研究するうえでは、これでもまだまだ大雑把なのです。脳研究には、もう1つ重要な点があるからです。それは「時間」です。
私たちの脳は、時々刻々と変化しています。とくに、記憶をターゲットにするのなら、ある出来事を経験し、記憶した前後でどのように脳が変化したかを探らなければなりません。脳の変化をリアルタイムに操作して観察しなければ、分かりそうにありません。
ところが、ここ10年の間に、そんな夢のようなことができるようになりました。それが、前述したオプトジェネティクス(光遺伝学)です。簡単にいうと、光でニューロンを操作する実験技術です。
オプトジェネティクスという手法は、米国にあるスタンフォード大学のカール・ダイセロス博士の研究チームが2000年初頭にその汎用技術を開発しました。オプトとは光のこと。ジェネティクスは遺伝学、ここでは光に反応するタンパク質を使った遺伝子操作です。
遺伝子操作の基本は、遺伝子を導入することによって、本来は持っていなかったタンパク質を細胞に発現させることです。オプトジェネティクスでは、光に反応するタンパク質であるロドプシンの遺伝子を使います。ロドプシンは、動物の視細胞で働くタンパク質として知られていて、光に反応して、分子の立体構造を変えます。じつは、古細菌ロドプシンの中に、イオンチャネルとして働くもの(チャネルロドプシン)が見つかったのです。
そして、チャネルロドプシンを特定のニューロンに発現させると、光を当てるだけで膜電位を上げ下げできるわけです。まさに、光でニューロンを操作する、ということになります。
光ファイバーを使ってチャネルロドプシンの発現している付近を照らせば、生きた個体のニューロンを興奮させたり、抑制したりすることができます。しかも、光刺激にニューロンが反応するまで、わずかに100分の1秒から20分の1秒という速さです。
オプトジェネティクスのメリットは、何よりも、反応が速いことと、反応が可逆的なことにあります。もっとも単純なノックアウトでは、生まれたときからずっと、ノックアウトした遺伝子が欠けたまま個体が成長することになりますが、オプトジェネティクスでは、好きなタイミングでニューロンの活動をオン/オフできるわけです。