じじぃの「科学・芸術_591_がんゲノム医療」

がんゲノム治療1 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hvq78pYZSPk

ワールドビジネスサテライト 「ノーベル賞山中教授生出演 iPS細胞 治療に活用へ」 2018年8月8日 テレビ東京
【司会】大江麻理子 【コメンテーター】伊藤元重 【ゲスト】山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長)
iPS細胞の注目度の高さを表しているのが市場規模です。
市場規模を見てみますと、急速に拡大しています。2030年には1兆円を超える規模です。この拡大の理由は再生医療だけではなくて、iPS細胞のもう1つの利用方法、新しい薬の開発に役立つと期待されているからです。
新薬開発
難病を含むiPS細胞を使って病気の細胞をたくさん作り、これを使って薬の効果を試すという目論見なのです。
大江麻理子、「このiPS細胞を使った新しい薬というのは、今進捗状況としてはどうなんですか?」
山中伸弥、「今世界中のたくさんの製薬会社が再生医療の薬の開発に取り組んでいる。ただ再生医療でiPS細胞は集約するので、すごく目立つが、薬の開発では裏方になります。そういった薬の開発にiPS細胞が使われたということに気づかない」
大江麻理子、「薬になるまでにはずいぶん時間がかかるんですね」
山中伸弥、「1つの薬に10年かかることもある。iPS細胞を使うことによって、10年で1つだったものを2つ、3つと新薬が作れるのではないかと期待されている。特に難病やがんの薬にiPS細胞が利用されることが多いのではないか」
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_160423
『「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで』 国立がん研究センター研究所/編 ブルーバックス 2018年発行
ゲノムが拓く新しいがん医療 より
がんの治療において、遺伝子を調べる適切な治療薬を選ぶ前提になる時代が到来しており、がんの遺伝子診断は病理的な診断の参考情報ではなく、治療に必須な情報になってきました。どんながんがあっても、最初の診断時に遺伝子を調べておけば、各症例の一両方針に対して重要な情報を提供できるようになります。候補遺伝子は1個とは限りません。候補遺伝子ごとに異常の有無を調べるのではなく、可能性のある異常をまとめてマルチ探索すれば、効率的であり治療上も有意義です。
このような系統だった遺伝子検査の実施を前提に行うがんの診断や治療を、「がんゲノム医療」と呼んでいます。塩基配列解読技術が進み、以前に比べると低コストでゲノム全体を調べられるようになってきたことが、ゲノム医療の実現を支えています。先行する米国では、しばらく前からゲノム医療が進んできました。たとえば、こんな具合です。病院でがんの組織を採取してスライドにし、医療機関向けに遺伝子検査サービスを提供する会社に送ります。検査会社では検体からDNAをとって、がんの発症や転移にかかわる数百の遺伝子に的を絞って次世代シーケンサー塩基配列解読装置)でまとめて調べます。そこで遺伝子の変異がみつかると、それに対応する分子標的薬、あるいは臨床試験中の薬の情報をレポートとして変装してくれるしくみです。この情報にそって治療が行われます。
わが国でも2017年の「第3期がん対策推進基本計画」にゲノム医療推進の方針が盛り込まれ、国レベルでの体制づくりが始まりました。ゲノム医療を受けられる医療機関の整備、ゲノム検査の実施、データベースの構築やAIの活用など、産官学が連携した取り組みが日本においても本格化しています。
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がんゲノム医療では、まず、患者の腫瘍ゲノムにがん関連遺伝子変異がなるかないかを調べて、それに対応する抗がん剤を選びます。適正な薬がマッチングした場合に、治療の対象となります。がんの原因となる遺伝子変異が発見されても、対応する抗がん剤がなかったり、あっても日本では許可されていない場合も少なくありません。これに加え、副作用や病状の問題で適用除外ななるケースもあるため、最終的に治療を始められるのは遺伝子検査を受けた患者の15〜20%前後と予想されます。
日本では、毎年新たにがんと診断される患者は100万人を突破しています。そのうちの約3割に化学療法が行われているので、がんゲノム医療の潜在的な対象者は30万人いることになります。残念ながら、現在の日本医は、30万人のがん患者の遺伝子配列を解析するだけの、コンピュータや人的リソースはありません。それゆえ、スタート時点では、治療の対象者となるのは、拠点病院(全国にある11ヵ所の医療機関)でゲノム医療を希望され、条件を満たした一部の患者さんに限定されます。
しかし、限定的とはいえ、がんゲノム医療が公的医療保険の対象となることの意義は極めて大きなものがあります。今後、技術革新が進み、遺伝子解析を安価でできるようになり、治療効果の高い分子標的薬や抗体医薬が開発されれば、その対象者は大きく拡大するでしょう。