じじぃの「科学・芸術_577_ブローデル『地中海』」

AMERICA BEFORE COLUMBUS 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xF02VN2qVgc

100分 de 名著 新春特番「平和論」 2016年1月2日 NHK Eテレ
【司会】伊集院光武内陶子 【朗読】長塚京三 【ゲスト講師】斎藤環『人はなぜ戦争をするのか』(フロイト)、水野和夫『地中海』(ブローデル)、高橋源一郎『寛容論』(ヴォルテール)、田中優子『日本永代蔵』(井原西鶴
18世紀を代表する思想家、ヴォルテールが、フランスのトゥールーズで発生したえん罪事件を受けて出版した作品。当時のフランス社会を支配していたカトリック派の不寛容さについて、批判した。
●『地中海』(ブローデル
12世紀頃から資本主義の萌芽が始まり、スペイン帝国オスマン帝国が地中海で向き合いその間にイタリアのヴェネチアジェノバ、ミラノ、フィレンツェなどが地中海経済を形作って繁栄していた。その世界がオランダ、イギリスなどが富むようになっていく。
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2016special/index.html
『見る読書』 榊原英資/著 ベスト新書 2018年発行
経済を学ぶ より
水野和夫は『資本主義の終焉と歴史の危機』(14年)で、「長い16世紀」という見方を持ち出します。
ふつう「16世紀」といえば1501年から1600年までですね。その前後に50年ずつ加えた、1451年から1650年までの200年が「長い16世紀」です。
名著『地中海』(49年)を書いたフランスの歴史学者ブローデル、その影響下に『近代世界システム』(74年)を書いたアメリカの社会学ウォーラーステインらに示唆された時代の切り方で、世界史的に大きな変化が起った200年をいいます。
この200年間を通じて、資本主義とグローバルゼ―ションが始まり、中世が終った――これこそが長い16世紀だ、というのです。
長い16世紀で注目すべき転換点は、1611〜21年にイタリアのジェノバで起こった利子率(金利)の2.0%割れ(19年には1.125%まで低下)。かつてなかった衝撃的な出来事だったので、「利子率革命」とも呼ばれています。
この低金利が起ったのは、東地中海や西のグラナダイスラム勢力に押えられた中世ヨーロッパが、地中海の”出口なし”状況で空間が広がらず、飽和状態になってしまったから。
しかし、1492年のコロンブス以降には新しい空間が急速に膨張。フロンティア(辺境)が発見されたことで投資機会が増大し、利潤率も高まって、株式会社を基礎とする資本主義が勃興していきます。
こうして「長い16世紀」は、中世を終わらせ、近代をスタートさせました。封建社会は崩壊し、国民国家が成立しました。
経済が完全に行き詰まったからにはシステムの一新が必要で、それにいちはやく成功したオランダ、イギリス(どちらも東インド会社を設立)が次の時代を牽引していきます。
長い16世紀は、いま世界が渦中にある「長い21世紀」(1970年〜)とよく似ているのだ、と水野和夫は指摘します。21世紀は始まったばかりですが、20世紀からの動きが22世紀にもなっても続くはずだから「長い21世紀」と名付ました。
では、「長い16世紀」と「長い21世紀」は、どこが似ているのでしょうか?
やっぱり、利子率です。400年後のいま日本で起こっている超低金利は、先進諸国の低金利とあわせて、地中海の利子率革命に匹敵するものなのです。
日本の長期国債10年物の金利は、金融危機の1997年に2%割れとなり、2011年には1%を割り込んで、16年にはマイナス金利にすらなりました。いまは0.1%にも達しない、ほとんどゼロ金利です。
アメリカ、イギリス・ドイツの長期金利も、08年のリーマンショックのとき2%を下回りました。
長い16世紀には、地中海から世界の海に出ていって新しいフロンティアを開拓し、新しい資本主義を始めたのでしたね。
「ゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレ時代」を迎えた資本主義のフロンティアは何か、といえば「電子・金融空間」。
でも、ITを駆使した金融取引でいくら時間を切り刻んでいっても意味はない。だから資本主義が終焉を迎えている。、というのが水野和夫の説なのです。
資本主義は行き詰った。なぜかといえば、フロンティアが消滅してしまったから。
これが水野和夫の主張のエッセンス、彼の本の「さわり」です。とてもシンプルですが、シンプルだけに説得力があります。