じじぃの「科学・芸術_575_サルトル『嘔吐』」


100分 de 名著 サルトル実存主義とは何か』 2015年11月4日 NHK Eテレ
【司会】伊集院光武内陶子 【語り】小口貴子 【ゲスト講師】海老坂武(フランス文学者)
●第1回 実存は本質に先立つ
人間の本質はあらかじめ決められておらず、実存(現実に存在すること)が先行した存在である。
だからこそ、人間は自ら世界を意味づけ行為を選び取り、自分自身で意味を生み出さなければならない」と高らかに宣言したサルトルの講演は、その後世界中で著作として出版され、戦後を代表する思想として広まっていた。その第1回は、「実存主義とは何か」を読み解き「根源的な不安」への向き合い方を学んでいく。
「人間とは〇〇である」を疑うのが実存主義
人間は自らの決断によって人生を作り上げていかなければならない。
例えば、ペーパーナイフは髪を切る道具としての「本質」が決められており、そこからペーパーナイフは金属などで作られて存在する。一方、人間とペーパーナイフは異なる。人間は真っ白の中から未来に向けて自分で自分を決定する。選んで、存在する。人間においては「実存」が「本質」に先立つ。
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/48_jitsuzon/index.html
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
『嘔吐』 (1938年)ジャン=ポール・サルトル より
実存主義を代表する作品である『嘔吐』は、フランスの哲学者ジャン=ポール・サルトル(1905年〜1980年)の最初の小説である。サルトルは1964年いノーベル文学賞に選ばれたが、これを辞退した。
ある海辺の町を舞台に、内省的な歴史学者が、自分にのしかかる周囲の事物や環境によって知的生活も精神の自由も損なわれという考えに取りつかれる。その結果として吐き気が生じ、生気を失うほどの圧倒的な不安と自己嫌悪に襲われる。人生の意味を求める格闘は自分のなかだけでなされるため、人との結びつきはむなしいと主人公は考えるようになる。結局、現実が自分の人生に無関係であることは解放を意味すると気づく。というのも、付随する責任を引き受けさえすれば自分なりの人生の意義を自由に創出することができるからだ。