じじぃの「科学・芸術_304_小説『変身』」

FRANZ KAFKA 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=bVjt7GF7zMs&feature=related
100分de名著 カフカ 変身『しがらみから逃れたい』 Part1 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SMOZoxH7ZVM
 フランツ・カフカ 「変身」

100分 de 名著 名著12 カフカ 変身 「しがらみから逃れたい」 2012年5月2日 NHK Eテレ
【司会】伊集院光島津有理子 【ゲスト講師】川島隆(滋賀大学経済学部特任講師)
「変身」はカフカの人生を投影した作品であると同時に、普遍的な人間の真実をついた作品である。
生前、カフカは保険協会のサラリーマンとして働いていたが、本当は小説を書くことに集中したいと思っていた。そのため、外に出かけて働くのはたいへんな苦痛だった。実は「変身」の主人公・グレーゴルが虫になり、部屋に閉じこもるのも、カフカの出社拒否願望の現れと解釈できる。第1回では、世間や家族のしがらみから逃れて自由になりたいと願う、カフカの心を解き明かす。
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/12_kafka/index.html
フランツ・カフカ村上春樹の原点 SILENTSHEEP*NET
目覚めると自分の身体が虫になっていたという『変身』、『審判』や『城』といったカフカの代表的作品にみられる不条理の世界は、絶えず不安を抱えながら生きた彼の出目や時代が、色濃く影を落としているのだろう。
最近の日本でいうと村上春樹氏の『海辺のカフカ』を想起する人も多いのではないかと思う。
http://silentsheep.net/travel/czech/22-kafka.html
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
グレゴール・ザムザは、ベッドのなかで自分がおぞましい虫に変わっているのに気づいた 『変身』(1915年) フランツ・カフカ より
実存主義の主たる命題は、不安が人間の感情や思考の礎となっているという考えであり、自己の存在の不条理と無意味さを認識するとき、こうした不安が生じる。実存主義は19世紀の北欧の哲学に端を発するもので、中心となる概念はデンマークの思想家セーレン・キルケゴールが定義した「アングスト」、つまり不安である。フランツ・カフカは、このキルケゴールの作品から多くを学んだ。
カフカの不穏な小説『変身』では、混乱と不安が劇的な暗喩で提示され、冷淡な登場人物たちの眼前で突きつけられる。グレゴール・ザムザが目覚めると害虫になっていた事態は疑いようのない不幸であるが、この悲劇的な中編の核となっているのは、肉体の変化を強いられたことよりも、ザムザの不条理な苦境に対する家族や知人の反応である。
グレゴールはまったくの無能になり、働くことも、苦しい家計を支えることもできなくなる、家族は心配よりも面倒と嫌悪をあからさまに表現し、虫になったグレゴールはおぞましい謎の物体として扱われる。この一家が体現するいわゆる合理的な文明社会の対応には人間味なく、ぞんざいである。実存主義の哲学者であり、作家でもあったジャン=ポール・サルトルは「地獄とは他人のことである」と言った。このことばが、窮地に陥った家族の異様なふるまいを完璧に説明している。
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カフカの小説の主人公は、不安を克服することがない。代わりに、どんな異常な状況のもとでも。奇妙な問題に対してなじみのある手法で解決しようと模索する。『審判』や『城』などの長編小説では、幾通りにも解釈可能で、けっして果されることのない探索を描いている。『変身』は非論理的で悪夢のような物語であるが、謎を解いて探索を終わらせようという心理すら失われていることから、新しい出発点(さらに「実存的」な方向へ進む)だったと言える。物語の最後に、グレゴールは希望を捨てることで、一種の神秘的な体験をする。
興味深いことに、カフカはみずからを実存主義者と見なしていなかったが、実存主義におけるふたりの重要人物、キルケゴールドストエフスキーの影響を受けたことは認めている。カフカの死後、サルトルカミュカフカ実存主義の系譜に位置づけた。