じじぃの「科学・芸術_559_高木仁三郎『プルトニウムの恐怖』」

高木仁三郎:あの人に会いたい 動画 YouTube
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22年で250日間しか稼働せず、かかった額は……。廃炉される「もんじゅ」驚きの数字たち 2016/09/21 buzzfeed News
●これまでに投じた予算:約1兆2千億円
建設費は約5900億円。もんじゅの出力は28万キロワットだが、一般的な原子力発電所(出力100万キロワット)の建設費の約2倍だ。
日本原子力研究開発機構はこの理由について、もんじゅが「研究開発の中間段階の原子炉」であり、「経済性の見通しを得ることではなく、高速増殖炉で安定した発電ができることを実際に確認することに主眼があった」ため、としている。
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『生きるための101冊』 鎌田慧/著 岩波ジュニア新書 1998年発行
プルトニウムの恐怖』 岩波新書  高木仁三郎 より
第二次世界大戦の色濃い1940年の暮のことであった。カリフォルニア大学のシーボルトケネディとワールの3人は、ウランの原子核加速器で高速に加速した重水素原子核をぶつける実験を繰りかえしていた。その反応生成物のなかに、これまでに知られているどの元素とも性質の異なる放射性物質が存在することを、3人は確かめた。これが原子番号94番の元素、プルトニウムと人類の最初の出合いであった。元素の発見といっても、天然にある元素を岩石などから抽出して発見するというこれまでの「発見」と違って、実験室で人工的に合成し、それを「新元素」と設定するという、新しいタイプの「発見」である。」
プルトニウムは、冥王星(プルート)にちなんで、名づけられた。この「冥土の王様=地獄の親方」が、5年後、長崎を焦熱の地獄にして、8万人もの命を奪う。なお、その3日前、広島に投下されたのはウラニウム(天の王様)原爆だった。
原発は、これら大量殺人の技術によってつくられた原爆を「平和利用」したものにすぎない。「平和」というのは、レトリックで、「商業利用」ということでしかない。しかし、危険性についてはおなじことなので、ますます盗難(核ジャック)の軍事転用にたいする恐怖が強まり、極端な秘密と警戒体制におかれている。「平和」と「厳戒」を切りはなせないのが、原発のエッセンスである、「プルトニウム」社会の矛盾である。
この矛盾を、「ファースト的取引」といったのは、アメリカの原子力推進者のワインバーグ博士だった。原発は「悪魔(メフィストフェレス)の名前とともにはじまり、「パンドラの箱」をあけた、ともいわれている。
原発は緩慢な核分裂によってエネルギーを発生させて電力をつくる装置だが、内部にもっとも危険な物質を充満されて運転され、それがふえる一方となる。使用済み核燃料は再処理工場にはこばれ、化学処理にとってプルトニウムが取りだされるのだが、この設備は「何百キロメートルにもおよぶパイプで何百もの反応槽やタンクが結ばれた複雑なシステムとなる。これらの溶接ヵ所などに穴あきが発生しやすい」というもので、強い放射能が洩れやすい。
すでに、日本でもプルトニウムを原料にして発電する、という高速増殖炉の開発は破綻した。さらに問題なのは、核廃棄物の最終処分であり、これも方針がきまっていない。
巨大科学は、市民と専門家の距離をひろげ、専門家同士でも技術の細分化によって、話が通じなくなる、という矛盾も指摘されている。高木さんは、エネルギーを大量消費しない、人間的な、解放された社会を考えることを提案している。