じじぃの「科学・芸術_529_船舶解体・アスベスト被害」

バングラデシュで解体されている廃船

船舶解撤実施国別の実績推移

バングラデシュ 船の墓場で働く 2014/4/21 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
外洋を航海する船は、解体するときのことを考えて建造されるわけではない。過酷な環境や自然の猛威にも耐えるように設計され、アスベストや鉛などの有害物質も使われている。
こうした船を先進国で解体すると、規制が厳しく費用がかさむため、世界の船の大半は、人件費が安く規制のゆるやかなバングラデシュやインド、パキスタンといった国々で行われている。
業界の体質を改善する動きもあるが、国によってまちまちだ。インドでは労働者の安全確保や環境保護が、以前よりも厳格に義務づけられるようになっている。
だが、2013年に194隻もの船舶が解体されたバングラデシュでは、解体は今も汚れ仕事で、その現場は危険きわまりない状態のままだ。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140421/393972/
『リサイクルと世界経済 - 貿易と環境保護は両立できるか』 小島道一/著 中公新書 2018年発行
中古品や再生資源の越境移動にともなう問題 より
1980年代半ば、先進国から発展途上国へ有害廃棄物が廃棄処分のために送られ、投棄されて、環境汚染を引き起こす事件が相次いだ。健康被害が顕在化した事件も少なくない。たとえば、欧州から送られた有害廃棄物がナイジェリアのココで投棄され、周辺住民や投棄場所の土地の所有者が亡くなるなどの被害がでた。こうしたことから、有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条卓が作られることとなった。
1990年前後には、廃棄処分目的の廃棄物の越境移動だけではなく、リサイクル目的で送られた有害廃棄物でも問題が発生していることが明らかとなった。たとえば、前章の雑品スクラップのところで言及した、台湾に1980年代に輸出され不適切にリサイクルされた廃電気機器であり、自動車やオートバイで使われていた廃鉛バッテリーなどである。
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船舶の解体リサイクルは、現在、バングラデシュやインド、パキスタン、中国で盛んである。かつて、日本は世界でもっとも船舶を解体していた国であったが、1960年代半ばに台湾が日本を追い抜いた。その後、中国や南アジア諸国へと解体の盛んな地域が移ってきている。船舶には大量かつ良質の鉄が使われており、解体、リサイクルすることで、インフラ建設などに必要な鉄を入手できる。
しかし、船舶解体や鉄のリサイクルの過程で環境汚染が発生している。船舶には、火災が起った場合に燃え広がらないよう、アスベストなどの難燃剤が使われる。また、機械類なども多く、燃料を含めて油が使われている。船舶の解体の際に、アスベストが飛散したり、油が海洋を汚染するといったことが起きている。台湾の研究者たちは、台湾で船舶解体に従事した4427人の癌(がん)の発症などを調査し肺癌などの発症があきらかに高くなっていること、また、アスベストに接している仕事ほど、癌の発症が早い時期に起きていることを明らかにしている(Wu et al.,2015)。