じじぃの「科学・芸術_516_環境ホルモン・デッド・ゾーン」

NHKスペシャル 環境ホルモン汚染 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=s2Ro03Bi7dE
メス化する自然 環境ホルモン汚染

メキシコ湾のデッド・ゾーン

メス化する自然―環境ホルモン汚染の恐怖 デボラ キャドバリー(著) 1998/2 Amazon
メス同士で巣をつくるカモメ。ペニスが極端に小さいワニ。
世界各地で見られる野生生物のメス化現象。精子数の減少が報告されている人間も例外ではない。人類存亡の鍵を握る環境ホルモンの真実!

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『人類滅亡ハンドブック』 アローク・ジャー/著、長東竜二/訳 Discover21 2015年発行
化学汚染 より
われわれは、世界をゴミ箱のようにあつかっている。都市の空気は車やトラックの噴煙で満たされ、工場の煙が放出する重金属や微粒子は、強力な気流に乗って世界中に広がっている。農場では肥料や農薬が好き勝手に使用され、その大半は地中に染み込むか、川に流出するかして、生命のバランスを崩している。
1930年から2000年までの間に、人造の化学物質の年間生産量は100万トンから4億トンに増加している。過去の数十年だけでも、われわれは8万個近い新たな化学物質をつくりだし、おそらくは毎日のように「出会っている」にもかかわらず、そのほとんどは目で見ることができない。
たとえば、「DDT」を見てみよう。長期的に環境内に留まり、簡単には分解しない生物濃縮性化学物質だ。この種の物質は、動物の組織内に蓄積され、食物連鎖を通じて伝えられたり、胎盤や授乳を通じて次世代に受け継がれたりする。
DDTは、殺虫剤として第2次世界大戦の前後に導入され、蚊のような病気を媒体する生命体と戦うための兵器として、農業や公衆衛生の世界で広く使用されるようになった。数十年後、地球の自然風や水流によって広がり、渡りをする鳥たちを回遊する魚たちによって、数千マイル先に運ばれたこの物質は、環境内のあらゆる場所にはこびっていった。
DDTは都市の大気、野性の生物、さらには南極に生息するアデルペンギンのなかからも見つかっている。また、ヒトの脂肪組織にも蓄積しはじめていた。現在この物質は、世界の生物全般に有害な影響をもたらすという理由で、使用が禁止されている。
もう1つの厄介な汚染物質が、ホルモンに類似した環境ホルモンだ。
「テストステロンのようなホルモンの分子構造をみると、炭素が輪をつくっていますが、ポリ塩化ビフェニル(PCB)のような農薬の多くに見られるのも、まさしくそうしたパターンなのです」と、アルバート大学の生物学教授、アンドルー・デローシャーは語る。
動物たちは、進化の過程で体内に侵入する自然発生的な化学物質に対処する術を身に着けてきた。だが、人造の化学物質が開発され、環境に解き放たれるペースの速さは、壊滅的な影響をおよぼしている。「こうした人造の化学物質に、対処できる生命体はいません」とデローシャーはいう。その結果、それらの物質はシロクマやパンサーのような最上位捕食者の体内に蓄積されるのだ。
肥料もやはり大きな汚染源だ。作物を育てるために、肥料は大量の窒素とリンを含んでいるが、実際に作物が消費するのはそのごく一部にすぎない。残りは川や海に漏れ出し、そこでは、急増した窒素が藻類を大量に繁殖させる。分厚い藻で覆われた水域の酸素は激減し、ほかの植物を死滅させ、魚や海棲哺乳類を遠ざける「デッド・ゾーン」ができあがるのだ。
動物の体内で、農薬や汚染物質の濃度がある一定線を超えると、その動物はすぐさまに死んでしまう。もっと少量でも、繁殖力を弱めたり、成長を妨げたりすることがある。
生理的な面から見ると、動物の生体機構は汚染物質の分子と、自分自身のホルモンの分子を見分けることができない。おかげで、侵入する分子に対処する自然防御機能が過度にはたらきはじめ、汚染物質以外の分子も破壊してしまう。その結果として不均衡が生じ、ホルモンは成長や発育を調節しているため、否応なく身体に異常が生じるのだ。