じじぃの「科学・芸術_508_ポスト・トゥルース(真実後、脱真実)」

Trump post truth politics 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HBmPsZ0lITc

ポスト・トゥルース コトバンクより
世論形成において、客観的な事実より、虚偽であっても個人の感情に訴えるものの方が強い影響力を持つ状況。事実を軽視する社会。直訳すると「脱・真実」。
英国・オックスフォード英語辞典が「2016 Word Of The Year(2016年を象徴する言葉)」として選んでいる。
16年は、英国のEU離脱(ブレグジット)や米国大統領選でのトランプ勝利など、事前の予想を大きく覆す出来事が相次いだ。これらの投票において、大手メディアが発信した事実を基にしたニュースよりも、事実誤認や裏付けのない情報を基にしたフェイクニュースの方が多くの人の感情を揺るがし、投票行動を大きく左右したという指摘が出たことなどにより、英国メディアでの「ポスト・トゥルース」の使用頻度は前年の約20倍に増えたという。フェイクニュースが増えた背景には、既存のメディアに対する信頼度が低下していること、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で簡単かつ急速に情報が拡散しやすい状況になったことなどが挙げられる。

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『知らないと恥をかく世界の大問題』 池上彰/著 角川SSC新書 2017年発行
ポスト・トゥルース」の時代へ より
2016年末、ドイツの首都ベルリンでデモが起こりました。クリスマス市(いち)にトラックが突入したテロ事件で、寛容な難民政策を主導したアンゲラ・メルケル首相への批判が噴き出したのです。
ドイツでは2017年9月に連邦議会選挙があり、メルケル首相が首相4期目を目指して出馬する意向を示していますが、それまでに風向きがどう変わるのか。
ブレグジットにしても、トランプ旋風にしても、ポイントは世界の政治を動かす偽ニュース(フェイクニュース)の存在です。
象徴的だったのが206年の「今年の単語」に「ポスト・トゥルースpost-truth)」が選ばれたこと。世界最大の英語単語辞典、オックスフォード英語辞典は2016年を象徴するワード・オブ・ザ・イヤーに「ポスト・トゥルース」を選びました。
ポストとは、「ポスト・モダン」などというように、〜より後とか、その先にという意味。トゥルースは真実です。直訳すると「真実の先」。日本的に訳すのは難しいのですが、意味としては「世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況」となります。
簡単に言い換えれば「事実でなくても、人の心をゆさぶるものをつい信じてしまう」ということでしょう。メディアが事実を伝えても、人々の心には響かない。それよりは、自分が信じたいものを信じてしまう。
アメリカの選挙中にインターネット上で、「ローマ法王がトランプ支持を表明した」というフェイクニュースが流れました。そもそもローマ法王はトランプ候補が「メキシコとの間に壁をつくる」と訴えると、それを批判し「真のキリスト教徒は壁をつくるのではなく、橋を築くべき」と発言していました。冷静に考えるとローマ法王がトランプ氏を支持するわけがないのです。
ところが「支持した」とネットで拡散すると、真実を超えて人々の心をゆさぶる動きが出てしまいました。
このフェイクニュースを流したのはマケドニアの10代の若者でした。彼らは閲覧者のクリックによる広告料目当てで、小遣い稼ぎのためにやったそうですが、これが大統領選挙に大きな影響を与えたとしたら、どうでしょうか。彼がそれを書いたために、アレッポで大勢の市民が死んだかもしれない。そんな推測も成り立つのです。
そして伝える側も、こうしたフェイクニュースとどう向き合えばいいのか、メディアも試されているのです。