じじぃの「科学・芸術_453_寄生生物・トキソプラズマ」

【閲覧注意】世にも恐ろしい寄生虫(10)「トキソプラズマ 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=t3z6CYtJq_E
人間の脳に侵入したトキソプラズマ原虫

サイエンスZERO 「寄生生物が世界を変える!」(追加) 2018年6月24日 NHK Eテレ
【司会】小島瑠璃子、森田洋平 【ゲスト】永宗喜三郎(国立感染症研究所 寄生動物部 室長)
寄生生物が世界を変える! 寄生虫などが持つタンパク質を使い、医療や農業に役立てようという研究が世界中で始まっている。
例えば、クローン病など自己免疫疾患の難病には豚に寄生する豚べん虫の卵を投与し症状を軽くする臨床試験が効果をあげ注目を集めている。豚べん虫が患者の樹状細胞やT細胞に働きかけ症状を抑えるメカニズムなどをわかりやすく解説する。がんやアルツハイマー病の予防に役立ようとする研究も行われれている。
トキソプラズマという寄生虫はほとんどの人間を含めた哺乳類に感染する。樹状細胞に感染をするが、その時にがん細胞を攻撃するT細胞を活性化するという特徴を持つ。
アメリカのダートマス大学デビット・J・ビジック教授は、トキソプラズマによるワクチンで、免疫療法の発展が期待できるとしている。
遺伝子操作で体内で増殖しないトキソプラズマが作り出されている。3年目後に治験に入る予定だという。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018087539SA000/index.html
トキソプラズマが人の脳を操る仕組み 2013.01.23 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。
トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳を“コントロール”しているというのだ。 トキソプラズマは通常はネコに寄生する。巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7449/
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』 キャスリン・マコーリフ/著、西田美緒子/訳 インターシフト 2017年発行
ネコとの危険な情事 より
電話の向こうから響いてくる声には強いチェコ訛りがあった。声の主はプラハにあるカレル大学の進化生物学者、ヤロスラフ・フレグルだ。彼はとても不思議な話をし、自分の心を自分で完全にコントロールできていないと確信していた。外から侵入した力の行動を駆り立てているように感じることがたびたびあると言うのだ。その力というのはネコの寄生生物である単細胞の原生生物、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)で、フレグルは自分がどうやってその生物と接触したのかわかっていない。その種はネコの体内でのみ有性生殖でき、糞に混じって外に出るため、ネコのトイレの掃除が人間へのごく一般的な感染経路になっている。どんな方法であれトキソプラズマは実際に自分の脳に入り込んでおり、それが自分の性格を変えて危険嗜好を強めていると、フレグルは私に行った。さらに自分の研究から、この寄生生物は何百万人もの人々の脳をいじくりまわし、交通事故、総合失調症などの精神疾患、さらに自殺まで増やしている可能性があると考えるようになったようだ。そして、トキソプラズマが人間に与えている害をすべて合わせれば、「マラリアよりたくさんの人を殺しているかもしれない。とくに先進工業国では、たしかにそうだ」と話す。
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そこで科学論文を徹底的に調べることにした。文献によれば、ネズミの仲間は一般的に、食べものをあさりながら地面に落ちているネコの糞に触れてトキソプラズマ原虫に感染する。そのネズミがネコに食べられると、ネコの腸内でこの微生物が繁殖し、糞といっしょにまた地面に落ちる。こうしてトキソプラズマ原虫はグルグルまわっている。さらに掘り下げて文献を読み込むうちに、イギリスのウィリアム・M・ハチソンという科学者による「感染したネズミが異常に活発になる」という1980年代の観察結果を知り、フレグルの胸は高鳴った。ネコは素早く動くものに引かれるから、寄生生物がネズミをいつもより多く走りまわるように仕向けているのではないだろうか。ハチソンはそれに加えて、感染したネズミは見慣れた環境と新しい環境の区別をつけにくくなったという報告もしていた。フレグルの考えでは、これももしかしたら、ネズミをネコに食べさせようという寄生生物のもうひとつの企みの可能性がある。さらに不気味なことに、チェコ寄生生物学の父と呼ばれて尊敬されているオットー・イロヴェツが1950年代に、総合失調症の患者はトキソプラズマ原虫に感染している割合が高いと伝えていた。フレグルはその理由にについて、「寄生生物にとっては人間の脳とネズミの脳の区別がつかないから、私たち人間の行動も変えているかもしれない」と考える。
フレグルがさらに調べると、世界中の人口のおよそ30パーセントの人々は頭にトキソプラズマを住まわせていることが明らかになった。ただし大半はその事実をまったく知らない。そうなると、もしフレグルの抱いた疑いに何らかの根拠が見つかったなら、健康に及ぼす影響はとてつもなく大きいことになる。一方、人間への感染経路はネコのトイレの掃除だけとは限らないこともわかってきた。野菜をよく洗わずに食べても、庭いじりのあとで手洗いをおろそかにしても、感染することがある。草を食む家畜もからトキソプラズマ原虫を体内に取り込んでしまうことがあり、急速に複製されていくこの生きものは動物の脳に移動するだけでなく、厚い殻をもつシストとなって筋肉にも潜り込む。それは私たちが食べる肉の部分だ。そのために加熱が不充分な牛肉やラム肉を食べる人は感染のリスクが高まる。「血がしたたる」という意味の「セニャン」(レア)で肉を食べるのが好きな国民が暮らすフランスでは、感染者は50パーセントを超えている(米国での感染の割合はずっと低く、概して12パーセントから20パーセントだと聞けば、米国人は喜ぶにちがいない)。それに加えてネコの糞で汚染された水を飲んで感染することもあり、それは発展途上国に一般的で、そうした地域ではなんと90パーセントもの人々が潜伏感染している。