じじぃの「科学夜話・人間を操るウイルスと細菌?絶滅の生物学」

Insidious wasp gets ahead by tunneling through host's head

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0wjWJseml7A

宿主の頭から姿を現すクリプトキーパーを描いたイラスト

新種の寄生バチを発見、宿主を操り頭を食い破る

2017.01.27 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
 新たな寄生バチが発見された。その悪魔のような生態から、混沌を司るエジプトの神セトにちなんでEuderus setと学名が付けられた。通称はクリプトキーパー。“棺の番人”という意味だ。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012700028/

『もうすぐいなくなります――絶滅の生物学』

池田清彦/著 新潮社 2019年発行

棲息域が小さい生物はつねに絶滅の危機に瀕している より

病原体や細菌は、彼ら自身が生きやすくなるために、ホストを操るというようなことが最近わかってきています。
たとえば、トキソプラズマという寄生性原生生物がいます。ヒトなどの恒温動物に寄生して、トキソプラズマ症を引き起こす原虫です。
トキソプラズマはネコの腸の中でのみ有性生殖をします。つまり、ネコに食べられないと生活環が回らないのです。だから、トキソプラズマは何とかして感染した動物をネコに食べさせようとします。それで。ネズミに寄生したトキソプラズマは、ネズミをネコに食べやすくするため、ネズミの脳を操って明るい所に出ていかせたり、危険を恐れなくさせたりするのです。そういうネズミは、ネコのそばに行っても逃げないので、ネコに食べられやすくなります。そして、ネコの腸の中に入ったトキソプラズマ有性生殖して、特殊な胞子になって便とともに対外へ排出されるのです。それを人間が触るなどして、トキソプラズマが口から入ると、人間がトキソプラズマに感染する、というわけです。
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自然界の食物連鎖は複雑です。最も強いはずの連鎖の頂点の肉食動物でさえ寄生虫に操作され、その寄生虫にもさらに寄生虫がくっついている(重寄生)という場合もあるのですから。
Euderus setという学名を持つ寄生バチは、英名でクリプトキーパー(棺の番人)と呼ばれています。ごく小さなハチで(オスは体長1.2~1.6ミリ、メスは1.6~2.3ミリ)、2017年に北米のフロリダ産の標本に基づいて記載された新種です。新種といっても、人間が知らなかっただけであって、もちろん、人間が出現するよりも以前から生存していたハチだと思います。
クリプトキーパーは米大陸南部に広く分布するらしく、オークの幹の樹皮下の虫瘤(むしこぶ、ゴール)を作るタマバチの一種をホストにします(このホストも体長が2ミリ余の小さなハチです)。タマバチの卵が産み付けられたオークの樹皮下は、このタマバチに操られて、異常な細胞分裂を起こして膨れ、いわゆる虫瘤になるのです。幼虫は虫瘤を食べて大きくなり、この中で羽化したハチは虫瘤に穴をあけて外に飛び出してきます。クリプトキーパーはこの虫瘤を見つけてその中に卵を産み付けます。孵化した幼虫は、ホストのハチの幼虫に取り付いて、ホストを操り、ホストは通常より早く成長して、虫瘤の表面に穴をあけて出てこようとするのですが、穴が小さすぎて、頭を突っ込んだまま出てこられなくなってしまいます(自分の頭で穴を栓をしたまま動けなくなってしまうのです)。この行動もまたクリプトキーパーに操られているものと考えられています。
オークの木に寄生するタマバチはオークの木を操って虫瘤を作らせ、このタマバチに寄生するクリプトキーパーは、このハチを操って自分の生存に有利なように行動を変えさせるわけで、寄生も二重、コントロールも二重になっているのです。
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私たちの体の中に入っているいろいろな生物も、人間を操作し、自分たちが生きやすいようにしているのではないかと思います。たとえば、腸内細菌もそうです。人の食べ物の好みは時に変わりますが、それは、腸内細菌が最も必要としているものを食べさせようとしているからなのではないかという研究者もいます。人間が自分の意思で食べていると思っても、じつはそれは腸内細菌に操作されて食べさせられているのだ、ということです。私は毎晩かならず酒を飲みますが、私の腸内細菌はきっと酒が好きなのでしょう。
かつては、腸内細菌の数は100兆ほどと考えられていましたが、最近ではもっと多く、1000兆とも言われています。なお、人間の細胞は37兆個しかありません。私たちは細菌の住居に過ぎないのかもしれません。

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どうでもいい、じじぃの日記。
「人間が自分の意思で食べていると思っても、じつはそれは腸内細菌に操作されて食べさせられているのだ、ということです」
最近の研究から、人の性格は遺伝子と環境の比率が約50%ずつ影響があると言われています。
でも、酒を止められないとかは腸内細菌というのもあるのかもしれません。
コロナウイルスが、人を不安におとしめているということもありますよね。