じじぃの「科学・芸術_431_ヒトの秘密・環境破壊と文明の危機」

ジャレド・ダイアモンド 文明崩壊は何故起こるのか 動画 ted.com
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Jared Diamond The Third Chimpanzee

Destruction of coral reefs

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 「11 文明崩壊 人類史から学ぶもの」 2018年3月16日 NHK Eテレ
今回は環境破壊と文明の危機について。
これまでヒトは、気づかないうちに生態系を破壊し、資源を使い果たし、自らの文明を崩壊させたこともあった。地球規模の環境破壊と文明の危機を避けるために、私たちは過去の失敗から何を学べばいいのか。ダイアモンド博士が、進化の視点から解き明かす。
ヒトはさまざまな形で環境を破壊しました。
動物の移動や森林の伐採などです。森林伐採の破壊としては太平洋のイースター島の例が有名です。
かつてこの島には世界中で最も背の高いヤシの木の森がありました。そこに今から1000年ほど前、ポリネシア人が到達。彼らはヤシの木を次々の切り倒し、庭に植えたり、有名なイースター島の像を9メートルの高さにまで立ち上げるのに使ったのです。
そして、イースター島の人々は島の木のほとんどを伐採。島の大地は雨風に浸蝕されてしまいます。彼らは自然肥料を持っていなかったので、土地がやせていきました。農作物を失った彼らは島の鳥を食べ尽くしてしまいます。
彼らは部族のシンボルである像を運ぶことができなくなり、島民同士で争うようになります。
彼らは戦争に明け暮れ、相手の部族の像を引き倒し、そして彼らの文明は崩壊してしまったのです。
授業の合間、博士は生徒たちと語り合います。今日は高校を卒業したばかりの17歳ジョン・カー君。
博士 君はすごく勉強熱心だね。何が君の興味をかきたてるんだろう。
ジョン 僕は学校での2年間、生物学の他にインターネットを通して環境科学を学びました。博士が今日の授業でお話していたことがあっどこかで読んだことがあると思ったのです。僕は狩猟採集の生活をして暮らしてみたいんです。なぜなら、自分で道具を作り環境に悪い影響を与えずに生きていくのが理想だからです。僕は牛肉など赤肉を食べるのを止めようと思っています。肉を生産する際に環境に悪影響が出るからです。現代の大規模農業や消費社会では動物を自分の手で殺してその命をいただいて生じる人間本来の感情を失っているんじゃないかと思います。動物や環境にとっていいことをして生きていきたいと思います。
現代の環境危機
博士 現在、地球上では気候変動が起きています。そしてそれは人間が起こしているものです。何が気候変動を起こしているのかご存知ですか?
ジョン 二酸化炭素とメタンの排出。
博士 特に二酸化炭素による地球温暖化異常気象をもたらします。暑くなるだけでなく、寒さが続いたり、暴風雨やハリケーンは頻繁します。化石燃料の消費と地球温暖化は気温上昇と干ばつ以外に何をもたらすでしょうか?
リコ 海の酸化。
博士 そうです。二酸化炭素が海に融けこんで海水を酸化させ、それがサンゴ礁を溶かしてしまう。ほとんどの魚にとってサンゴ礁は餌が豊富な場所です。酸化の他に海面上昇の問題もあります。気温が上昇することで南極やグリーンランドの氷が融けるのです。
http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/x/2018-03-16/31/6839/2753031/
『若い読者のための第3のチンパンジー ジャレド・ダイアモンド/著、秋山勝/訳 草思社文庫 2017年発行
第2の雲 より
自分の子や孫が生き延びられるか、地球が生存する価値のある惑星なのか、そうした問題について人類史上はじめて真剣に悩んだのが私の世代である。こうした不安を抱いたのはほかでもない。種としての生存をめぐって、私たちの頭上に2つの暗雲が垂れ込めていたからである。いずれの雲ももたらす結果は同じだが、私たちはまったく別のものだと見なしている。
雲のひとつは、全人類を破滅させる核の危機である。この危機は広島の上空をおおったキノコ雲のなかではじめてその姿を現した。第二次世界大戦中の1945年、この町に史上初の原子爆弾が投下された。誰もが核の危機はまぎれもない現実だとわかっている。だが、国々には核兵器が山と積まれ、そして政治家は政治家で、どうしようもない過ちを歴史上たびたび犯してきた。今日の世界の外交の大半は、核の脅威に基づいて形づくられている。
2番目の雲は、環境破壊の危険である。種の大半が世界中で徐々に絶滅していることこそ、この破壊をもたらす潜在的な原因だ。しかし、核による大虐殺は悪いと全員の意見は一致しても、種の大規模な絶滅をめぐっては意見の一致は図れず、大量の絶滅は現実のものなのかどうか、かりに起きたとしても本当に大事にいいたるものであるのかどうか、私たちの意見は食い違いを示している。
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絶滅とは自然の過程のひとつではないのだろうか。そうであるなら、現在起きている絶滅について、私たちはどうして気をもまなくてはならないのだろうか。
確かに種という種は最後には死に絶える。しかし、現在、人間の手によって引き起こされている絶滅の速度は、自然に起きている絶滅のペースよりもはるかに進行が速いのだ。化石に残された記録から、長い地質年代において種が平均どれくらいのペースで絶滅していったのかがわかる。たとえば鳥類では、自然状態において平均して1世紀ごとに1種以下の絶滅だった。だが、現在では1年で2種の鳥類が絶滅しており、比率は自然状態の絶滅の200倍にも達している。絶滅は自然のものなのだから、今日の絶滅の波について心配してもしょうがないと考えるのは、人間は誰でも死ぬのが自然の定めだからといって、大虐殺を気にもとめないのと同じことだ。
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この章のはじめで触れた2つの雲を比べてみよう。私たちの将来に立ちこめているあの雲だ。核による大虐殺の雲は可視化に大きな災厄にちがいないが、いまのところはまだ起ころうとはせず、今後も起こることはないかもしれない。環境破壊による大惨事もまた致命的なものであるが、こちらはすでに進行中だ。それは数万年前にすでに始まり、現在かつてないほどのダメージをもたらしながら、破壊の程度をますます強めている。はたして、私たちはその進行を本気になって食い止めるつもりはあるのだろうか。