じじぃの「科学・芸術_421_カンガルーケア(スキンシップ)」

Kangaroo joey takes first hops 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=eydzCaG5KKo
kangaroo joey

カンガルーケアの効果と危険性 ココマガ
出産して赤ちゃんがおっぱいをくわえれば、当たり前に母乳育児が簡単に始められると思っている人がいるとしたら、それは大きな勘違いです。
そこで、母乳育児の最初のステップとして、カンガルーケアを行う産院も増えてきています。危険性も指摘されることもあるカンガルーケアですが、いったいどんなメリットがあるのでしょうか。また、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。
https://cocomammy.com/kangaroo-care/
『超ヤバい話 ―地球・人間・エネルギーの危機と未来』 長沼毅/著 さくら舎 2017年発行
生物学者が見る「人間」 より
これはカンガルーの赤ちゃんです(図.画像参照)。大きさはたぶんみなさんの親指ほどしかありません。そんなに小さい、言ってみれば肉の塊がポロンと産まれます。超未熟児です。カンガルーだと1ヵ月、受精してから受精卵が分裂して、肉の塊がやっと細長くなぅてくる。そんなものでポロンと産まれちゃう。胎盤はできません。胎盤ができないので、おなかの中にいてもそこから栄養はもらえないのです。いたるところで死んでしまいますので、その状態でポロンと産まれます。
前足のように見えるこの肉の出っ張りで、お母さんのおなかをヨジヨジよじ登るんです。生まれる場所は普通に両足の間にある産道から産まれます。でも、お母さんの袋の入り口はおなかにある。そこまで30センチか40センチありますかね。そこをこれがヨジヨジと登るのです。時間は1分ぐらいです。虫がササッと這っている感じです。這っていって、穴を発見してそこにポロンと落っこちる。
落っこちたら、こんどはお母さんの袋の中で、お母さんのおなかをよじ登りながら、おっぱいを探ります。乳首を発見したら、将来、口になる穴に乳首を入れておっぱいを吸い始めます。あとはそのおっぱいだけで成長します。
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南極でコウテイペンギンが冷たい吹雪から子どもを守るためにみんなで集まるという例はあるけれど、普通は動物界では肌と肌との接触は好まれません。しかし、それが嫌いだといったらほ乳できないので、ほ乳類においてはそれがむしろ好ましいとか、うれしいとか、ハッピー、幸せと思えるように進化してきました。それがほ乳類です。単におっぱいをあげるのみならず、おっぱいに伴う肌と肌との触れ合いこそが幸せなのだと思えるように進化したことが、ほ乳類の繁栄の1つの原動力でしょう。
したがって、ほ乳類の場合は、ほ乳類同士すごく仲がいいですよね。イヌとネコはけんかすると言うけれど、でも、イヌがネコにおっぱいをあげたり、その逆もあるじゃないですか。種の壁を越えておっぱいをあげる。非常によく見られます。種の壁を越えてじゃれ合うとか、仲がいいとか、よくあります。ほ乳類はどの種の壁を越えて仲良しになれる生物群はないと思います。
人間界で言えば、母乳でも人工乳でも私はいいと思います。母乳でもミルクでも、赤ちゃんを抱っこしてあげますよね。そういった意味では、母乳であれ、人工乳であれ、ほ乳・授乳には肌と肌との触れ合いが伴うということに意味があるということです。
もちろん、ほ乳そのものにも意味があるけど、むしろ肌と肌のふれあいに意味があるんだというのが、わがほ乳類における「愛」の起源じゃないかという話がある。ほ乳類は、ひたすら「愛の動物」だと思ってください。その愛というものが特に人間ではよく発達しているという理由も後(「愛のホルモン」オキシトシン)で言います。ただ、われわれ人間界で発達している愛の気持ち、感情というものの起源はここにあるということを想像しましょう。
ちなみに、スキンシップという言葉がありますが、そういう英語はありません。これは和製英語らしいです。英語の世界では「スキン・トウ・スキン・コンタクト」あるいは「カンガルーケア」といいます。ケアというのはお世話という意味ですよね。カンガルーケア、カンガルーのお母さんと赤ちゃんのジョーイ(カンガルーの赤ちゃんを英語でjoeyと言う)の関係みたいに、あるいはコアラの関係みたいに、ペタペタくっつくことをカンガルーケアといいます。