じじぃの「科学・芸術_398_ヒッグス粒子」

The Higgs Field, explained - Don Lincoln 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=joTKd5j3mzk
Higgs field

Higgs boson Diagram

Higgs boson Wikiwand
●Theoretical need for the Higgs
"Symmetry breaking illustrated": - At high energy levels (left) the ball settles in the centre, and the result is symmetrical. At lower energy levels (right), the overall "rules" remain symmetrical, but the "Mexican hat" potential comes into effect: "local" symmetry inevitably becomes broken since eventually the ball must at random roll one way or another.
http://www.wikiwand.com/en/Higgs_boson
『物理2600年の歴史を変えた51のスケッチ』 ドン・S・レモンズ/著、倉田幸信/訳 プレジデント社 2017年発行
ヒッグス粒子 [2012年] より
質量の理論面の考え方は、素粒子間に働く基本的な力を理論的に統一しようという長年の努力の産物として生まれました。まず19世紀中頃に、ジェームズ・クラーク・マクスウェルはマイケル・ファラデーの考えを土台に、別々だった電気と磁気の理論を1つの電磁気理論へと統一しました。これとまったく同じように、1960年代初頭には別々の理論だった電磁気理論と弱い核力が統一され、電弱理論という単独の理論となったのです。
電弱理論を組み立てる基礎となる大事な構成要素は、それぞれの力を属性として持つ対称性で、それには何種類かあります。対称性という属性は、他の属性が変化しても変わりません。たとえば、わたしたちは物理学の基本的法則が宇宙のどこであろうと変わらないと信じています。これを物理学者ならこう言うでしょう。そうした法則は宇宙内での場所の移行に対しても対称である、と。残念なことに、電弱理論はもっとも初歩的なものであってもこの対称性が組み込まれているため、すべての素粒子は静止質量がゼロでなければなりません。これが間違いであることを私たちは知っています。なぜなら、光子のように質量がゼロの素粒子もありますが、電子のように質量を持つ素粒子もあるからです。
では、電弱理論のもっとも初歩的な説明をどのように修正すれば、一部の素粒子が質量を持てるようになるのでしょうか。1つの方法は、この宇宙にヒッグス場を持たせることです。ヒッグス場が素粒子と相互作用することでその素粒子に質量を与えるのです。
このようにして質量を獲得する仕組みは、「群衆をかき分けながら前に行こうとする有名人が何度も立ち止まっては握手をしたり、褒め言葉をかけられたり、写真用のポーズをとる様子」にたとえられることもあります。有名人(一部の素粒子)は群衆(ヒッグス場)と強く相互作用するため、その有名人は質量――でなければ、一種の質量のような野次馬たち――を身にまといます。これと対照的に、無名の人なら同じ群衆をかき分けて進んでも相互作用はまったく起きず、まるで「有名人質量」を持っていないかのように見えます。
クォークレプトンは程度はさまざまですがすべてヒッグス場と相互作用するためさまざまな量の質量を獲得します。一方、光子はヒッグス場と相互作用しないため静止質量を持たず、光速で移動できます。
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どうやら、この宇宙はできて間もない頃、ヒッグス場のない状態からヒッグス場のある状態へと変化したらしいのです。この変化は図(参照.Higgs boson Diagram)の中央および右側に描かれた「メキシカン・ハット」型のポテンシャル(基本的な力を表します)が現れたことで引き起こされました。図で黒丸の横位置が表わすのは、この宇宙におけるヒッグス場の強さです。この黒丸は最初、図 左側のように真ん中で静止しています。これはヒッグス場が存在しないことを表します。ところがメキシカン・ハット型のポテンシャルが登場すると(図 中央)、宇宙は一瞬だけ不安定な状態になります。続いて宇宙はヒッグス場がゼロでないまま安定状態に移行します(図 右側)。この図が示すのは、最初はメキシカン・ハット型ポテンシャルの頂点にいたビー玉が転がり落ちて、頂点と上を向いたつばとの間の谷間に落ちつく様子です。このようにして、メキシカン・ハット型ポテンシャルで表される基本的な力は対称性を保ったまま、黒丸の位置で表される宇宙の状態はこの対称性を「破る」ことができるのです。
ピーター・ヒッグス(1929年〜)とフランソワ・アングレール(1932年〜)は2人で2013年度ノーベル物理学賞を受けました。受賞理由は1964年にヒッグス場を考え出してヒッグス機構を理論的に記述し、ヒッグス粒子の存在を予測したことです。