じじぃの「科学・芸術_395_オキシトシン・嗅覚」

Healthbeat - Alzheimer's Insulin Nasal Spray 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=AokLvBHlwso
Oxytocin Factor Nasal Spray

クローズアップ現代 「少年犯罪・加害者の心に何が」 2015年2月9日 NHK
【キャスター】国谷裕子 【ゲスト】高岡健岐阜大学医学部・准教授 児童精神科医
16歳の少女が通信アプリ・ラインでつながった同世代の少年少女に殺害された「広島強盗殺人事件」。
去年秋、主犯格の少女に1審判決が下された。残忍な犯行に酌量余地はないものの、幼少期の「愛着不形成」の影響が大きいことなどが加味され、求刑より減刑となり、注目された。いま、幼少期に周囲との信頼関係が育まれない「愛着不形成」に関する研究が進んでいる。脳の特定部位が萎縮を起こす、自己の行動抑制ができなくなるなど、「精神症状」や犯罪行動につながるメカニズムを解き明かそうというのだ。
カウンセリングや安定剤に加えて、オキシトシンの力を借りて脳の機能回復を試みる事例。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3613.html
シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』 中野信子/著 幻冬舎新書 2018年発行
シャーデンフロイデ より
シャーデンフロイデという単語はドイツ語で、Schadenfreudeと綴ります。Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、いう意味です。
実はこの感情は、オキシトシンという物質と、深い関わりを持っています。
オキシトシンについての詳細は後述しますが、これは、愛情ホルモン、幸せホルモンなどと俗に呼ばれて、基本的には人間に良い影響を与える物質と考えられています。
愛し合ったり、仲間を大切にしたいという気持ちが湧いてきたり、安心感や活力、幸福感をもたらしてくれたりするなどと心理的に好ましい影響があるだけでなく、たとえば身体組織の修復や成長を促したり、免疫グロブリンの量を増加させたりするなど、肉体的にも望ましい効果をもたらします。
しかしごく最近、オキシトシンがこれらの効果と同時に、妬み感情も強めてしまう働きをもつことがわかってきたのです。シャーデンフロイデが妬み感情と不可分であることを前提とすれば、オキシトシンは、妬みからシャーデンフロイデに至る一連の感情の流れを強めてしまう物質であると考えることができるでしょう。
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オキシトシンを投与した実験動物でも、以前に遭遇したことのある同種の個体を識別する能力が上昇します。こうして、顔見知りの関係が出来上がると、その個体を、初めて会う別の個体よりも好むという傾向が見られるようになります。
異性を選ぶときも同じメカニズムg働きます。あるオスが目の前にいるときに、同じ種類のメスの実験動物に対してオキシトシンを注射します。すると、その特定のオスを識別できるようになり、さらにそのオスを好んでパートナーとして選択するよう仕向けることができたという実験があります。他にもオスはたくさんいたのに、そのオスだけを選んだのです。
この個体同士の関係の特殊なのが、母子関係です。
ある相手と顔見知りになるとき、脳ではオキシトシンが分泌されて、心地よさを感じ、その相手に対する愛着関係が形成されていきます。母子関係では、出産・授乳というオキシトシンが一度に大量に分泌されるという身体上の大イベントが立て続けに起こるわけですから、否応なく密度の濃い愛着関係が形成されるのです。
これに安心感を持つか、息苦しさを覚えるかは母子の関わりの様相によって変わってくるようですが、少なくとも他の個体と比べて、ずっと強い絆が構築されることは確かです。
こうした絆は、スキンシップや近くに寄り添うなど、オキシトシンが増える刺激によってより強まります。
この絆にはすこし不思議に見える性質もあります。
1匹の実験動物にオキシトシンを注射して、他の個体のいるケージの中に戻します。
すると、同じケージにいる他の個体も、まるで自分がオキシトシンを注射されたかのように、落ち着いた振る舞いをするようになり、実際にストレスホルモン値も下がるのです。
これがオキシトシンの効果なのかを確かめるために、他の実験動物たちにオキシトシンの効果をブロックする拮抗薬を投与しておくと、この現象は見られなくなりました。つまり、これらの現象はオキシトシンによって引き起こされていることはまちがいないのです。
いったい何が、オキシトシン注射の効果を、群れ全体に広めるのでしょうか?
興味深いことにこの効果は、他のラットたちの嗅覚能力を阻害すると、やはりなくなってしまうのです。ようするに、匂いを通じて、オキシトシンの効果は群れ全体に広がっているのです。ヒトでも同じ効果が見られるかとうかは慎重に考えるべきですが、匂いによって私たちも、仲間からの信号を受け取り、群れとして機能するように、もしかしたら出来上がっているのかもしれません。